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私とフィルザはその日、イグリオ様の屋敷を訪れていた。従者を連れてやって来ている。
「フィルザ……大丈夫かしら?」
「大丈夫だよ、マリー。何も心配することはないさ」
「ええ、そうよね……」
準備は整っている。私はイグリオ様に別れを切り出すつもりだ。まあ、どういう態度を取られるかは分かり切っているけれど……。
「やあ、マリーじゃないか。待たせたな」
「イグリオ様……」
私とフィルザ、それに従者は応接室に招かれた。イグリオ様は二人の執事を従えてやって来た。
「マリー……男と一緒に帰って来るのはいただけないな。そちらは確か……」
「子爵令息のフィルザと申します。イグリオ様、よろしくお願いいたします」
「フィルザ……そんな名前だったか。そういえば」
イグリオ様は特に気にしていないような素振りだった。しかし、明らかな嫉妬心が見え隠れしている。私はそれだけで恐怖が込み上げてしまった。フィルザが彼に何かされないかという恐怖だ。
「本日はイグリオ様にお願いしたいことがありまして、こうしてマリーとやって来た次第です」
「ああ、聞いている。それで? お願いしたいことというのは何だ?」
「わかっているかもしれませんが、マリーと別れていただきたい」
その瞬間、イグリオ様の表情が明らかに強張った。そんな話をされるとは思っていなかったのだろうか。
「貴様……! よりにもよってそんな話を……!」
「マリーからイグリオ様のことは聞いています。それを聞いて酷過ぎると思いまして……」
「なにを言っているのだ! 私はマリーのことを考えているのだぞ!」
何を言っているのだろうこの人は……信じられない言葉が飛び交っているけれど、彼が私のことを考えてくれた?あり得ないことだ。
「イグリオ様が私のことを考えてくれた!? 嘘を吐かないでください! あなたは私を道具としか見ていない!」
私は立ち上がって抗議した。
「フィルザ……大丈夫かしら?」
「大丈夫だよ、マリー。何も心配することはないさ」
「ええ、そうよね……」
準備は整っている。私はイグリオ様に別れを切り出すつもりだ。まあ、どういう態度を取られるかは分かり切っているけれど……。
「やあ、マリーじゃないか。待たせたな」
「イグリオ様……」
私とフィルザ、それに従者は応接室に招かれた。イグリオ様は二人の執事を従えてやって来た。
「マリー……男と一緒に帰って来るのはいただけないな。そちらは確か……」
「子爵令息のフィルザと申します。イグリオ様、よろしくお願いいたします」
「フィルザ……そんな名前だったか。そういえば」
イグリオ様は特に気にしていないような素振りだった。しかし、明らかな嫉妬心が見え隠れしている。私はそれだけで恐怖が込み上げてしまった。フィルザが彼に何かされないかという恐怖だ。
「本日はイグリオ様にお願いしたいことがありまして、こうしてマリーとやって来た次第です」
「ああ、聞いている。それで? お願いしたいことというのは何だ?」
「わかっているかもしれませんが、マリーと別れていただきたい」
その瞬間、イグリオ様の表情が明らかに強張った。そんな話をされるとは思っていなかったのだろうか。
「貴様……! よりにもよってそんな話を……!」
「マリーからイグリオ様のことは聞いています。それを聞いて酷過ぎると思いまして……」
「なにを言っているのだ! 私はマリーのことを考えているのだぞ!」
何を言っているのだろうこの人は……信じられない言葉が飛び交っているけれど、彼が私のことを考えてくれた?あり得ないことだ。
「イグリオ様が私のことを考えてくれた!? 嘘を吐かないでください! あなたは私を道具としか見ていない!」
私は立ち上がって抗議した。
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