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9話

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「こ、国王陛下……! ようこそいらっしゃいました! ささ、応接室へどうぞ! お連れの方々も……!」

「ああ、そうさせてもらおう。イヴァン、元気そうで何よりだ」

「あ、ありがとうございます……!」


 私はグリアム国王陛下の後ろを歩いて応接室に入った。イヴァン・マルコ伯爵とは目が合ったけれど、すぐに逸らされてしまっている。確かに非常に怪しい態度ね……グリアム陛下が来てからもずっと態度がおかしいし。緊張するのは当然だけれど、焦り過ぎている気がするわ。

 この態度だけでも私の屋敷に嫌がらせをしたのは、この人だと思えてしまう。


「さて、私がここに来た理由は分かっているか? 知らないのなら、改めて説明をするが」

「いえ……存じております。私が何か良からぬことをしでかしたのではないか……ということですよね?」

「その通りだ。具体的にはこちらにいるエンリ・エネット伯爵令嬢の屋敷に嫌がらせをしたのではないか、ということだな」

「そ、それは……! ハモンド・シスマ―ル伯爵令息にも、昨日問い詰められましたよ。まったく、どこからそんな情報が出てしまったのか」


 あれ……? この期に及んでシラを切り通そうとしているのかしら? いや、そんなはずはないと思うけれど。それにしても、ハモンドさんの名前が出て来るとは思わなかったわ。ビルデ様のところにいた護衛の方の名前ね。


「今さら嘘を吐いても意味がないことくらいは分かっているな? イヴァンよ、私に嘘を吐くとどういうことになるかも……」

「もちろん分かっております! 決して嘘など吐いておりません! 私はビルデ・フォース侯爵から聞いた話を他の者達に言っただけですから! ハモンド殿が訪ねて来た時もハッキリと否定しました」

「ほう、そうだったのか。例の嫌がらせについては、ハモンドも探っていたようだな。それで? 動物達の死体を投げ込んだり、不幸の手紙を投函した者達に心当たりはないのか?」

「うっ……それは……!」


 あくまでも自分達がやったのではないと猛アピールしているけれど、嫌がらせに対しての心当たりはありそうね。私と目が合った時に逸らしたのは、その辺りが関係しているのかしら。


「では、改めて問うとしよう。イヴァンよ、お前はエネット家において起きた嫌がらせ騒動の犯人を知っているのか?」

「犯人の特定は出来ないです……ただ、私が話した者達の中には、ビルデ様のことを尊敬している者も居ましたから。そういった人物達が行ったのではないかと……」


 この話を聞く限り、本当に犯人の特定は出来ていないみたいね……噂は貴族中に広まったのだろうから、確かに犯人を特定することは難しいわ。また、行われた時に現行犯で逮捕するしか確実ではなさそうね。相手も警戒して、1回だけで終わる可能性もありそうだし。


「ふむ……犯人の特定は難しいのが現状か。それならば仕方がないな。良く話してくれたな、イヴァンよ」

「いえ……陛下にお話しすることは当然のことでございます……!」


 マルコ伯爵は自分が犯人ではないこと、差し向けたのでもないことを信用してもらいたくて必死のようだった。まあ、分からなくはないけれど、陛下も彼の言うことは信じているみたいね。


「それでは別の質問をしようか。イヴァンはビルデのことをどのように思っているのだ?」

「えっ……? ビルデ様のことをですか……?」


 あれ? なんだか質問の流れが変わったみたいね。どういうことかしら?
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