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17話
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「ドルト様とエリーヌ様はあれからどうしているんでしょうかね」
「この前のパーティーの一件はなかなか面白かったな」
「そうですね。まさか、あそこまで周囲の貴族に嫌われているなんて思いませんでした」
あのパーティーの日から数日が経過した。終始、ドルト様とエリーヌ様は劣勢に立たされており……ほとんどの人と会話が成り立っていなかったようだ。ドルト様と話していると注目を集めてしまう。そうなると、ラッド王太子殿下に恨まれるかもしれない。
だからこそ皆、ドルト様を避けていたのだと思う。私とラッド様はそんな話をしながら教会の中にいた。あの時以来の教会内部ということになる。
「この教会に来るのも久しぶりだな。まさか、こうしてシンディと来れるとは思っていなかったけど」
「私も同じ気持ちです、ラッド様。エンデバーとしてこの教会に来てからは、一度も訪れていないのですか?」
「中に入ることはなかったな。レストランの視察に来ていた時も」
「そうなんですね。私も屋敷からは近いですが、色々とあって今回が久しぶりです」
「そうか、ではお互いに久しぶりに女神様に祈りを捧げるとしようか」
あの時以来かもしれないわね。こうして祈りを捧げるのは。さて、どんな願いを言おうかしら。私が願うのは──。
---------------------------------------------
「シンディは一体、何を願ったんだ?」
「ええと、そうですね。恥ずかしいです……」
「言いたくなければ聞かないよ」
「いえ、そんなことはないんですが。ラッド様と再びこの教会に来れたんですから、また、エンデバーとして話せたらなって思いました。ですので、ラッド様との時間が今後も続きますようにって」
「ははは、それは嬉しいお願いだな。わたしもぜひ、シンディと話したいよ。あの頃は本当に楽しかったから」
ラッド様は私の願いに喜んでくれていた。私としても嬉しくなってしまう。
「エンデバーとして話していた時は、王族としてのしがらみを忘れることが出来ていた。これも全て君のおかげなんだ。現在の私があるのは、シンディのおかげと言っても過言ではない」
「そんなこと……ラッド様。私は何もしていませんよ。王太子殿下になられたのはラッド様のお力でしょう」
「そんなことはないさ。私にとって、君はまさに女神様だった。この教会で話をするのはとても楽しみだったよ」
「ラッド様……」
あ……なんだか変な感じだわ。この雰囲気はまずいかもしれない。でも、不思議と嫌な気分はしないし。ラッド様……というより、エンデバーは私の初恋の相手。その相手が目の前にいるわけで。
「そういえば、ラッド様はなんとお祈りしたのですか?」
「私かい? シンディとずっと一緒にいられますように……ってね」
「えっ……ラッド様?」
私はラッド様の言葉の意図が分からなかった。でも……これは告白なのではないだろうか。
「この前のパーティーの一件はなかなか面白かったな」
「そうですね。まさか、あそこまで周囲の貴族に嫌われているなんて思いませんでした」
あのパーティーの日から数日が経過した。終始、ドルト様とエリーヌ様は劣勢に立たされており……ほとんどの人と会話が成り立っていなかったようだ。ドルト様と話していると注目を集めてしまう。そうなると、ラッド王太子殿下に恨まれるかもしれない。
だからこそ皆、ドルト様を避けていたのだと思う。私とラッド様はそんな話をしながら教会の中にいた。あの時以来の教会内部ということになる。
「この教会に来るのも久しぶりだな。まさか、こうしてシンディと来れるとは思っていなかったけど」
「私も同じ気持ちです、ラッド様。エンデバーとしてこの教会に来てからは、一度も訪れていないのですか?」
「中に入ることはなかったな。レストランの視察に来ていた時も」
「そうなんですね。私も屋敷からは近いですが、色々とあって今回が久しぶりです」
「そうか、ではお互いに久しぶりに女神様に祈りを捧げるとしようか」
あの時以来かもしれないわね。こうして祈りを捧げるのは。さて、どんな願いを言おうかしら。私が願うのは──。
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「シンディは一体、何を願ったんだ?」
「ええと、そうですね。恥ずかしいです……」
「言いたくなければ聞かないよ」
「いえ、そんなことはないんですが。ラッド様と再びこの教会に来れたんですから、また、エンデバーとして話せたらなって思いました。ですので、ラッド様との時間が今後も続きますようにって」
「ははは、それは嬉しいお願いだな。わたしもぜひ、シンディと話したいよ。あの頃は本当に楽しかったから」
ラッド様は私の願いに喜んでくれていた。私としても嬉しくなってしまう。
「エンデバーとして話していた時は、王族としてのしがらみを忘れることが出来ていた。これも全て君のおかげなんだ。現在の私があるのは、シンディのおかげと言っても過言ではない」
「そんなこと……ラッド様。私は何もしていませんよ。王太子殿下になられたのはラッド様のお力でしょう」
「そんなことはないさ。私にとって、君はまさに女神様だった。この教会で話をするのはとても楽しみだったよ」
「ラッド様……」
あ……なんだか変な感じだわ。この雰囲気はまずいかもしれない。でも、不思議と嫌な気分はしないし。ラッド様……というより、エンデバーは私の初恋の相手。その相手が目の前にいるわけで。
「そういえば、ラッド様はなんとお祈りしたのですか?」
「私かい? シンディとずっと一緒にいられますように……ってね」
「えっ……ラッド様?」
私はラッド様の言葉の意図が分からなかった。でも……これは告白なのではないだろうか。
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