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しおりを挟む「レイモンド・ハクネス侯爵令息から連絡が来たよ。ユリアとは婚約破棄をするとのことだ。やはり事実は変えられんか……」
「お、お父様……私はどうしたら良いのでしょうか?」
私は婚約者であるレイモンド様に捨てられた。花嫁修業中だったのに、急に相応しくないと言われてだ。それほど大きなミスをしたわけでもないのに、あまりにも酷い婚約破棄だった。
「この役立たずが……お前をこの17年間育てて来たが、ようやく役に立つと思っていたのに……」
「お父様……」
お父様の辛辣な言葉は予想出来たことだった。私は必要のない存在として、今まで教育もろくに受けずに育てられたからだ。私には兄と姉がいる。普通に考えれば伯爵家の中で一番不必要な存在は私だ。でも……それでも、私は最低限の愛情はもらっていると思っていた。今日、この日までは……。
「お父様、申し訳ありません……レイモンド様との婚約を台無しにしてしまって」
「もういい、ユリアよ。お前には何も期待できないことが分かった。今まで育てて来たがもう終わりだ」
「えっ……? どういうことでしょうか?」
「この屋敷から出て行け、ユリア。お前はもう伯爵令嬢でもなんでもない。ただのゴミくずだ」
「ご、ゴミくず……?」
お父様からのまさかの言葉だった。私は言葉を失ってしまう。ゴミくず……私はもう人間ですらないということか。モース伯爵家に生まれて17年……あまり良い思い出がなかったけれど、ここまで言われたことはなかった。最低限の愛情は持たれていると考えていたのに……それは幻想だったわけだ。
「他の家族には私から伝えておく。最低限の荷物と金を持って立ち去るがよい」
「ま、待ってください……そんな、どこに向かえばいいのですか? 私は……」
「この国でお前を受け入れる奴はいないだろう。他国にでも行ったらどうだ? 働き口も見つかるかもしれんな」
「そ、そんな……そんなことって……!」
私はこの17年の間、学園にも通っていなかった。なんとか図書室で本だけは読めたので読み書きなどは出来るけれど……まともに働けるスキルを持っていない。お父様は財布を乱暴に投げた。その中に入っていたお金は餞別ということだろうか。とても生活していけるだけの金額ではない。
「お父様……私は他国に行く途中で倒れてしまいます。とてもこの金額では……」
「では、そのまま死んでしまえば良い。もしくは市民街で夜の商売でもするんだな。奴隷として扱ってくれる物好きがいるかもしれんぞ?」
「お、お父様……」
私はその後、乱暴に屋敷から追い出されてしまった。これが現実……? お父様とはあんなにも冷たい存在なのだろうか? 私はもう何を信じればいいのか分からない。
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