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エルザ・ランポス子爵令嬢とヴァイス・フーリッジ侯爵との身分が離れた者同士の婚約……私がヴァイス様の屋敷へ向かうことでそれは確定してしまった……。
「ヴァイス様、我が三女のエルザを引き受けてくださり本当にありがとうございます」
「いえ、こちらこそ我が儘を聞いて頂き嬉しい限り。本日を以って、エルザ嬢は私の物ということですからね」
「はい! まさしくその通りでございます!」
お父様であるライノ・ランポス子爵は私が嫁ぐことになるのを大層喜んでいた。当たり前か……お荷物でしかない三女の私が金のなる樹になったのだから。私は家族から存在を疎まれて育った。昔から姉さま達に比べて愛されたという記憶がない。それは16歳になる現在まで続いていたのだ。
そして先日、ヴァイス様が私を欲しているという情報が流れ、あっさりと婚約が決まってしまったのだ。ヴァイス様に流れている噂など、お父様は気に留めることもせずに……。
「ふふ、エルザ。こうして我が屋敷に来てくれたことを感謝するぞ」
「はい……ヴァイス様。私を選んでいただき光栄でございます」
本音を言えば恐怖しかない……ヴァイス様は女性をその手の道具として扱っているとされている。街娘なども何人も屋敷に連れ込んでは住まわせていると。誰も彼の高すぎる権力には逆らえないらしい。
「さて、ライノ殿。取り急ぎの用件は終了しただろう。もう帰って貰って構わないぞ。結納金に関することは、また後日にしようと思うが大丈夫かな?」
「はい、もちろんでございます! それでは娘をよろしくお願いいたしますぞ!」
「ああ、任せておいてくれ。大切にするさ」
「はは、左様でございますか」
お父様はヴァイス様の「大切にする」と言う言葉を別の意味に捉えたのだと思う。だからこそ、言葉を少し詰まらせたのだろう。
そして、そのままお父様は去って行った。私の顔など見ることもなく……厄介者が消えてくれて安心した、と言ったところだろうか? 莫大な結納金も貰えるだろうしね……。
「さて、エルザよ」
「は、はい! なんでしょうか? ヴァイス様……」
ヴァイス様に話し掛けられ、私は声が裏返ってしまった。変態という噂のヴァイス様……私はこれからどんな扱いを受けるのだろうか? 地下室で監禁されて拘束? それともいきなり裸にされて……。
「まずはお前の部屋へと案内しよう。既に準備が整っているからな。私は用事があるので同行はできないが、メイドのシンディ―が一緒に向かう」
「シンディ―です。エルザ様、よろしくお願いいたします」
「は、はい。こちらこそ……よろしくお願い致します」
シンディ―と呼ばれたメイドはニッコリと笑ってくれた。そしてそのまま私を連れて行く。目指すは新たな私室ということだろうか。
「ヴァイス様、我が三女のエルザを引き受けてくださり本当にありがとうございます」
「いえ、こちらこそ我が儘を聞いて頂き嬉しい限り。本日を以って、エルザ嬢は私の物ということですからね」
「はい! まさしくその通りでございます!」
お父様であるライノ・ランポス子爵は私が嫁ぐことになるのを大層喜んでいた。当たり前か……お荷物でしかない三女の私が金のなる樹になったのだから。私は家族から存在を疎まれて育った。昔から姉さま達に比べて愛されたという記憶がない。それは16歳になる現在まで続いていたのだ。
そして先日、ヴァイス様が私を欲しているという情報が流れ、あっさりと婚約が決まってしまったのだ。ヴァイス様に流れている噂など、お父様は気に留めることもせずに……。
「ふふ、エルザ。こうして我が屋敷に来てくれたことを感謝するぞ」
「はい……ヴァイス様。私を選んでいただき光栄でございます」
本音を言えば恐怖しかない……ヴァイス様は女性をその手の道具として扱っているとされている。街娘なども何人も屋敷に連れ込んでは住まわせていると。誰も彼の高すぎる権力には逆らえないらしい。
「さて、ライノ殿。取り急ぎの用件は終了しただろう。もう帰って貰って構わないぞ。結納金に関することは、また後日にしようと思うが大丈夫かな?」
「はい、もちろんでございます! それでは娘をよろしくお願いいたしますぞ!」
「ああ、任せておいてくれ。大切にするさ」
「はは、左様でございますか」
お父様はヴァイス様の「大切にする」と言う言葉を別の意味に捉えたのだと思う。だからこそ、言葉を少し詰まらせたのだろう。
そして、そのままお父様は去って行った。私の顔など見ることもなく……厄介者が消えてくれて安心した、と言ったところだろうか? 莫大な結納金も貰えるだろうしね……。
「さて、エルザよ」
「は、はい! なんでしょうか? ヴァイス様……」
ヴァイス様に話し掛けられ、私は声が裏返ってしまった。変態という噂のヴァイス様……私はこれからどんな扱いを受けるのだろうか? 地下室で監禁されて拘束? それともいきなり裸にされて……。
「まずはお前の部屋へと案内しよう。既に準備が整っているからな。私は用事があるので同行はできないが、メイドのシンディ―が一緒に向かう」
「シンディ―です。エルザ様、よろしくお願いいたします」
「は、はい。こちらこそ……よろしくお願い致します」
シンディ―と呼ばれたメイドはニッコリと笑ってくれた。そしてそのまま私を連れて行く。目指すは新たな私室ということだろうか。
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