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9話
しおりを挟む「こ、国王陛下……! そ、そんな……!」
「陛下……!?」
フィルザ以外の面子は驚きを隠せなかった。フィルザだけは分かっていたのか、特に驚いている様子はなかったけれど。でも、従者に化けて国王陛下が来ているなんて……こんなことあり得なかった。
「ど、どうなっているのですか……まさか陛下がこのような場所に……」
「フィルザからの要請があったからだ。イグリオの悪事を暴いて欲しいとな」
「で、ですが……そんなっ!」
イグリオ様は最早、言葉が出て来ないといった様子だった。その気持ちは分かる、私も同じだからだ。
「フィルザとは少々、縁があってな。彼の頼みであれば引き受けようとなったのだ。それでも今回のように従者に化けて出て来るのは、我ながら危険だったと言えるかもしれん」
「陛下からのご提案でございましたが、もしも御身に何かあったかと思うと……」
「うむ、その通りだな。だが、貴族の悪行を裁くいい見本になったかもしれん。今度からは方法を改める必要はあるだろうがな」
今度からってまたやろうとしているのかしら……アグレッシブな国王陛下だった。信じられないわ。
「ところでイグリオよ」
「は、はい! 陛下!」
「お前の口から聞かせてもらった言葉は事実と受け止めるが良いな? なにか言い逃れはあるか?」
国王陛下、ファーロス様からの言葉だ。イグリオ様は何も言えない。
「あ、ありません……」
そう答えるしかなかった。陛下の前で言い訳をしようものなら、本当に首が飛んでしまうかもしれないからだ。
「残念だ、イグリオよ……お前がまさかここまで落ちていたとはな。マリー嬢を奴隷のように道具のように扱うことなど許されることではない。婚約破棄は成立する。よいな?」
「は、はは~~~! わかりました!」
「もちろんそれだけで終わると思うなよ? 慰謝料もしっかりと支払え。それから……伯爵の称号を剥奪する。お前の父親とも話す必要がありそうだ」
「剥奪……? そ、そんな……!」
「なんだ? なにか文句があるのか?」
「い、いえ……ありあせん……!」
イヴァン・ファーロス様の独壇場と言える場に変わっていた。国王陛下の言葉をただただ受けるしかないイグリオ様。まるで私に対する仕打ちを受けているかのようだった。
イグリオ様のしでかしたことを考えれば、伯爵から降ろされても文句は言えないだろう。こんな人が国王陛下が信用して渡した土地を支配することなど、あってはならないのだから。
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