絶対に別れてもらいます!

マルローネ

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8話

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「道具か……言い得て妙だな」

「な、何を言ってるんですか……?」


 イグリオ様は私の抗議にも特に気にしている素振りを見せていない。


「言い得て妙だと言ったんだ。確かにお前は道具と捉えることができる」

「ふ、ふざけないでください!」

「いくら伯爵様でもマリーを道具扱いはまずいんじゃないですか?」

「はっ、子爵家如きが何を言うか」


 フィルザからの言葉も全く悪びれている様子を見せないイグリオ様だった。


「お前達二人は所詮は子爵家。私は上位貴族の伯爵だ。そこには天と地の差があるのだよ」

「……天と地ですか」

「その通り、マリーは私と別れたいのだろうが、そんなことは許さん。お前はずっと私の物だからな」

「な、なにを……絶対に別れてもらいます!」


 私の渾身の言葉だったけれど、イグリオ様は首を縦に振ることはなかった。


「いいや、駄目だ。マリー……お前の全ては私の物だ。幼馴染であるその男に協力してもらったのだろうが、踏んだり蹴ったりだったな。所詮は子爵令息を味方につけても無意味なんだよ。これが現実というものだ。お前も自分の力がこの程度であると理解しているのだろう?」


 イグリオ様からフィルザへの言葉だった。フィルザは俯いている。


「……確かに俺の力だけでは、どうしようもないかもしれない。イグリオ様とマリーの婚約を止めることは出来ないだろう」

「その通りだ。わかったのならすぐに帰るのだな。今ならば許してやらんこともないぞ?」

「……」


 すると、私達に付き添っていた従者が立ち上がり、イグリオ様を見据えた。顔はフードで覆われている。大丈夫なのかしら……?


「おい、無礼だぞ。お前はマリーとフィルザの付き添い……護衛だろ?」

「……」

「私に歯向かってただで済むと思っているのか? お前をめちゃくちゃにすることくらい余裕なんだぞ?」


 そう言うとイグリオ様が連れていた執事達が立ち上がった。従者は明らかに不利な状況だ。


「執事に命令してお前を組み伏せるくらい……簡単だからな?」

「随分と力任せな発言をしているじゃないか、イグリオ。おおよそ、伯爵の発言とは思えない。ただのならず者にしか見えないぞ」

「……えっ? い、今の声は……」


 イグリオ様の表情が変わった。私も驚いている。今の声は……まさか。


「久しぶりだな、イグリオ。まさかお前の本性がこんなものだとは……非常に嘆かわしいぞ」


 そこに立っていた従者のフードの下。イヴァン・ファーロス国王陛下の顔があったのだ。
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