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8話

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「イヴァン・マルコ伯爵のところへですか?」

「うむ、私は直接向かおうと思っているが……エンリ、お前はどうするのだ?」

「どうと言われましても……そうですね」


 私はグリアム国王陛下と話をしている。その光景は信じられないものだけれど、私の本当のお父様ということが明らかになったので、それほど不思議ではないのかもしれない。事情を知らないメイド達は驚いているようだけれど。そもそも、また屋敷にグリアム国王陛下が来ている時点で異常だけれど。


「マルコ伯爵は今回の嫌がらせの張本人だ。それを問い詰めに行くのだが、嫌がらせをした理由が気になるところだからな」

「なるほど、理由を聞いてからその後の対応を考えるということですね?」

「その通りだ。マルコ伯爵としても国王が自ら問い詰めに来ては答えを用意する以外にないだろうからな」

「それは確かに……」


 グリアム陛下と話すのはまだ慣れないわね……いきなり、本当の父親と開かされても現実味がなかったし。陛下は私について来るように促しているのかしら。

「私が行った方がよろしいでしょうか?」

「マルコ伯爵への牽制と言う意味合いでは、付いて来てもらった方が良いかな」

「畏まりました。私もご一緒いたします」

「うむ、申し訳ない。本来であれば、あまり関わりたくない事柄かもしれないが」

「いえ、そんなことは……ここまでしていただいて、感謝の言葉もありません」


 グリアム国王陛下に動いてもらって嬉しいのは確かだ。とても安心できる味方が誕生したと言えるのだし。でも、国の最高権力者に協力してもらっているという事実が私を戸惑わせていた。なんというか……本当に申し訳ないわけで……。


「グリアム陛下はよろしいのでしょうか? その私を助けていただいて……何か噂される可能性もあると思うのですが」

「隠していたとはいえ、娘が酷い目に合されて怒らない父親がどこにいると言うのだ? エンリは何も心配することはないぞ。また、申し訳ないと思う必要もない。当然のことをしているだけだからな」


 グリアム陛下は強い言葉で言った。これでは、申し訳なく思う方が逆に失礼な気がしてしまう。


「ありがとうございます、陛下。それではお言葉に甘えさせていただきますね」

「うむ、それで良いのだ。それに、貴族社会を正すことは主君である私の務めでもあるからな。貴族社会が腐ってしまっては、国民にも申し訳がないし、国としての体裁を維持できなくなってしまうだろう。今の内に是正できることはしておかねばな」

「グリアム陛下……左様でございますね」


 今回の動物の死体放り投げや不幸の手紙は確かに見逃せない状況だ。しかも伯爵家の家で起こったことなのだから。マルコ伯爵が行ったのであれば、その理由を含めて問い詰めるのは王家の義務なのかもしれないわね。


 私も付いて行くことを決心したし、こうなったら事件の真相を解き明かしてやるわ。私には本当の父親ことグリアム・サイラス国王陛下がついているんだからね!
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