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118話 断章 ミルドレアとの談話 その2
しおりを挟むミルドレアとソード&メイジ……両者のアルカディア島に関する会話はその後も続けられていた。話し合うほどに、闇の軍勢がアルカディア島からの使者であることに信憑性が出ている。
周辺のゴールデンベアードは全滅しており、現在は彼らが遺した結晶石と金を順番に集めている。
「ランファーリ達のところに居たとされる蒼い悪魔のような獣。それも未確認のモンスターであれば、アルカディア島のモンスターである可能性は高い。あの島は日々、強力な魔物たちが自然発生し、戦闘を繰り広げている戦場との見方もあるからな」
アメリアと春人は直接確認したわけではないが、ナラクノハナが見たという蒼い獣についてもミルドレアに話していた。群雄割拠の危険地帯……未知なるモンスターであればその場所から来ていることは十分に考えられた。さらにランファーリという名前の者が被ると言うことも考えにくいとすれば、アルカディア島からの使者は少なくとも何体か現れていることになる。
「蒼い獣にランファーリと名乗る女か……アルカディア島の神がこちらに攻め入って来ているなら、未知なる実力も含めて、非常に驚異と言わざるを得んな」
「春人だったら大丈夫よ。あの仮面の女には負ける実力じゃないわ。ねえ、春人?」
急に話題を振られる春人は少し驚いてしまった。少し慌てたような口調で彼女に回答する。
「あ、うん。確かに……負ける相手ではないかな」
春人は手の甲に「4」という数字の記載された女性の姿を思い出していた。仮面を付けていたので、女性かどうかは確実ではなかったが、名前や声、スタイルなどから、ほぼ確定と考えていた。あの人物が相手であれば負けることはない。春人の中での自信は確信へと変わっていた。
「……そうか、その仮面の女がどれほどの強さだったのかはわからないが、仮にも状況的には大英雄フィアゼスの後継者的な立ち位置の人物だ。ふむ……」
ミルドレアは春人の言葉に対して疑問を感じているようだった。春人の実力はよくわかっているが、それを踏まえても、腑に落ちない点があるようだ。
それは春人も同じである。彼女との戦いで、春人はどこか違和感を覚えていたのだ。相手の実体が薄いようなそんな違和感。だが、ランファーリと名乗る人物がそこに存在していたのも事実。春人の中で交錯する矛盾は答えを見い出せないまま右往左往していた。
「まあいい。それで……ランファーリと名乗る人物以外にもう一人居たらしいな」
「はい。レヴィン・コールテスと名乗っていたと思います」
「レヴィン……」
ミルドレアは再び考え込んだ。その名前にも心当たりがあるような雰囲気だ。
「心当たりがあるんですか?」
「……定かではないが。もしも、俺の考えが正しいなら、急いだ方がいいかもしれん」
「どういう意味よ?」
ミルドレアの真剣な言葉に、アメリアと春人も態度を変える。ゴールデンベアードの結晶石をゆっくりと拾いながら会話を続けていたわけだが、すぐに終える必要が出て来たのだ。
「俺もその村に向かおう。構わないな?」
「え? マジで? いや……構わないけど」
一瞬考え込むアメリアではあったが、ミルドレアの実力を知っている為に了承することにした。他にも報酬が減る可能性も考慮して、多少嫌ではあったが、そんな態度を前面に出すほど、彼女は愚かではない。
貴重な戦力が1つ増えたことになる。春人もミルドレアが加わることに異論を挟むわけもなく、3人はオードリーの村へと引き返すことになった。
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「それは本当ですか?」
「俺としても嫌なんだけどね……なんでこんなタイミングなのかね」
アルフリーズのギルドマスターであるザックの私室にて、ナラクノハナのメンバーであるリグドとディランは居た。ザックと会話をしている。
「面白くなってきたと言いたいところだが……こりゃ、流石に不味いんじゃねぇか?」
ディランも珍しく顔が強張っている。レッドドラゴンの時のように「面白い」とは言えないようだ。それほどに彼らの会話は切迫するものであった。3人共、相当に表情が変化していた。
「ダールトン市街の裏組織の台頭……まさかこのタイミングで「アンバーロード」が動き出して来るとはね」
「タイミングが良すぎる。奴らは挟撃を狙っているのでは?」
「かもね……やれやれ、闇の軍勢とアンバーロードの挟撃とかシャレにならんわ、ホントもう……。しかも、闇の軍勢の騎士1体のレベルが120以上とか頭おかしいことになってんのに」
ギルドマスターであるザックも何かと気苦労をしているが、流石にこの事態は呑み込みたくないのか頭を本気で抱え込んでいた。レベル120を超える騎士が2000体以上存在しているのだ……彼の悩みはこの先、潰えることはないと言えるものであった。
「闇の軍勢がアンバーロードと繋がっている可能性ありか……それはつまり、大陸全土の裏組織との繋がりを意味しているよ。ホントにまいったね……ははは」
「闇の軍勢とアンバーロードが協力関係だとすると……笑えねぇなさすがに」
ディランも敵勢力の大きさを噛み締めているようだ。自分たちを含め、ソード&メイジやビーストテイマーが闇の軍勢の相手をした場合、アルフリーズの守りが手薄になる可能性が高い。そんな時の最強国家の軍隊ではあるが、ディランもリグドもそこには期待していないようだ。
「軍隊の連中は、東のアルカディア島の調査の準備で忙しいからね。それ以前に、国内の事件に関しては、なかなか手だしをしないのがマシュマト王国だ」
「軍隊は対外的な最強戦力。それがマシュマトの礎だからな。内務不干渉の理念は俺もどうかとは思うが……」
「不干渉と言っても、あくまでそこまで関与しないということさ。王国にとってみれば、どの組織が頂点に立とうが関係ないんだろう」
リグドは淡々と話すが、それを聞いているディランは軽く舌打ちをしてみせた。間違いのある考えではないかもしれないが、納得はできないのだろう。
「まあ、ディラン。俺達はやれることをやればいいさ。ザックさん、国王には進言をお願いします。闇の軍勢の戦力は想像以上だとも伝えておいてください」
「了解。面倒だが、任せておいてくれ。さて、これからちょいと大変かもね。魔力通信の通信機を用意しているよ。これで適宜、連絡を取り合おう」
「どうも。最初からすれば良かったですね」
リグドとディランは複数の通信機器をザックから受け取る。春人達の分も含まれているのだ。これからは緊急を要する連絡が多くなってくるとの予想なのだろう。通常は通信機器は持つ習慣はあまり浸透はしていないが、この時ばかりは違っていた。
それからザックはタバコに火をつけて吸いだした。既に近くの灰皿は彼が吸ったタバコでいっぱいになっている。
「レヴァントソードとアルミラージ……あの2組にも動いてもらう必要があるかもね」
ザックは窓から見える景色を眺めながら、静かな口調でそう言った。
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