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75話 正面突破
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アルトクリファ神聖国……アーカーシャの街より北に60キロ程度離れている。その場所には神聖国の首都である、メルカールは存在していた。
聖母神としてフィアゼスの巨大な像も存在している首都メルカール。その街が視認できる位置まで、春人たちも来ていたのだ。
「どういう配置になってるんだろ?」
メルカールまで数百メートルの位置。木陰に隠れながら春人は様子を伺っている。春人の視線の先には赤い甲冑の鉄巨人が数体配備されているのは確認が取れていた。
「情報の段階から数は変わってないとすると……鉄巨人8体にサイクロプス2体、フェンリルとケルベロスが1体ずつ。それから、アテナとヘカーテね」
隣に立つのはアメリアだ。敵の戦力を冷静に分析している。数百メートル先に見えるのは鉄巨人が4体。残りは街の中に居るのか、裏口に配備されているのか、春人とアメリアの場所からでは判断はつかなかった。
「普通、こういう場合って、正面と裏口に回ると思うんだけど……」
春人はギャグでも見ているような表情で、自分の背後に目をやる。レナやルナ、美由紀たちがしゃがんだ状態で待機していたのだ。春人の視線に気付いたレナはピースサインを彼に送った。
「どのみち、ミルドレアの通信も途絶えたみたいだし、中の主要人物は拘束されたか死亡したか……裏口から回っても一緒よ。正面突破の方が戦力を分散させずに済むわ」
アメリアの性格の表れか……強引な手段ではあるが、春人としても謎の彼女の自信に付いて行く覚悟は出来ていた。
「春人さま、アメリア。後程、中でお会いしましょう。ご武運を祈っておりますわ」
後方に待機しているレナが、春人達に声をかける。春人も彼女に手を振って返した。先陣を切るのは春人とアメリアだ。後からレナとルナの二人が潜入することになっている。ミルドレアとアビス、美由紀もその時に同行する算段となっていた。
「高宮くん、私が言えることではないけど……気を付けてね」
「うん、ありがとう委員長」
こちらに飛ばされて来て日の浅い美由紀は、春人の強さを初め分からないことだらけだ。しかし、アルトクリファ神聖国に行くことに関して少しの違和感も感じなかった。
むしろ、これが自分の運命なのだと、そう直感が教えている。アビスというデスシャドーの出現もその直感に自信を持たせる要因になっていた。
「ま、美由紀の心配は必要ないわよ。レナ達が居るし」
「ああ、わかってる。じゃあ、行こうか」
「ええ、「コンビプレイ」でね」
春人とアメリア……二人を纏う闘気は収束され、力強く解放された。そして、二人は歩きだし4体の鉄巨人に向かっていく。
------------------------------------------
「ブウウウウウ」
数百メートル先から近づいて来た春人とアメリア。彼らの接近に鉄巨人たちが気付いたのは10メートル程度の地点だ。
「鉄巨人は4体……アメリア、どうしようか?」
「魔法剣で行くわよ。春人、ユニバースソードを出して」
「了解」
春人はアメリアにそう言われ、ユニバースソードを彼女に見せた。彼女はそこに雷撃球の魔法と同じ、電撃属性を付与していく。春人の剣は帯電状態に変化した。
各個撃破が基本スタイルの「ソード&メイジ」に於いては非常に珍しい光景だ。威力が飛躍的に向上し、遠距離攻撃も可能になる魔法剣。魔法剣は彼らとしても初めての行為と言える。
「俺が先陣を切るよ。援護を頼む」
「わかったわ」
レベル400の鉄巨人を4体同時だ。消耗を最小限に抑える意味も込めて、二人は最初から全力を出していた。
春人は鉄巨人の1体に猛スピードで接近をする。鉄巨人を大刀を構えているが、倍のレベル差は如何ともし難く、最初の鉄巨人は帯電状態のユニバースソードの餌食になった。
しかし、残り3体は怯むこともなく春人に同時に襲いかかる。単独であれば、春人でも苦戦は免れない状態であっただろう。しかし、後方からの雷撃球によるアメリアの支援。倒すまでにはいたらないが、鉄巨人の動きを止めるには十分な威力となっていた。
「どう? 完璧なタイミングでしょ?」
「さすが、アメリア」
動きの止まった鉄巨人。レベル800に達している春人にとって、1体ずつの撃破はそう困難なものではなかった。さらに影状態のサキアの追撃も含まれているのだ。アメリアの後方支援はその後も続き、鉄巨人たちが全滅するのに数分と時間はかからなかった。
鉄巨人4体は見事に殲滅され、巨大な結晶石を残して崩れ去って行った。強力無比なコンビプレイ……春人の中にもそのような感情は浮かんでいた。
「春人、やっぱり私達のコンビは最強ね!」
「うん、アメリア! うわっ!」
ハイタッチを交わす二人。しかし、アメリアはそのまま春人の胸へと飛び込む。
「……私の気持ちはわかってるでしょ? 絶対死なないでよね? 死んだら殺すから」
アメリアは春人の胸の中でつぶやいた。春人にも聞こえる音量、彼女なりの告白と言えるのか。
「ここでそういうこと言うかな……? それに、死んだら殺しようもないような……」
「冗談に真顔で返さないでよ。もう」
「いたっ」
春人はアメリアに叩かれてしまった。言葉自体は冗談だが、告白は冗談ではない。春人も顔を真っ赤にしている。エミルやサキア、初恋の相手である美由紀など……彼としては様々な人物の表情が思い浮かんでいた。
「アーカーシャに帰ったらちゃんと答え聞かせてよね。いつまでもキープ状態はモテないわよ?」
「う、うん……わかった。なら、まずは脅威を取り除かないとね」
「そうね……鉄巨人4体倒されても首都には変わった様子はなさそうね。内部も気になるし、このまま正面突破を続けましょう。機を見て、レナ達も来てくれるわ」
春人とアメリアはお互い頷きあって前へと進む。圧倒的な脅威を滅ぼす為に……。勝てるかどうか、この時の彼らの脳裏にはそのような考えなど完全に消えていた。
聖母神としてフィアゼスの巨大な像も存在している首都メルカール。その街が視認できる位置まで、春人たちも来ていたのだ。
「どういう配置になってるんだろ?」
メルカールまで数百メートルの位置。木陰に隠れながら春人は様子を伺っている。春人の視線の先には赤い甲冑の鉄巨人が数体配備されているのは確認が取れていた。
「情報の段階から数は変わってないとすると……鉄巨人8体にサイクロプス2体、フェンリルとケルベロスが1体ずつ。それから、アテナとヘカーテね」
隣に立つのはアメリアだ。敵の戦力を冷静に分析している。数百メートル先に見えるのは鉄巨人が4体。残りは街の中に居るのか、裏口に配備されているのか、春人とアメリアの場所からでは判断はつかなかった。
「普通、こういう場合って、正面と裏口に回ると思うんだけど……」
春人はギャグでも見ているような表情で、自分の背後に目をやる。レナやルナ、美由紀たちがしゃがんだ状態で待機していたのだ。春人の視線に気付いたレナはピースサインを彼に送った。
「どのみち、ミルドレアの通信も途絶えたみたいだし、中の主要人物は拘束されたか死亡したか……裏口から回っても一緒よ。正面突破の方が戦力を分散させずに済むわ」
アメリアの性格の表れか……強引な手段ではあるが、春人としても謎の彼女の自信に付いて行く覚悟は出来ていた。
「春人さま、アメリア。後程、中でお会いしましょう。ご武運を祈っておりますわ」
後方に待機しているレナが、春人達に声をかける。春人も彼女に手を振って返した。先陣を切るのは春人とアメリアだ。後からレナとルナの二人が潜入することになっている。ミルドレアとアビス、美由紀もその時に同行する算段となっていた。
「高宮くん、私が言えることではないけど……気を付けてね」
「うん、ありがとう委員長」
こちらに飛ばされて来て日の浅い美由紀は、春人の強さを初め分からないことだらけだ。しかし、アルトクリファ神聖国に行くことに関して少しの違和感も感じなかった。
むしろ、これが自分の運命なのだと、そう直感が教えている。アビスというデスシャドーの出現もその直感に自信を持たせる要因になっていた。
「ま、美由紀の心配は必要ないわよ。レナ達が居るし」
「ああ、わかってる。じゃあ、行こうか」
「ええ、「コンビプレイ」でね」
春人とアメリア……二人を纏う闘気は収束され、力強く解放された。そして、二人は歩きだし4体の鉄巨人に向かっていく。
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「ブウウウウウ」
数百メートル先から近づいて来た春人とアメリア。彼らの接近に鉄巨人たちが気付いたのは10メートル程度の地点だ。
「鉄巨人は4体……アメリア、どうしようか?」
「魔法剣で行くわよ。春人、ユニバースソードを出して」
「了解」
春人はアメリアにそう言われ、ユニバースソードを彼女に見せた。彼女はそこに雷撃球の魔法と同じ、電撃属性を付与していく。春人の剣は帯電状態に変化した。
各個撃破が基本スタイルの「ソード&メイジ」に於いては非常に珍しい光景だ。威力が飛躍的に向上し、遠距離攻撃も可能になる魔法剣。魔法剣は彼らとしても初めての行為と言える。
「俺が先陣を切るよ。援護を頼む」
「わかったわ」
レベル400の鉄巨人を4体同時だ。消耗を最小限に抑える意味も込めて、二人は最初から全力を出していた。
春人は鉄巨人の1体に猛スピードで接近をする。鉄巨人を大刀を構えているが、倍のレベル差は如何ともし難く、最初の鉄巨人は帯電状態のユニバースソードの餌食になった。
しかし、残り3体は怯むこともなく春人に同時に襲いかかる。単独であれば、春人でも苦戦は免れない状態であっただろう。しかし、後方からの雷撃球によるアメリアの支援。倒すまでにはいたらないが、鉄巨人の動きを止めるには十分な威力となっていた。
「どう? 完璧なタイミングでしょ?」
「さすが、アメリア」
動きの止まった鉄巨人。レベル800に達している春人にとって、1体ずつの撃破はそう困難なものではなかった。さらに影状態のサキアの追撃も含まれているのだ。アメリアの後方支援はその後も続き、鉄巨人たちが全滅するのに数分と時間はかからなかった。
鉄巨人4体は見事に殲滅され、巨大な結晶石を残して崩れ去って行った。強力無比なコンビプレイ……春人の中にもそのような感情は浮かんでいた。
「春人、やっぱり私達のコンビは最強ね!」
「うん、アメリア! うわっ!」
ハイタッチを交わす二人。しかし、アメリアはそのまま春人の胸へと飛び込む。
「……私の気持ちはわかってるでしょ? 絶対死なないでよね? 死んだら殺すから」
アメリアは春人の胸の中でつぶやいた。春人にも聞こえる音量、彼女なりの告白と言えるのか。
「ここでそういうこと言うかな……? それに、死んだら殺しようもないような……」
「冗談に真顔で返さないでよ。もう」
「いたっ」
春人はアメリアに叩かれてしまった。言葉自体は冗談だが、告白は冗談ではない。春人も顔を真っ赤にしている。エミルやサキア、初恋の相手である美由紀など……彼としては様々な人物の表情が思い浮かんでいた。
「アーカーシャに帰ったらちゃんと答え聞かせてよね。いつまでもキープ状態はモテないわよ?」
「う、うん……わかった。なら、まずは脅威を取り除かないとね」
「そうね……鉄巨人4体倒されても首都には変わった様子はなさそうね。内部も気になるし、このまま正面突破を続けましょう。機を見て、レナ達も来てくれるわ」
春人とアメリアはお互い頷きあって前へと進む。圧倒的な脅威を滅ぼす為に……。勝てるかどうか、この時の彼らの脳裏にはそのような考えなど完全に消えていた。
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