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5話
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「エネット家の長女、エンリ・エネットと申します。陛下、よろしくお願いいたします」
「うむ。堅苦しい挨拶はこの際必要はないが……まあ、良いだろう。私はグリアム・サイラスだ。知っているとは思うがな」
「は、はい……国王陛下……」
当り前だけれど、国王陛下のことを知らないはずがなかった。私は今、屋敷の応接室でグリアム・サイラス国王陛下と出会っているのだ。信じられない光景だけれど、現実のものだった。お父様も頭を下げている。
「グリアム国王陛下。本日はお越しいただき、本当にありがとうございました」
「なに、気にするな。ゼブラからの要請であれば喜んで向かわせて貰うよ。お前には世話になっているからな」
「そのようにおっしゃっていただき、誠に光栄でございます」
サイラス王国の最高権力者の言葉……この瞬間、お父様の地位を再認識できたかもしれない。いえ、普通に考えたら十分おかしいのだけれど。一介の伯爵であるお父様が国王陛下とここまでの仲になっているのは。
グリアム国王陛下は当然のことながら、最高クラスの護衛の方々と一緒に来ていた。応接室内には二人しかいないけれど、外にはかなりの数が待機している。
「さて……それでは本題に入ろうか。ゼブラ、エンリ」
「は、はい!」
「畏まりました。陛下」
私は緊張のあまり、言葉が裏返ってしまっていた。国王陛下は気にしていない様子だったけれど、これは恥ずかしいわね。
「大体の話は事前に聞いてはいるが、ビルデ・フォース侯爵に婚約破棄されたのだな? ん?」
「はい……左様でございます。国王陛下」
「ふむ。なるほど、それは大変だったな、エンリよ。さぞ、辛かったであろう」
国王陛下は優しく私を抱きしめてくれた。
「へ、陛下……!?」
とても嬉しいことではあったけれど、私にとっては戸惑いの方が大きかった。国王陛下に抱き締められる令嬢……周囲を見渡してもほとんど存在しないはずだ。それにお父様との関係も気になるし。
頭の中が混乱しているわ……。
「うむ。堅苦しい挨拶はこの際必要はないが……まあ、良いだろう。私はグリアム・サイラスだ。知っているとは思うがな」
「は、はい……国王陛下……」
当り前だけれど、国王陛下のことを知らないはずがなかった。私は今、屋敷の応接室でグリアム・サイラス国王陛下と出会っているのだ。信じられない光景だけれど、現実のものだった。お父様も頭を下げている。
「グリアム国王陛下。本日はお越しいただき、本当にありがとうございました」
「なに、気にするな。ゼブラからの要請であれば喜んで向かわせて貰うよ。お前には世話になっているからな」
「そのようにおっしゃっていただき、誠に光栄でございます」
サイラス王国の最高権力者の言葉……この瞬間、お父様の地位を再認識できたかもしれない。いえ、普通に考えたら十分おかしいのだけれど。一介の伯爵であるお父様が国王陛下とここまでの仲になっているのは。
グリアム国王陛下は当然のことながら、最高クラスの護衛の方々と一緒に来ていた。応接室内には二人しかいないけれど、外にはかなりの数が待機している。
「さて……それでは本題に入ろうか。ゼブラ、エンリ」
「は、はい!」
「畏まりました。陛下」
私は緊張のあまり、言葉が裏返ってしまっていた。国王陛下は気にしていない様子だったけれど、これは恥ずかしいわね。
「大体の話は事前に聞いてはいるが、ビルデ・フォース侯爵に婚約破棄されたのだな? ん?」
「はい……左様でございます。国王陛下」
「ふむ。なるほど、それは大変だったな、エンリよ。さぞ、辛かったであろう」
国王陛下は優しく私を抱きしめてくれた。
「へ、陛下……!?」
とても嬉しいことではあったけれど、私にとっては戸惑いの方が大きかった。国王陛下に抱き締められる令嬢……周囲を見渡してもほとんど存在しないはずだ。それにお父様との関係も気になるし。
頭の中が混乱しているわ……。
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