18 / 18
18話
しおりを挟む
「驚いたわ。まさか、王太子殿下に告白されるなんてね」
「私も驚きでしたよ。しかもシュノーマン教会の中でなんて」
「ロマンチックと言えばそうなるのだけど。ふふ、ラッド様もなかなか雰囲気を重視するのかもしれないわね」
私は姉さまを連れて教会に来ていた。あの時の告白から10日経過し、その答えをラッド様に言う為に来ている。私だけだと緊張するのでクレア姉さまにも同行をお願いした。姉さまは喜んでついて来てくれた。
「私の知らない間に、ドルト様とエリーヌ様の一件が解決されたのには驚いたわ。もっと長引くかと思っていただけに」
「あれもラッド様のおかげです。私も長引くと踏んでいただけに、一瞬で解決して驚きました。内心では解決する時なんて来ないかもと思っていたくらいですから……」
「確かにそうね。ドルト様に出会う度にいびられ続ける可能性もあったわけだから。本当にラッド様には感謝しかできないわ。大切な妹を助けてくれて」
「私も同じ気持ちです、姉さま」
ドルト様とエリーヌ様には、下手をすれば一生いじめられ続ける可能性だってあったわけだ。言葉による暴力を浴びせられ続ける……これがどのくらい辛いことなのかは、容易に想像できる。レストランで実際に起きたわけだから。あれがずっと続くのだ。私はもしかしたら、屋敷から出られなくなっていたかもしれないわね。
引き籠り……私がそうなっていたかもしれないと考えると、本当にラッド様は救世主だったりする。
------------------------------
さて、そんな話を姉さまとしていると……教会に訪れる人々の間を縫うように、ラッド様が現れた。少数の護衛と一緒に。
「待たせてしまったかな、シンディ」
「いえ、大丈夫です。ラッド様……時間どおりですね」
「なるほど、それなら良かった。それからクレア嬢もいるのか」
「はい、ラッド様。二人のこれからについて、見届け人として参加させていただきました」
「見届け人か、なるほど。そういう意味ではクレア嬢がピッタリだろうな。私とシンディを再び引き合わせてくれた張本人なのだから」
「そんなに良いものではありませんけど……そう言って貰えて嬉しいですわ」
めずらしくクレア姉さまは照れているようだった。でも確かに見届け人として、姉さま以上の存在はない。そんな姉さまが見ている中、私は大きく深呼吸をした。
「ラッド様……あの」
「ああ、シンディ。このまえの教会での告白……私とともに歩んでいただけるか、答えを聞かせて貰えないか?」
「答えは最初から決まっていました。でも、少しだけ時間をいただくことで実感したかったんです」
「なるほど。それで……?」
「私もラッド王太子殿下とこれからを歩んで行きたいと思っています。よろしくお願いいたします」
私は深々と頭を下げた。エンデバーと両想いだった。その嬉しさを噛みしめながら。
「ありがとう、シンディ」
「はい、ラッド様」
姉さまが見届け人としていなかったら、このままキスをしていたかもしれない。そのくらいの良い雰囲気だった。私は王太子殿下とこれからを共にするのだ。それはきっと楽な道ばかりではないはず。私が……伯爵令嬢の私がラッド様に相応しくならないといけない。
「良かったわね、シンディ。私も応援するわ」
「ありがとうございます、クレア姉さま!」
「大変なことも多いと思うけれど、くじけずに頑張ってね。私も可能ならサポートもするから」
姉さまのサポートがあれば100人力だ。私はとても嬉しかった。ラッド様と人生を共にできる。その嬉しさに比べれば、困難な道などないも同然だろう。頑張ってみせる……私の道は今、決定したのだから。
おしまい
「私も驚きでしたよ。しかもシュノーマン教会の中でなんて」
「ロマンチックと言えばそうなるのだけど。ふふ、ラッド様もなかなか雰囲気を重視するのかもしれないわね」
私は姉さまを連れて教会に来ていた。あの時の告白から10日経過し、その答えをラッド様に言う為に来ている。私だけだと緊張するのでクレア姉さまにも同行をお願いした。姉さまは喜んでついて来てくれた。
「私の知らない間に、ドルト様とエリーヌ様の一件が解決されたのには驚いたわ。もっと長引くかと思っていただけに」
「あれもラッド様のおかげです。私も長引くと踏んでいただけに、一瞬で解決して驚きました。内心では解決する時なんて来ないかもと思っていたくらいですから……」
「確かにそうね。ドルト様に出会う度にいびられ続ける可能性もあったわけだから。本当にラッド様には感謝しかできないわ。大切な妹を助けてくれて」
「私も同じ気持ちです、姉さま」
ドルト様とエリーヌ様には、下手をすれば一生いじめられ続ける可能性だってあったわけだ。言葉による暴力を浴びせられ続ける……これがどのくらい辛いことなのかは、容易に想像できる。レストランで実際に起きたわけだから。あれがずっと続くのだ。私はもしかしたら、屋敷から出られなくなっていたかもしれないわね。
引き籠り……私がそうなっていたかもしれないと考えると、本当にラッド様は救世主だったりする。
------------------------------
さて、そんな話を姉さまとしていると……教会に訪れる人々の間を縫うように、ラッド様が現れた。少数の護衛と一緒に。
「待たせてしまったかな、シンディ」
「いえ、大丈夫です。ラッド様……時間どおりですね」
「なるほど、それなら良かった。それからクレア嬢もいるのか」
「はい、ラッド様。二人のこれからについて、見届け人として参加させていただきました」
「見届け人か、なるほど。そういう意味ではクレア嬢がピッタリだろうな。私とシンディを再び引き合わせてくれた張本人なのだから」
「そんなに良いものではありませんけど……そう言って貰えて嬉しいですわ」
めずらしくクレア姉さまは照れているようだった。でも確かに見届け人として、姉さま以上の存在はない。そんな姉さまが見ている中、私は大きく深呼吸をした。
「ラッド様……あの」
「ああ、シンディ。このまえの教会での告白……私とともに歩んでいただけるか、答えを聞かせて貰えないか?」
「答えは最初から決まっていました。でも、少しだけ時間をいただくことで実感したかったんです」
「なるほど。それで……?」
「私もラッド王太子殿下とこれからを歩んで行きたいと思っています。よろしくお願いいたします」
私は深々と頭を下げた。エンデバーと両想いだった。その嬉しさを噛みしめながら。
「ありがとう、シンディ」
「はい、ラッド様」
姉さまが見届け人としていなかったら、このままキスをしていたかもしれない。そのくらいの良い雰囲気だった。私は王太子殿下とこれからを共にするのだ。それはきっと楽な道ばかりではないはず。私が……伯爵令嬢の私がラッド様に相応しくならないといけない。
「良かったわね、シンディ。私も応援するわ」
「ありがとうございます、クレア姉さま!」
「大変なことも多いと思うけれど、くじけずに頑張ってね。私も可能ならサポートもするから」
姉さまのサポートがあれば100人力だ。私はとても嬉しかった。ラッド様と人生を共にできる。その嬉しさに比べれば、困難な道などないも同然だろう。頑張ってみせる……私の道は今、決定したのだから。
おしまい
40
お気に入りに追加
926
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
私の愛すべきお嬢様の話です。
Ruhuna
恋愛
私はメアリー。シェリル・サマンサ・リース・ブリジット侯爵令嬢であるお嬢様に使える侍女でございます。
これは最近巷を騒がせている婚約破棄事件を侍女の目線からお話しさせて頂いた物語です。
*似たような話があるとは思いますが、関係はありません。
*誤字脱字、あるかと思いますがおおらかなお気持ちでお読み頂けると幸いです。
*ゆるふわ設定です。矛盾は沢山あるかと思います。
綿菓子令嬢は、この度婚約破棄された模様です
星宮歌
恋愛
とあるパーティー会場にて、綿菓子令嬢と呼ばれる私、フリア・フワーライトは、婚約者である第二王子殿下に婚約破棄されてしまいました。
「あらあら、そうですか。うふふ」
これは、普段からほわわんとした様子の令嬢が、とんでもない裏の顔をさらすお話(わりとホラー風味?)
全二話で、二日連続で、23時の更新です。
[完結]君に好きだと伝えたい〜婚約破棄?そうですか、貴方に愛を返せない私のせいですね〜
日向はび
恋愛
表情は動かず、愛の言葉は囁けない。そんな呪いをかけられた伯爵令嬢の元に愛する人から婚約破棄の手紙がとどく。さらに彼は腹違いの妹と恋をしているという。絶望しながらも、全ては自分の責任と別れを決意した令嬢は愛するひとに別れを告げるために彼の家へ訪れる。そこで煌めくナイフの切っ先を目にした彼女は、愛する人を守るためその身をナイフの前に曝け出すのだった。
婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~
華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。
突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。
襲撃を受ける元婚約者の領地。
ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!!
そんな数奇な運命をたどる女性の物語。
いざ開幕!!
悪役令嬢は勝利する!
リオール
恋愛
「公爵令嬢エルシェイラ、私はそなたとの婚約破棄を今ここに宣言する!!!」
「やりましたわあぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!!」
婚約破棄するかしないか
悪役令嬢は勝利するのかしないのか
はたして勝者は!?
……ちょっと支離滅裂です
あなたは愛を誓えますか?
縁 遊
恋愛
婚約者と結婚する未来を疑ったことなんて今まで無かった。
だけど、結婚式当日まで私と会話しようとしない婚約者に神様の前で愛は誓えないと思ってしまったのです。
皆さんはこんな感じでも結婚されているんでしょうか?
でも、実は婚約者にも愛を囁けない理由があったのです。
これはすれ違い愛の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おポンチ2人のその後が気になります!
ありがとうございます!
読んでいただいてとても嬉しいです
ざまぁの部分については今後に活かしていきたいと思います
ありがとうございました