絶対に別れてもらいます!

マルローネ

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(イグリオ視点)


「ねえ、イグリオ様……マリ―様なんて無視して私といいことしません? マリ―様のことなんて忘れさせてあげるから」

「口には気を付けた方がいいぞ」


 今日の娼婦はやけに挑戦的だ。愛しのマリーを下に見ている。こんな女は初めてだった。


「お前は所詮、街中の娼婦でしかない。かなりの金額を稼いでいるようだが、成金と地位を兼ね備えた金持ちでは、まったく立場が違うのだからな」

「地位を兼ね備えた金持ちね……イグリオ様は伯爵だからわかるけど、マリ―様は子爵令嬢止まり。地位なんてあるのかしら?」

「あるんだよ、少なくともお前よりはな」


 この女は一般人でしかない。それより子爵令嬢が上なことは火を見るより明らかだった。

「でも私、マリ―様より贅沢ができる自信があるわよ?」

「ふん、だから単なる成金だろう? 調子に乗るなよ」

「どうしてそんなにマリ―様に固執するのかしら? 私だったらあなたの要望になんでも応えてあげられるのに」


 まったく、これだから下賤の者は信用できない。私の考えを少しも理解していないとは。単に外見だけの話ではないのだ。あの身持ちの固いマリーを時間をかけて調教していく。それが楽しみだというのに。だからこそ、絶対にあいつとは別れるつもりはない。

 調教に調教を重ねて、かならず私の物にしてみせるさ。


「わかっていないな。マリーのように清廉潔白な女を好き勝手に調教するのが楽しいんじゃないか。お前はただの暇潰しに過ぎない。そこのところは理解しておけよ」

「まあ、ひどいですわ。イグリオ様……」


 この女はまったく気にしている様子がなかった。まあ、この女はそれなりの経験をしているだろうからな。この程度ではへこたれないのだろう。


「マリー様も可哀想にね。その貞操をイグリオ様に捧げないといけないなんて。どれほど後悔するでしょうか。貴方様のあれは私でもかなり応えたから……」

「ははははは、それが楽しみなんじゃないか。あいつは家に帰ったようだが、なにもできやしないさ。私の女になる以外の選択肢を用意してやるつもりはない」

「イグリオ様はかなり歪な性格をしているんですね。こんな良い生活をしているのに……なにが貴方様をそこまでにしたのか」

「伯爵なんて立場をやっている以上、色々とストレスが溜まるんだよ。管理を任された土地の税収を上げなければ、王家からなんて言われるか分かったもんじゃない。あまりに管理が酷いと伯爵の地位を剥奪されかねんからな」

「まあ、イグリオ様も大変なのね」

「そのストレスの捌け口がお前だということだ。私の趣味は理解したな?」


 ストレスの捌け口……最初はそんなつもりだった。いつしかそれがやめられないスリルへと変わって行ったわけだが。さて、マリーよ。お前は絶対に逃がさないぞ。ふはははははははは。
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