学院内でいきなり婚約破棄されました

マルローネ

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9話 呼び出し その2

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「マリア・キルスキーです、理事長」

「よく来てくれた、マリア」

「呼び出しの理由ってなんですか?」

 理事長室に呼ばれたマリアはどこか恐れているようだった。自分に対して後ろ暗い何かを持っているとしか考えられないくらいに。何かに脅えているといった方が正しいのかもしれない。


「私が用事があるわけではないんだ。マリアに用事があるのは……この二人だ」

「……貴方達は……!!」


 マリアが驚いたのも無理はない。私とレヴィン……メアリとレヴィンの二人が立っていたのだから。この態度からして何かを知っているのは間違いなかった。まあ、あんなことを言ったくらいだから、知っているのは確定的なんだけれど。私達が呼んでいたら怪しまれていたけれど、理事長ことマスタング伯爵が呼んだのであれば話は別ね。

 マスタング伯爵には感謝しないといけないわ。結局、私とレヴィンの頼みを聞いてくれたんだから。


「……」

「そんなに警戒しないでしょ、マリア。話を聞かせてほしいだけだから。別に何か恨み言を言うつもりもないのよ」

「……本当に? 恨みを持っていないとは信じられないんだけど?」

「確かにそうかもね」


 オルスタに脅されていたにしろ、あんなことを言われたのだから。恨み言の一つでも言いたくはなるわ。でも、今はそんなことをしている場合ではなかった。私が知りたいのは……。


「どうして私が周囲にオルスタのことを悪く言っているなんて嘘を吐いたの? 正直に答えて」

「それは……オルスタに頼まれたからよ」

「やっぱりそうだったのか。まあ、状況的にはそれしかないな」

「脅されたわけではないのね?」

「そうね……脅されたわけではないわ。懇願されたから仕方なくってところかしら」


 マリアは脅えているようにも見えたけれど、思っているよりもしっかりと話す子だった。少し見方が変わったかもしれない。

「どうしてこんなことをしたの? 教えて欲しいわ。私がどういう目にあったかは分かっているわよね?」

「……オルスタはあなたとの関係が上手くいかないことに嫌気が指していたのよ。だから、今回のように婚約破棄が必要な状況を作り出したかった。私はそのように見ているわ」

「ふ~ん、全然意味がわからないけれど」

「あなたも婚約者ならもっと彼に寄り添うように努力しなければならなかったのよ。これは自業自得とも取れるわね」


 マリアは全く悪びれている様子はなかった。それどころか私が悪いみたいな言い方をする。……オルスタとの仲か……まあ、確かに昔から仲が良くなかったけれど。
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