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3話 ドルト・マッキンリー公爵令息の訪問 その2
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「話は伺っております、ナタリー嬢……大変でございましたね」
「いえ、ドルト様……勿体ないお言葉でございます……」
屋敷の応接室に招いたドルト様だけれど、予想以上に丁寧な言葉に私は緊張を隠せなかった。ドルト様とは舞踏会などで何度かお会いしているけれど、こうして面と向かうのは初めてなのでどうしても面食らってしまう。
「ジオット・オルガス侯爵令息との件は……とても残念でございましょう」
「ええと……はい、まあ……」
当り前だけれど、ドルト様には全て筒抜けのようだった。公爵令息という立場だし、私達の噂は真っ先に行くのは予想出来ていたけれど……。
「恥ずかしいことでございます……ドルト様」
「なにをおっしゃいますか、ナタリー嬢! 噂では一方的な婚約破棄と伺っていますが?」
「ああ、それは……確かにその通りなんですが……」
話がややこしくなっている……私としても何と言って良いのか分からなかった。
「そうですか……やはり、ジオット殿は相当に身勝手な婚約破棄をしたみたいですね……」
「そ、そうですね……一応は、そうなりますでしょうか……」
「なるほど……そういうことですか」
ドルト様は訝し気な表情になっていた。私のことを思っての表情なんだろうけれど、その真剣な表情には恐怖を感じてしまうわ。
「まあ、ジオット殿の件は置いておくとしても……ナタリー嬢はエリクサーの供給の停止を考えていると聞いていますが?」
「え、ええ……そうですね。ジオット様への供給は考えているところでございます……」
まあ、私としても本音ではジオット様の家系にエリクサーを供給したいとは思っていないしね。ドルト様にはハッキリと伝えた方が良いような気がしていた。
「ふむ、なるほど……それならば、私は力になってあげられるかもしれませんね」
「力になる……でございますか? ドルト様……?」
正直、理解できない言葉だったので私は思わず聞き返してしまっていた。
「ええ、私の権力でどの程度まで力になれるかは分かりませんが……少なくとも、ジオット殿からの反撃には対応できると思っていますよ」
「そ、そんなことを……申し訳ないです……! ドルト様……!」
「ははは、気にしないでください、ナタリー嬢。私の家系も貴方が作るエリクサーの恩恵を受けていますし……それ以上に貴方を助けたいとする気持ちが強いですから」
「え、ええと……左様でございますか……?」
「はい、ですから気にしていただく必要はないですよ?」
「は、はい……ありがとうございます……」
お互いに利に適った関係と言えるのだろうか? ドルト様は私に全面的に協力してくれるようだ。ただ、単なる利害関係とは別の利を考えているような気がするんだけれど……気のせいだろうか?
「いえ、ドルト様……勿体ないお言葉でございます……」
屋敷の応接室に招いたドルト様だけれど、予想以上に丁寧な言葉に私は緊張を隠せなかった。ドルト様とは舞踏会などで何度かお会いしているけれど、こうして面と向かうのは初めてなのでどうしても面食らってしまう。
「ジオット・オルガス侯爵令息との件は……とても残念でございましょう」
「ええと……はい、まあ……」
当り前だけれど、ドルト様には全て筒抜けのようだった。公爵令息という立場だし、私達の噂は真っ先に行くのは予想出来ていたけれど……。
「恥ずかしいことでございます……ドルト様」
「なにをおっしゃいますか、ナタリー嬢! 噂では一方的な婚約破棄と伺っていますが?」
「ああ、それは……確かにその通りなんですが……」
話がややこしくなっている……私としても何と言って良いのか分からなかった。
「そうですか……やはり、ジオット殿は相当に身勝手な婚約破棄をしたみたいですね……」
「そ、そうですね……一応は、そうなりますでしょうか……」
「なるほど……そういうことですか」
ドルト様は訝し気な表情になっていた。私のことを思っての表情なんだろうけれど、その真剣な表情には恐怖を感じてしまうわ。
「まあ、ジオット殿の件は置いておくとしても……ナタリー嬢はエリクサーの供給の停止を考えていると聞いていますが?」
「え、ええ……そうですね。ジオット様への供給は考えているところでございます……」
まあ、私としても本音ではジオット様の家系にエリクサーを供給したいとは思っていないしね。ドルト様にはハッキリと伝えた方が良いような気がしていた。
「ふむ、なるほど……それならば、私は力になってあげられるかもしれませんね」
「力になる……でございますか? ドルト様……?」
正直、理解できない言葉だったので私は思わず聞き返してしまっていた。
「ええ、私の権力でどの程度まで力になれるかは分かりませんが……少なくとも、ジオット殿からの反撃には対応できると思っていますよ」
「そ、そんなことを……申し訳ないです……! ドルト様……!」
「ははは、気にしないでください、ナタリー嬢。私の家系も貴方が作るエリクサーの恩恵を受けていますし……それ以上に貴方を助けたいとする気持ちが強いですから」
「え、ええと……左様でございますか……?」
「はい、ですから気にしていただく必要はないですよ?」
「は、はい……ありがとうございます……」
お互いに利に適った関係と言えるのだろうか? ドルト様は私に全面的に協力してくれるようだ。ただ、単なる利害関係とは別の利を考えているような気がするんだけれど……気のせいだろうか?
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