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しおりを挟む「イグリオ様! 別れてください! 私はもう我慢できません!」
「馬鹿なことを言うな、マリー。誰が別れてやるものか」
私は婚約者のイグリオ様に詰め寄っていた。彼は伯爵であるけれど、浮気三昧の生活を送っている。娼婦を屋敷に招くことなど当たり前なのだった。
「マリー、お前は非常に良い女だ。頭もいいし、器量もいい。しかし、身持ちだけは固いのが玉に瑕だ。だからこそ、私は浮気をしてしまうのだよ」
「そんな理由で……婚約中に身体の関係にならないことは当たり前じゃないですか!」
貴族としての常識だ。でも彼はその常識が当てはまらない。婚約中に何度も誘われたことがあった。しかも、彼はかなり特殊なプレイを好んでいるようで……部屋の1つをそれ用に改築したくらいだから。
そんなプレイをさせられるなんて冗談じゃない。私は本気で別れたいと思っていた。
「お前が私に身体を捧げれば全ては丸く収まると言うのに……」
「あの特殊なプレイが目当てでしょう?」
「当たり前だ。どのみち結婚したら毎日相手をしてもらうんだ。だから早めに身体を捧げても関係ないだろう?」
「関係あります、大ありです!」
「とにかく私は別れることはしないからな。お前と結婚するまでは娼婦で我慢しているのさ」
駄目だこの人は……何を言っても無意味な気がしてしまう。どうしよう……子爵令嬢である私には強引に婚約破棄をする権限はない。
「国王陛下が黙っているはずありません! こんな理不尽なこと……知られてもいいんですか?」
「ははは、何を言っているんだお前は。陛下がこんな些細な事柄でお怒りになるとでも思っているのか? それ以前に、子爵令嬢程度の発言が通るものか。私が握りつぶしてやるわ」
「な……そんな……!」
私は思わず息をのんでしまった。イグリオ様の言っていることが信じられなかったから。
「馬鹿な真似は考えないことだ、マリー。お前はずっと私の傍に仕えるのだ。性奴隷としてな」
「性奴隷……?」
この人の傍にいては性奴隷にされてしまう……この人に愛なんて言葉は皆無なんだわ。なんとかして逃げ出さないといけない……そうしなければ私の人生が滅茶苦茶になってしまう。
でも、具体的にはどうすればいいんだろうか? 私程度の地位では国王陛下に直訴なんてできないし、イグリオ様が潰してしまう可能性が高いし。でも、このままだなんて絶対に嫌。私にだって相手を選ぶ権利くらいはあるはず。
こんな婚約は絶対に無効にしてみせるわ!
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