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1話 婚約破棄をされて……
しおりを挟む「リディア、済まないが私は侯爵令嬢のメリナと婚約することを決めた。お前とは婚約破棄だ」
「な、何を急に……? 婚約破棄……?」
私は婚約者のディノス・カンブリア侯爵令息から婚約破棄を言い渡されてしまった。まったく意味が分からずに、彼に聞き返している。
「なぜ、婚約破棄なのですか!? 私達は5カ月間も婚約していますよね? いきなりそんなことを言われても……」
「答えは簡単だよ、リディア。お前よりもメリナの方が好みだからだ。それだけではなく、彼女の方が家格が高い。どちらを選ぶかなど一目瞭然だろう?」
どちらを選ぶか一目瞭然……それは分からないではないけれど、あくまでも婚約をしていない段階で決められることだ。ディノス様は私と婚約をしているのに……何を考えているのだろう。馬鹿ではないだろうか?
「信じられません、ディノス様。本当に何を考えているのですか? 私のこの5カ月間の生活を全て無駄にさせたいのですか……!?」
「そうとも言うな、ふはははは」
「えっ……!?」
今なんと言ったのだろうか? ディノス様は肯定したように見えたけれど……。
「私はお前が虚無感に、それから悲しみに暮れる様を見たいのかもしれん。ふはははは、私を愛している相手が悲しみ後悔する様子は酒の肴としても最高だろう? ふはははははっ!」
「なっ……ディノス様!」
私は気付いた時には激昂していた。あまりにも人を馬鹿にした発言だったからだ。
「仮にも侯爵令息である貴方様がそのような言葉を! 恥はないのですか……!?」
「恥だと? そんなものどこにあると言うのだ? 表沙汰になる事実は、リディアが不祥事を起こし婚約破棄され、私の家から追い出されたということだけだ」
「な、何を言っているんですか……ディノス様?」
「下手に騒ぐとどうなるか、分かっているだろうな? お前は静かに婚約破棄を受け入れれば良いのだよ。はははははっ」
この人は最低だ……強引な婚約破棄だけでなく、自分達が悪くないように私の悪評も流そうとしているのだから。その件について騒ごうものなら、フォルスタ伯爵家がどうなるか分からない、と言いたいのだろう。
きっとディノス様は最大限の嫌がらせをしてくるに違いない……そうなっては、私の家では防ぎ切れないだろう。何よりもお父様やお母様に多大な迷惑を掛けてしまう。
「リディア、お前は大人しく婚約破棄を受け入れれば良いのだ。ああ、お前の不祥事による破棄だから、当然、慰謝料も支払う必要はないな」
「し、信じられません……あなたは、最低です……!」
「ふはははは、それは誉め言葉だな。ただし、明るみになる事実では、お前が悪者になるのだよ」
最早、何も言い返せなかった。言い返せば言い返す程に私の立場が悪くなってしまうと思えたから……本当に信じられない瞬間だった。こんな強引な婚約破棄があって良いのだろうか?
ディノス様は腐っている……。
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