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13話

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「ラッド・フェリックス王太子殿下……!? こ、これは……」

「ドルト殿だな? とりあえずそこの席を離れてくれ。その場所は私の席なんだ」

「あ、これは申し訳ありません!」


 動揺しているドルト様はすぐに私の前から立ち上がった。そして、ゆっくりとラッド様はその席に座る。


「あ、あの……王太子殿下……これは一体どういうことなのでしょうか?」


 何も語らないラッド様にドルト様は質問した。わけが分かっていないのだろう。不安で仕方ない印象だ。それはエリーヌ様も同様だった。

 二人はなぜラッド王太子殿下がレストラン内のその席に座ったのかを理解していない。私の目の前……これだけで把握できそうなものだけれどね。二人からしたらそれどころではないのかもしれないわね。


「私がここにいる理由を訪ねているのか? それならば簡単だ。シンディと一緒に食事をする約束だったからな」

「シンディと食事!? 王太子殿下がですか……!?」

「そ、そんなことが……あるなんて」

「ん? それほど驚くべきことかな? シンディ?」

「さあ、どうでしょうか」


 ドルト様とエリーヌ様の二人は狼狽えている。私如きが王太子殿下と一緒にいるのが信じられないのだろう。さきほどまで思い切り馬鹿にしていたしね。


「先ほどまで私は二人に馬鹿にされていましたから。納得できないんじゃないでしょうか」

「そういうことか。私も聞いていたが、大方、上位貴族であることを疑わせるないようだったな」

「そうですね、ラッド様」


 ラッド様も怒っているようだった。なんだか嬉しい。同時にドルト様とエリーヌ様の二人を軽蔑しているようにも見受けられる。


「ドルト殿、随分と勝手なことを言ってくれていたな。シンディに対する暴言……決して許されるものではないぞ。それからエリーヌ嬢もな」

「あ……ああっ! 王太子殿下……その、申し訳ありませ、ん!」

「わ、私も……大変失礼致しました……!」

「謝るなら最初からするな。それと、謝るべき相手が違う。シンディに謝るんだ」

「えっ……? は、はい!」


 ラッド様の権威はとても強かった。ドルト様とエリーヌ様の二人に先ほどまでの勢いはない。ものすごく情けない表情だった。


「シンディ様! 申し訳ありませんでした!」

「申し訳ありませんでした!」

「……」


 驚くくらいに礼儀正しい謝罪……謝られたのは私だけれど、思わず強張ってしまう。さっきまでと全く態度が違うから、なんて返せばいいのか分からないけれど……。

「もう二度と私に失礼な態度は取らないでくださいね。絶対ですよ?」

「あ……は、はい。畏まりました……!」


 私はとりあえずラッド様の前で「約束」させることにした。これで確実にドルト様は何も言えなくなったわね。
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