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2話 届かぬ声
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ラジアン・オルガ公爵令息との話では最後まで婚約破棄を認められなかった……このままでは埒があかなかったので、私は自分の屋敷に戻ることにした。
ラジアン様も言っていたけれど、私のお父様は話を聞いてくれないと言っていた。おそらく間違ってはいないだろう。それでも、お父様の良心に賭ける以外にはなかった……。
「お父様……本日はお話があります」
「なんだ、アウラ。戻って来ていたのか?」
「はい、お話を聞いていただけませんでしょうか?」
お父様は急に屋敷に戻って来た私に驚いているようだった……侯爵とは思えない態度に見える。単に驚いているだけなら普通だけれど、明らかに迷惑そうにしていたから……私と話しをするのが、そんなに嫌なのだろうか。
傷付くけれど、そんなことを言っている場合ではない……私が頼れるのはお父様達しか居ないのだから。
---------------------------
「なに? 婚約破棄だと……? そんな話をラジアン様に言ったのか?」
「はい、お父様……私も耐えられなくなってしまって……」
私はラジアン様に婚約破棄を申し出た話をお父様に言った。その理由も含めて全てを話した。
「それで……ラジアン様はお前の婚約破棄を断ったのだな」
「はい、その通りです……お父様」
思い出すだけでも腹が立ってしまう……あまりにも悔しくて涙が出て来るほどだ。私はお父様が私の味方に付いてくれることを期待してしまっていた。流石に今回のことは、ラジアン様に非があるのだし……。
「ふむ……話はわかった。なかなか大変だったようだな、アウラ。お前が屋敷に戻って来た理由も良く分かった」
「お父様……それでは!」
私のことを理解してくれている……? やっぱり、血を分けたお父様だった。やっぱり私のことを……。
「意味は分かったが……大変なことをしてくれたな、アウラ」
「えっ……?」
「お前は危うく、フューリ侯爵家の名に傷を付けるところだったのだぞ? 婚約破棄は成立しなかったのが良かったが……」
私の期待が地に落ちていくような……そんな感情が一気に身体中を流れた瞬間だった。
「で、ですがお父様……! ラジアン様は浮気三昧で私のことを完全に道具としてしか見ていないのです……! 流石に酷過ぎませんか? このままでは、妻になったとしても地獄のような生活が待っているようで……」
「何を言っている? お前はフューリ家の次女でしかない……つまり、不用品に近い存在なのだ」
「ふ、不用品……?」
「その通りだ、アウラ。お前は不用品なのだ。兄が二人、姉が一人居るのだぞ? お前に残された道はせいぜい、その辺りの貴族と結婚するくらいしかなかったのに、ラジアン様が拾ってくれたのではないか。命を懸けて尽くすのが、お前の役目だろう? フューリ侯爵家の名を上げる為にな……」
「お、お父様……」
「その程度のことで婚約破棄を言ったり、屋敷に戻って来たり……まったく、甘やかしてしまったかな、お前を……」
お父様は本気で言っている……まったく悪びれる様子がないのがその証だ。お父様の態度を異常に感じてしまうのは、私が間違っているのだろうか? 私が貴族令嬢としての覚悟が足りない……? 甘いのは私の方なのだろうか。
私は混乱してしまい、何が正しいのか分からなくなっていた……ただし、これだけは言える。今までお父様達に甘やかされたことは一度たりともないと。
ラジアン様も言っていたけれど、私のお父様は話を聞いてくれないと言っていた。おそらく間違ってはいないだろう。それでも、お父様の良心に賭ける以外にはなかった……。
「お父様……本日はお話があります」
「なんだ、アウラ。戻って来ていたのか?」
「はい、お話を聞いていただけませんでしょうか?」
お父様は急に屋敷に戻って来た私に驚いているようだった……侯爵とは思えない態度に見える。単に驚いているだけなら普通だけれど、明らかに迷惑そうにしていたから……私と話しをするのが、そんなに嫌なのだろうか。
傷付くけれど、そんなことを言っている場合ではない……私が頼れるのはお父様達しか居ないのだから。
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「なに? 婚約破棄だと……? そんな話をラジアン様に言ったのか?」
「はい、お父様……私も耐えられなくなってしまって……」
私はラジアン様に婚約破棄を申し出た話をお父様に言った。その理由も含めて全てを話した。
「それで……ラジアン様はお前の婚約破棄を断ったのだな」
「はい、その通りです……お父様」
思い出すだけでも腹が立ってしまう……あまりにも悔しくて涙が出て来るほどだ。私はお父様が私の味方に付いてくれることを期待してしまっていた。流石に今回のことは、ラジアン様に非があるのだし……。
「ふむ……話はわかった。なかなか大変だったようだな、アウラ。お前が屋敷に戻って来た理由も良く分かった」
「お父様……それでは!」
私のことを理解してくれている……? やっぱり、血を分けたお父様だった。やっぱり私のことを……。
「意味は分かったが……大変なことをしてくれたな、アウラ」
「えっ……?」
「お前は危うく、フューリ侯爵家の名に傷を付けるところだったのだぞ? 婚約破棄は成立しなかったのが良かったが……」
私の期待が地に落ちていくような……そんな感情が一気に身体中を流れた瞬間だった。
「で、ですがお父様……! ラジアン様は浮気三昧で私のことを完全に道具としてしか見ていないのです……! 流石に酷過ぎませんか? このままでは、妻になったとしても地獄のような生活が待っているようで……」
「何を言っている? お前はフューリ家の次女でしかない……つまり、不用品に近い存在なのだ」
「ふ、不用品……?」
「その通りだ、アウラ。お前は不用品なのだ。兄が二人、姉が一人居るのだぞ? お前に残された道はせいぜい、その辺りの貴族と結婚するくらいしかなかったのに、ラジアン様が拾ってくれたのではないか。命を懸けて尽くすのが、お前の役目だろう? フューリ侯爵家の名を上げる為にな……」
「お、お父様……」
「その程度のことで婚約破棄を言ったり、屋敷に戻って来たり……まったく、甘やかしてしまったかな、お前を……」
お父様は本気で言っている……まったく悪びれる様子がないのがその証だ。お父様の態度を異常に感じてしまうのは、私が間違っているのだろうか? 私が貴族令嬢としての覚悟が足りない……? 甘いのは私の方なのだろうか。
私は混乱してしまい、何が正しいのか分からなくなっていた……ただし、これだけは言える。今までお父様達に甘やかされたことは一度たりともないと。
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