王太子殿下と仲良くなります。さようなら

マルローネ

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11話

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「レストラン前には付いて来たけれど、中には入らないわよ? ちゃんとラッド様と会話をするようにね」

「は、はい……姉さま」


 レストラン「エンデバー」がオープンした。その前に私達は立っている。今日の姉さまは少しだけ……少しだけスパルタだった。

「入って来てはくれないのですね……姉さま」

「思い出話は二人でした方がいいでしょう? それとも私に初体験のことを語った話をしてくれるの?」


 ほら、やっぱりスパルタだった。要はラッド様との仲を深めて来いと言っているのだろう。姉さまは普段優しいからすぐに分かるわ。

「わかりました、姉さま。ラッド様との仲を深めて来ますね」

「ええ、その意気よ。頑張りなさい」

「はい」


 ドルト様に裏切られた悲しみや悔しさ……それを完全に忘れるための行為でもあった。ラッド様とレストランの視察で出会えた偶然。これを確かなものにするのだ。この偶然の関係性をなかったことにするのは、本当に勿体ないと言えるだろう。

 私は姉さまが見送ってくれる中、レストランへと入って行った。姉さまは後ろから手を振ってくれている。


----------------------------------


「お席はこちらになります。しばらくお待ちくださいませ」

「ありがとう」


 レストランの従業員に招かれ、私はとある席についた。ラッド様はまだ付いていないようね。従業員も待つように言っているし。

「それでは失礼致します」


 従業員は去って行き、私はラッド様を待つことになった。レストランを見渡すと内装が本当に豪華だとわかる。エンデバーというレストランか。ラッド様自身を形作っていると考えればなんだか不思議な気分ね。

「他の貴族の方が来ている……まあ、ラッド様が作ったレストランだと知られているだろうし」


 王族が作ったレストランなのだから、関係の強化を考えて来ている人達も多いでしょうね。私もその中の一人であることは間違いないのだし。

「こんなところで一人で何をしているんだ? シンディ?」

「あらあら、寂しく食事でもしに来たの? 貴方の家から近いものね?」

「えっ……?」


 私の前に立っている二人……ドルト様とエリーヌ様だった。どうして彼らがこんなところに……えっ?


「シンディ、なにか言ったらどうなんだい? 久しぶりに会ったんだからさ」

「そうよ。身分の差を考えていない令嬢ね。そんなんだから、誰かに振られるんじゃないの?」


 久しぶりにあったのは正しいけれど、なんだろうこの二人の圧力は……私を完全に苛めに来ているように思えた。
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