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3話
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「私とイグリオ様の関係は……はっきり言って冷え切っているわ」
「なんだと……? どういうことだ?」
フィルザは案の定、驚いた顔をしていた。それもそのはずだ、イグリオ様の表面上の印象はとても良かったのだから。私だって婚約する直前までは上手く行くと思っていた。この人なら大切にしてくれるだろうと……。乗り気の婚約ではなかったのも事実だけれど。
フィルザはイグリオ様の表面上の部分しか知らないはず。こういう風に驚いているのはむしろ自然だった。
「イグリオ様は表裏の激しい人だったのよ。私も婚約してあの方の屋敷でお世話になるまで気付かなかった」
「なんてこった。そんなことが……で、実際はどういう風に裏があるんだい?」
「ええとね、それは……」
私はイグリオ様の裏の顔をすべてフィルザに話した。これはとても恥ずかしいことなので、知られたくはなかったけれど、仕方のないことだ。フィルザならもしかしたら力になってくれるかもしれないという淡い期待もあったから。
「と、いうことなの」
「……」
話し終えると、フィルザの顔は真っ青になっていた。あまりにも違う裏の顔に辟易しているのかもしれない。まあ、その気持ちはよくわかるけれど。私だって同じ気持ちなのだから。
「変態だったのか……イグリオ様は?」
「端的に言えばその通りね。変態……一番彼を表す言葉だと思うわ。それだけならともかく、彼は女性を物のように扱っているの。そこが許せないところね」
「なんてこった……そんなことがあったなんて。それで、君の貞操はまだ大丈夫なのか?」
けっこう答えにくい質問をしてくるわね。まあ、そこがフィルザのいいところでもあるんだけれど。彼とは昔からの付き合いだから遠慮というものがなかった。今回だって私の屋敷に普通に来ているしね。
「貞操に関しては断り続けているから大丈夫よ。でも、浮気三昧をされているけれどね。だからこそ、早く別れたいの」
「なるほど、そういうことだったのか。まあ、何にせよ酷い目に遭う前に決着をつけないといけないな」
「そうなるけれど……なかなか難しい状況なのよね」
イグリオ様は地方の伯爵を任せられている人物だ。広大な土地も与えられている。そんな人を無闇に怒らせたりしたら、大変な目に遭ってしまうだろうし。正直、お父様に相談しても良い結果になるとは考えづらかった。
「アクバ―様でも難しい問題になりそうだな」
「ええ、そうなるわね。たぶん、お父様の権力ではどうしようもないと思うわ」
「ふむ……でも、俺なら力になれるかもしれない。ちょうど話してもらえて良かったよ」
「えっ、どういうこと?」
よくわからないけれど、フィルザの眼は輝いているように見えた。
「なんだと……? どういうことだ?」
フィルザは案の定、驚いた顔をしていた。それもそのはずだ、イグリオ様の表面上の印象はとても良かったのだから。私だって婚約する直前までは上手く行くと思っていた。この人なら大切にしてくれるだろうと……。乗り気の婚約ではなかったのも事実だけれど。
フィルザはイグリオ様の表面上の部分しか知らないはず。こういう風に驚いているのはむしろ自然だった。
「イグリオ様は表裏の激しい人だったのよ。私も婚約してあの方の屋敷でお世話になるまで気付かなかった」
「なんてこった。そんなことが……で、実際はどういう風に裏があるんだい?」
「ええとね、それは……」
私はイグリオ様の裏の顔をすべてフィルザに話した。これはとても恥ずかしいことなので、知られたくはなかったけれど、仕方のないことだ。フィルザならもしかしたら力になってくれるかもしれないという淡い期待もあったから。
「と、いうことなの」
「……」
話し終えると、フィルザの顔は真っ青になっていた。あまりにも違う裏の顔に辟易しているのかもしれない。まあ、その気持ちはよくわかるけれど。私だって同じ気持ちなのだから。
「変態だったのか……イグリオ様は?」
「端的に言えばその通りね。変態……一番彼を表す言葉だと思うわ。それだけならともかく、彼は女性を物のように扱っているの。そこが許せないところね」
「なんてこった……そんなことがあったなんて。それで、君の貞操はまだ大丈夫なのか?」
けっこう答えにくい質問をしてくるわね。まあ、そこがフィルザのいいところでもあるんだけれど。彼とは昔からの付き合いだから遠慮というものがなかった。今回だって私の屋敷に普通に来ているしね。
「貞操に関しては断り続けているから大丈夫よ。でも、浮気三昧をされているけれどね。だからこそ、早く別れたいの」
「なるほど、そういうことだったのか。まあ、何にせよ酷い目に遭う前に決着をつけないといけないな」
「そうなるけれど……なかなか難しい状況なのよね」
イグリオ様は地方の伯爵を任せられている人物だ。広大な土地も与えられている。そんな人を無闇に怒らせたりしたら、大変な目に遭ってしまうだろうし。正直、お父様に相談しても良い結果になるとは考えづらかった。
「アクバ―様でも難しい問題になりそうだな」
「ええ、そうなるわね。たぶん、お父様の権力ではどうしようもないと思うわ」
「ふむ……でも、俺なら力になれるかもしれない。ちょうど話してもらえて良かったよ」
「えっ、どういうこと?」
よくわからないけれど、フィルザの眼は輝いているように見えた。
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