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10話
しおりを挟む「正直に答えてくれイヴァン。お前はビルデのことをどのように思っているのだ?」
「そ、それは……あの……」
「嘘を吐いても良いことがなにことは既に分かっているな?」
「は、はい……」
脅しとも取れるグリアム陛下の言葉だった。グリアム陛下としても貴族の是正に必死なのかもしれないわね。
「私はビルデ様のことを尊敬しております。実質的に仕事はそつなくこなすお方ですし。あれくらい器用に立ち回れたら……と思っていました」
「ふむ。ではその尊敬しているビルデから、エンリとの婚約破棄の件を聞いた時はどう思ったのだ?」
「それは……!」
「イヴァン、お前ほどの男なら知っているのだろう? ビルデの内面を……」
イヴァン・マルコ伯爵は無言になっていた。グリアム陛下はもしかして、ビルデ様の趣味のことを知っているのかしら? そんなはずはないと思っていたのだけれど……。
「ビルデ様の内面というのは、あの方の趣味についてのことでしょうか? それを知っているかとおっしゃりたいのですか、陛下は」
「うむ、その通りだ。私も確信があったわけではないが、以前にとある女性から話を聞いたことがあってな。その者は詳しくは話してくれなかったが……気にはなっていたのだ」
「……ビルデ様は領地から女を見繕っては、ご自分の部屋で楽しまれる趣味がございます」
「……」
グリアム陛下は無表情だったけれど、内面では驚かれているでしょうね。表面的には評判の良いビルデ様にまさかそんな趣味があったなんて……他の貴族が聞いたらドン引きするだろう。
「エンリが婚約破棄をされた時、その趣味が原因だと思ったのか?」
「いえ、ビルデ様は何もおっしゃっていませんでしたので……半信半疑でした」
「半信半疑の状態でお前は別の貴族に噂を流したのか?」
「も、申し訳ありません……! 悪気があったわけではないのですが……!」
マルコ伯爵を責めてもどうにもならないだろう。既に噂は広まっているのだから。グリアム陛下もそれが分かっているのか、それ以上は何も言わなかった。
「まあ、仕方がない。イヴァン、お前はしっかりと反省するのだぞ」
「は、はい! 本当に申し訳ありませんでした!」
「よし……さてと、元凶となっているビルデのところにも行かないとならんな。エンリも一緒に来てくれるか?」
「はい、もちろんです陛下。ご一緒させていただきます」
「うむ、ありがとう」
ここまで来てしまったら最後まで見届けたいというものね。私はグリアム陛下と一緒にビルデ様の屋敷へ向かうことになった。
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