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20話 王国の動き

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「ずいぶんとおもしれぇ話になったな」
「本当にね。個人的には独立って好きでもないけど」

 酒場「海鳴り」にていつものようにアメリアは飲んでいた。彼女の前方には春人が、そしてバーモンドも近くで立っている。

「あんなに挑戦的な発言しておいてよく言うよ」
「まあ、このままじゃどこかの国に攻められるというのはわかってたからさ、今のままじゃ駄目だとは思ってたの。だから承諾したのよ」

 円卓会議の翌日、酒場はその話で盛り上がっていた。ギルド長ローレンスが当初は向かう手筈でアメリアと春人は護衛という役割だったが、よりインパクトを与える意味合いで彼らだけで乗り込んだのだ。インパクトは相当与える結果になっただろう。

「神聖国はある程度予想が付くけど……他の国はどう出るかな」
「そうねぇ……」

 アルトクリファ神聖国は、アーカーシャと同じく宣戦布告をした。彼らの目的はわかっている為、ある程度行動は予見できる。

「王国はおそらく穏健派が協力的ですわ」
「え……? レナさん」
「ごきげんよう、春人さま」

 春人たちが話している席に突如現れたのは、「ビーストテイマー」の片割れのレナだった。細く適度に筋肉の付いた腹を大きく出した衣装と彼女の程よく焼けた全身は、「海鳴り」に来ていた客の視線を一瞬で集めた。もちろん、賢明な客は彼女に手出しなどするわけがない。

「ど、どうも……本日もご機嫌麗しく……」
「春人、あんた言いなれない言葉使わなくてもいいのに」
「いや、なんとなくレナさんの前だと使いたくならないか?」
「まあ、言いたいことはわかるけど」

 レナはアメリアと春人の会話を聞いて悪戯っぽく笑った。彼らのやり取りが面白かったのだろう。

「お二人にそう言われるのは光栄ですが、本題に入ってもよろしくて?」
「え、ええ。そういえば、穏健派がどうとかいってませんでした?」

 レナも真面目な表情に変わる。

「実はハインリッヒ国王陛下はまだ郊外の別荘に滞在しておりますわ。イスルギ様たちは協力していただけるとか」
「レナさん? なんでそんなことわかるんですか?」

 まだこの世界には疎い春人は疑問が絶えないことが多い。レナの国王のことを知っている風なところや穏健派という言葉……彼には全くわかっていないのだ。

「春人さまのお名前から察するに、この辺りの方ではありませんのね」
「春人は遠くから来たのよ。ま、それはともかくレナはレジール王国での依頼もこなす遠征組だから、比較的向こうの情勢に詳しいのよ」
「そういうことか、なら国王陛下とも親しいんですか?」

 春人の質問にレナは笑顔で頷いた。さすがはSランク冒険者といったところだろう。春人自身もそんなレナに感心した。

「簡単に申し上げますと、王国は穏健派と強硬派に分かれておりまして……」

 レナは春人にも分かるように王国の現状を掻い摘んで話した。王国は現在、ハインリッヒやイスルギを中心とする穏健派、ハインリッヒの息子であるラグア・ハインリッヒを中心とした強硬派に分かれていた。

 長年、王族の世襲制が続いていた国家ではあるが、現国王は息子のラグアの性格などを危険視し、また、最近の政治情勢も鑑み王政を廃止する流れを汲んだ。それに反発しているのが息子のラグアとそれを支持する貴族達である。現在、レジール王国は2つの勢力に分断されているといっても過言ではない。

「……父親と息子の争いか。なかなか難しい問題ですね」
「そうですわね。父上は民あっての国家、ご子息様は力こそが民のためになるという主張ですわ。その為に、この大地の結晶石の独占を考えておいでですの」

 レナも難しい問題であることは理解しているのか、息子のラグアの考えも一方的に否定することはしない。王族の廃止が確実に良い方国へ向かうかはわからないからだ。

「結局、ラグアの奴は今の地位を失いたくないだけでしょ? 事実、私設兵として盗賊や賞金首なんかも雇ってるらしいし」
「あら、さすがはアメリア。情報が早いですわね」
「ま、一応ね。その勢力のおかげで、穏健派の勢力はかなり押し込まれてるとか」
「実際は盗賊団などの私設軍は巧妙に隠されておりますの。公式では居ないはずの部隊、これがどういう意味を持つかはおわかりでして?」

 春人、アメリア共にレナの問いかけに対して、答えを考える。公式には存在しない部隊の編成……それがどういう意味を持つのか。レナは声を落とし、周囲の者達が誰も聞いていないことを確認していた。バーモンドも周囲に注意を向けている。



「非公式の部隊を使っての強襲。例えアーカーシャに攻めて来たとしても犯罪集団の計画にできるわ」
「その通りですわ。ラグア・ハインリッヒは労せずに結晶石のルートを確保できます」
「……しかし、それは今回急に決まったわけじゃないですよね?」

 以前からの計画、部隊を集めていたのがいつからかはわからないが、今回の円卓会議よりはるか以前なのは間違いない。レナも春人の質問に頷きで返した。

「ええ、以前からの計画ですわ。おそらく、春人様がここに来られる以前からの。闇夜を狙っての強襲、今回の会談の結果で近い内に決行されることでしょう」
「そんな……」

 春人はレナの言葉に恐れたのか、顔色を変える。アーカーシャへの私設軍の強襲……聞き慣れない言葉に春人は焦っていた。

「つっても、私たちが居るんだしそう簡単に達成できるわけないのよね」
「ですわね、「ソード&メイジ」「ビーストテイマー」「ブラッドインパルス」3つも存在しているSランクパーティですから。このメンバーを凌ぐ為にどれだけの戦力が必要になるのか、想像もつきませんわ」
「あと老師もいるしね……ま、私達だけで、国の1つは余裕で壊滅可能ね」

 政治情勢に疎い春人とは違い、アメリアやレナは余裕の表情だ。今すぐ強襲が行われたとしても対応するだけの余裕があるのだろう。単純に彼女らを殺すだけであれば、寝込みを襲うなど色々な手は考えられるが、そういった状況も想定しての判断なのだろう。

「まあ、元々人口8万の国を作るって宣言してるわけだしね。それだけの戦力がないと、どの道、どうしようもないわ」
「そういえば、国の件は街の人の承認は得たんだよね?」
「はい、春人さま。そちらは問題ございませんわ。目安箱にて多くの同意を得ましたし」

 目安箱での街の人々の承認の有無、話には聞いていた春人だが、改めて確認をし、そして安心した形だ。一つの国が生まれる……その礎に自分も加わることになるのだ。

「国か……改めて考えると大きなイベントだな」

 バーモンドも首を捻りながら言った。一国の政治を冒険者たちで行えるのか……不安は残るのだろう。

「あくまで国っていう体裁なだけだからね。大きくは今までと変わらないし。元首はギルド長に丸投げだし、冒険者ギルドが細かいことはやってくれるでしょ」
「いざとなれば、わたくしやルナが召喚を駆使して調整致しますわ。農作物の製造などで人手もいるでしょうし」
「召喚術って便利よね……私も欲しい。前のお化けガエルペットにしてこき使ってもよかったかな?」

 と、アメリア達の発言はどこまでも余裕が感じられる。おそらく不安なのは春人だけだ。適当な考えも垣間見えるが、基本的にアメリアやレナには国を作ることへの不安はないようだ。春人もその精神力は見習うべきとして考えた。毎日、命のやりとりをしている者の余裕とでも言うべきか。

「で、今回のことだが、なんも不安はないのか?」
「そうね、あるとすれば内通者……」

 バーモンドの問いかけに、アメリアは内通者の不安を語った。春人としてもそれは考えていたことだ。真っ向勝負では絶対有利のアーカーシャ。各地の犯罪者や賞金首を集めた程度では歯が立たないのであれば、手引きをする者を用意するはず。

「ここからはもう少し慎重に……場所を変えましょうか」



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「なるほど、ここが春人さまのお部屋ですね。綺麗にされてますわね」
「いや、まだそんなに経ってないので、物を置いてないだけです」

 場所を変える為に移動した春人、アメリア、レナの3人は2階の春人の部屋へと移動した。バーモンドは仕事があるので、そのまま1階に残ったが、冒険者の彼らは依頼がなければ時間に縛られる必要はない。特に1回の探索で相当な金額を稼げる彼らにとってみれば時間を有効活用することは容易だ。

「ベッド借りたっと」

 気持ちよさそうにそのまま寝転がるアメリア。自分の普段寝ているベッドに警戒心もなく寝てくれるというのは嬉しくもあり、恥ずかしくもあった。

「アメリア、俺のベッドなんだけど……」
「ダメなわけ? エミルは何回呼んだんだか」
「いや、呼んでないし……」

 隣の部屋同士ではあるが、本当に付き合っているならともかく、疑似の恋人関係でさすがにそれをする勇気は春人にはなかった。しかもこの部屋は下宿させてもらってるだけなのだ。

「なるほど、エミル様とは本当は恋人関係ではないのですね?」

 レナもある程度予想はしていたが、春人に確認の意味も込めて問いかけた。

「はい、まあ……。エミルの安全の為にそういうことにしているんです」
「なるほど、確かにこの店で働く以上はその方がいいかもしれませんわね。あれだけ可愛らしい方ですし」

 相当な美人であるレナから見ても、エミルはそのように映るようだ。春人としては嬉しいことだが、疑似の恋人という事実はなんとなく微妙に感じてしまう。

「といっても、エミルだって誰でもいいわけじゃないでしょ。あんたが相手だから、そういう噂が立っても良いって思ってるのよ」

 春人の内面を読み取ったのか、アメリアはベストタイミングでフォローとも取れる言葉を彼に投げかけた。レナもそれに頷いている。

「うふふふ、そうですわね。ただ、偶然とはいえ別の女を二人もご自分の部屋に連れ込むなんて……春人さまは悪い方ですわね」
「結構、天然たらしの才能もあるかもね。あんたが影でなんて言われてるか知ってる?」

 春人は考えるまでもなく想像がついた。その為、敢えてアメリアの回答は拒否した。他の冒険者からは、彼の今の境遇を妬む声は多い。

「いや、想像はできるけど聞かないでおくよ。そ、それよりさっきの話の続きがしたいんだけど……」

 春人はそれ以上、この方面の話は聞かない方がいいと判断し、本題へと話題を戻した。アメリアたちも特にそれ以上は追及することなく彼に従う。

「内通者の話でしょ。確かに内通者が居るとまずいのよね」
「ええ、主力の方々が街を離れている時などに襲撃をかけられますしね」

 Sランク冒険者を初めとした主力部隊。彼らが遺跡に出向いている間を利用しての襲撃は内通者がいれば容易に可能だ。彼らも常に街に滞在しているわけではないからだ。

「誰が内通者かはわかってるのか?」
「いいえ、でもメリットで考えれば多少は。可能性で言えばレナかも」
「あら? それだとアメリアの可能性もありましてよ」

 二人の美少女は春人を前にして冗談を言い合い笑い出した。可能性の話であれば、彼女らが内通者ということも十分に考えられるだろう。

「まあ、メリットから考えてありえないわね」
「そうだろうけど、冗談にしても笑えないな」
「申し訳ありません春人さま。不快にさせるつもりはございませんでした」

 レナは深々と頭を下げて謝った。丁寧なお辞儀に春人は恐縮してしまう。

「いえ、そんな……そんなに謝らなくてもいいですよ」
「とにかくメリットの問題。私達やレナにはそのメリットが薄いのよ。内通者として協力して手に入る物は?」

 春人へのアメリアからの問題。内通者としての見返り……裏切り者のレッテルを貼られてもなお得られることを欲するもの。

「お金や名声、地位はレナさん達が得る物としては薄い……」

 アメリアやレナがその為に裏切りを行うとは考えにくかった。そもそも、冒険者として生きていくだけで、今後も確実に名声は向上する。
お金についても、既に一生を暮らせる額に到達して、オーバーペースになってきているはずだ。アメリアやレナが金銭的に相当余裕があることなど春人にもわかっていた。

「そうなると……肉欲?」

 春人は1つの答えに辿りついた気がした。アメリアとレナも頷き笑っている。

「正解。この街を占領する見返りは地位の確保に結晶石の入手、それから娼館を初めとした女性の確保じゃない?」

 男としては非常に大きな見返りと言えるかもしれない。生活の心配をすることなく、綺麗な女性を好きな時に抱ける。内通者はそれくらいの好待遇を約束されているのだろう。春人の出会ったことのある人物の中で、まさにイメージ通りの者が一人居た。

「もしかして、アルゼル・ミューラーみたいな奴が、内通者?」
「おそらくミューラー自身で間違いないかと。王国での目撃情報もありますので」

 レナはそう言った。彼女は既にいくつかの情報でアルゼル・ミューラーが内通者だという確信は得ていたのだろう。

「もちろん、ミューラー自身、冒険者としては優秀です。金銭的に余裕がないとは考えられません」
「ま、腐ってもAランクだしね。普通に15000ゴールドは1日で稼ぎ出せるでしょ。まあ、あの男がそれだけしか稼いでないとは思えないけど」

 レナとアメリアの発言は、釈然とはしないという様子だったが、アルゼルを認めている内容であった。1日に15000ゴールドというのは「最低でも」という意味だ。日本円に換算すれば18万円程度、2~3日続ければ1か月間、余裕で生活できるだけの金額に相当する。

「まあ、アルゼルの場合、使う額が多そうだしね。女好きだし、娼館などに通っているペースも相当でしょ」

 そういった額を冒険者の収入で賄っている。モンスター討伐と宝の売却を合わせれば十分に可能な範囲だ。特に春人としても、その行為自体は軽蔑に値しない。むしろ、男の場合は正しい使い道だろう。

「ただし、証拠はありません。あくまで推測になりますわ」
「てっとり早く強硬派の占領作戦を暴くには、内部に潜入なんだけど……まあ、そう簡単に潜入はできないだろうし」
「じゃあ、どうするの?」

 レナの話を聞いていたアメリアは、春人のベッドに寝転びながら言った。特に春人の期待するものが見えるわけではないが、脚をバタつかせている。そんな彼女に春人は問いかける

「ま、アルゼルの阿呆を監視するしかないわね」

 至極真っ当な、そして恐ろしくシンプルな答えが返ってきた。

「わたくしもそれが良いと思いますわ」
「ま、いざとなったら「ソード&メイジ」と「ビーストテイマー」がゴリ押しするから」
「それは粗暴ですわね。わたくしなんて、ミューラー1人にも手籠めにされてしまいかねないのに……」
「どの口が言ってるのよ?」

 周りから見てもレナの態度は冗談と分かるものではあったが、彼女を信頼する態度の表れなのか、アメリアの言葉はアルゼル・ミューラー如きにSランク冒険者である彼女が敗れるわけがないということを物語っているようだった。SランクとAランク……そこまでの差があるのだろうか? 春人は少し疑問を感じていた。

「ねえ、SランクとAランクは1つしか階級は違わないと思うけど……そんな圧倒的と言えるの?」
「うふふふ、春人さまのおっしゃる通りでございますわ。それなのに、単細胞のアメリアときたら……友人として悲しく思います」
「レナは黙ってなさいよ。まあ、その辺りは追々分かると思うわ」

 アメリアはレナを軽く小突きながら、春人の質問への回答は敢えて行わなかった。

「ま、とりあえずはあの阿呆への警戒ね。レナの情報からも関わっているのは間違いないけれど、詳細な目的までは合ってるかはわからないし」

 春人もまだまだ分からないことだらけではあったが、この場は頷いて終了した。

「そういえばさ、レジール王国の王様には会えるの?」
「もちろんですわ。明日にでも一度、訪ねてみましょうか」
「王様か……会談の時には会っているけど、緊張するな」

 春人としても直接会うことに緊張は隠せないでいた。総理大臣に会うようなものだからだ。実際に王様を訪ねるのは明日ということになり、今は解散することになった。そして、3人は部屋を出たが……部屋の外には偶然、エミルが通りがかっていた。

「あ、エミル……!」
「春人さん……え? アメリアさんと……えと、レナさんですか?」

 エミルは春人の部屋から、二人の女性が出てきたことに驚いていた。レナのことも知っているようだ。

「ごきげんよう、エミル様。少しお邪魔していました、こうしてお話させていただくのは初めてでございますね。お噂は聞いております、以後お見知りおきを」
「い、いえ……こちらこそよろしくお願いします」

 お互い初めての顔合わせ、エミルも噂や遠目でしかレナのことは知らなかったのだ。二人は深々と頭を下げ合って挨拶をした。

「ちょっと仕事の話してたのよ、あんまり聞かれるわけにも行かないし。別に3人で怪しいことしてたわけじゃないわよ?」

 アメリアは完全なる真実を述べて、春人の名誉を守っていた。しかし、ここは悪戯心の表われなのか、これ見よがしに春人の腕に自分の手を回しながら。

「ね、春人?」
「アメリア……腕組みながらだと、本当の事が嘘に聞こえるだろ?」

 春人としても苦笑いを隠せず、すぐにアメリアから離れた。レナもにこにこと笑顔になっている。エミル自身にも十分冗談であることは伝わっているはず……彼はエミルの方向に目をやった。

「……エミル?」

 エミルはいつも通り笑って……はいなかった。すこしむくれているような表情になっている。

「あ……じょ、冗談だよ? アメリアの言ったことは真実だから……」
「わかっています。3人で部屋に入られたのは、お仕事の話なんですよね?」
「う、うん」

 エミルもそれはわかっている表情だ。彼女も全く攻める様子はない。

「春人さんは、アメリアさんだけでなく、レナさんとも仲が良いんですね……」

 話が見えてこない……春人としてもどうすればいいのか、悩んでいた。

「あの、だから二人と部屋で話したのは偶然で……」
「はい……」

 エミルとしても仕事で部屋に入って話していたことが分かっている以上、あまり突っ込んだ話ができないでいた。いや、彼女としても自分が不機嫌になっている明確な理由まではわからないのかもしれない。

 ただ、今の現状がなんとなく不満なだけだ。形だけとはいえ、恋人であるはずの春人がアメリアとレナの二人を連れて、部屋から出てきた……。
彼女の目線は春人を射抜くように注がれていた。春人は犯罪をおかした罪人のような気持ちを味わっている。
 
「エミル……うまく言えないけど、ごめん」
「あ……いえ、私の方こそすみません。変な空気にしてしまって」

 最初に謝ったのは春人だ。なにに対してかは彼もわかりかねていたが、まず謝罪から入るのも彼の性格の1つとなっていた。エミルもすぐに謝罪を返す。

「あ、あはは……なにか、変だね」
「は、はい。そうですね……ふふ」

 そして、たったそれだけにも関わらず、先ほどの空気は和らいでいる。彼ら二人の親愛の証と言えるかもしれない。

「なんで良い雰囲気になってるのよ、春人っ」
「いてっ!」

 二人だけの空間を作っていることに苛立ちを覚えたアメリアが、彼に肘打ちをくらわせた。そんなやり取りをレナは笑顔で見ている。


「アメリア……とても楽しそうですわね。本当に、嬉しいですわ」
「どういう意味よ?」
「うふふ、以前のあなたから比べて、本当に人生を謳歌している。そのように感じますわ」
「……レナ。ええ、楽しいわよ、自分でも驚くくらい」


 レナの言葉にアメリアは即答した。運命的な出会い……それは実在し、彼女の心の中を少しずつ変えていってるのかもしれない。レナの心にはそんな思いが生まれた。
 もちろん、二人の会話の内容の意味は春人やエミルはよくわかっていない。なんとなく質問はしない方がいいと二人は感じていた。


「うふふ、でも春人さまを巡るこの関係……どのように進んで行くのでしょうか? とても楽しみですわ」


 レナはその後も続いた、アメリア、春人、エミルの3人の戯れをいつまでも眺めていた。
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