私の婚約破棄で腹違いの王子が激怒してくれた件

マルローネ

文字の大きさ
上 下
4 / 9

4話

しおりを挟む
「イクサ王子殿下がこんなところにいらっしゃるとは……!」

「今回のパーティーに参加して正解でしたわね」


 場の雰囲気が一気に変わった気がした。


「イクサ王子殿下か……」


 今の私には天上の人に見えて仕方ないわ。第二王子で将来の国王陛下になるかもしれない人だから……。


「イクサ王子殿下が来たようだな」

「あ、お父様。そのようですね」

「彼はお前と同じ19歳だ。挨拶してきたらいいんじゃないか?」

「いえ、そんな……私なんかが行ったところでイクサ王子殿下の迷惑になってしまいますよ」


 イクサ様に挨拶に行くなんてとてもじゃないけど無理だった。この場の雰囲気がそうしている。私が行こうものなら周囲の貴族になんて言われるかわかったものじゃない。それはきっとイクサ様にも迷惑になってしまうだろうしね。

 それにしても王子殿下か……立場的には侯爵家や公爵家よりも上のはず。もしも味方になってくれれば、これ以上ない程のお方だけれど。しかし縁もゆかりもないカインリー伯爵家の味方をする理由がなかった。そんな淡い夢は見ないでおこう。辛いだけだから……。

「それにしても王子殿下の周りは流石に人が多いですね」

「護衛もいるが確かに……みんな挨拶をしたいのだろうな」


 先ほどまでは私の噂で持ち切りだったのに……調子のいい人達が多いみたいね。まったく……貴族は本当に噂好きだわ。私も貴族の一人だから人のことは言えないのだけれど。


「アンネリーじゃないか。来ていたのか?」

「あれ……お母様?」

「あなた、リリス。せっかくのパーティーなのだから私も参加したいわ」


 お母様もこのパーティーに来ていた。お父様が知らない様子だから、後から合流した形になるのだけれど。


「あれは……イクサ王子殿下ね」

「そうですね、お母様」

「リリス、貴方にはイクサ王子はどのように見えるかしら? なにか感じるものはない?」

「感じるもの……ですか?」


 お母様は何が言いたいんだろうか? イクサ王子殿下を見て感じるものって……私と同じ19歳ということは分かったけれど、それ以外の部分は分かるはずもないし。かなり整った顔をしているのは分かる。なんというか一目惚れをしてしまいそうな……なんてね。

「あれ? 王子殿下が……」


 ふと色々なことを考えていると、イクサ王子殿下がこちらに近づいているのに気付いた。最初は何かの間違いかと思っていたけれど、確実に私達の方へと歩いている。

「イクサ王子が気付かれたようね。リリス、失礼のないように挨拶をしなさい」

「お母様……? は、はい」


 お母様はどこかイクサ王子殿下を知っているような素振りだった。なんだろう、この違和感は……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

婚約破棄?むしろ願ってましたわ。では、隣国の冷酷公爵と幸せになりますね

ニャーゴ
恋愛
「エリザベート・フォン・クラウゼル! お前との婚約を破棄する!」 王太子エドワードは聖女を新たな婚約者にすると宣言し、侯爵令嬢エリザベートを断罪した。 しかし、彼女は微笑みながら言い放つ。 「まあ! これで心置きなく、次の結婚準備ができますわ」 実は彼女には 隣国アストリアの”氷の公爵” ことアレクシス・フォン・ノルディアから熱烈な求婚を受けていた。 彼は冷酷無慈悲な軍人として恐れられるが、エリザベートには甘く、彼女を溺愛していたのだ。 やがて、エリザベートが去った王国は混乱に陥る。 彼女の実家であるクラウゼル侯爵家は王国経済の要だったため、貿易が停止し、王国は財政危機に。 焦った王太子はエリザベートに復縁を申し込むが、彼女は優雅に微笑む。 「もう遅いですわ。私は公爵の妻として幸せになりますから」 そして、冷酷な公爵が王太子に言い放つ。 「私の妻に手を出すな。次は国交を断絶する」 婚約破棄で人生を狂わせるつもりだった王太子は、逆に自らの国を崩壊へと導く。 一方、エリザベートは 公爵に溺愛され、何不自由なく幸せな人生 を歩んでいくのだった──。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

嫌われ令嬢は戦地に赴く

りまり
恋愛
 家族から疎まれて育ったレイラは家令やメイドにより淑女としてのマナーや一人立ちできるように剣術をならった。  あえて平民として騎士学校に通うようレイラはこの国の王子さまと仲良くなったのだが彼は姉の婚約者だったのだ。  

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

【完結】元婚約者が偉そうに復縁を望んできましたけど、私の婚約者はもう決まっていますよ?

白草まる
恋愛
自分よりも成績が優秀だからという理由で侯爵令息アッバスから婚約破棄を告げられた伯爵令嬢カティ。 元から関係が良くなく、欲に目がくらんだ父親によって結ばれた婚約だったためカティは反対するはずもなかった。 学園での静かな日々を取り戻したカティは自分と同じように真面目な公爵令息ヘルムートと一緒に勉強するようになる。 そのような二人の関係を邪魔するようにアッバスが余計なことを言い出した。

処理中です...