上 下
8 / 9

8話

しおりを挟む

「エリナ! お前は伯爵令嬢になったわけだ! 前の婚約破棄はなかったことにしようではないか! 私の元に戻ってこい!」

「……」

「……」


 私もアラン様も無言にならざるを得なかった……まさか、ここまでのことを言えるとは思っていなかったからだ。いくら傍若無人のクラウドでも……と考えていた。でもそれは私の勘違いだったようね。


「クラウド様……何をおっしゃっているのかわかりませんが、私はあなた様の元に戻るつもりはありません」

「な、なんだと……! どういうことだ……?」


 私の言葉に対して、クラウド様は本気で驚いている様子だった。本気で驚く時点で既に意味が分からないのだけれど、彼にわかるように説明する必要がありそうね。


「当たり前でしょう? 既にアラン様と婚約しているんですから……そんな勝手なことできませんよ」

「なにを言っている!? アランは伯爵令息だろう? 私と一緒になった方が確実に良いはずだ! 考え直せ! 今からであれば元に戻れると言っているのだからな!」

「……」

「……」


 また、無言にならざるを得なかった。クラウドは完全に勘違いしているようだ。というより、自分が悪いことを自覚していないようだわ。

「クラウド様は私を捨てたでしょう? それを今さら戻ってこいだなんて……あまりにも身勝手すぎます」

「その通りですね、クラウド様。現状、エリナ嬢があなたの所に戻って良い結果になるとは思えません」


 アラン様も的確にフォローしてくれた。その通りだ……私が戻る理由がない。


「な、なんだと……! それではエリナ! 私のところに戻る気がないと言うのか……!?」

「だから最初からそのように言っています。もうクラウド様を信用することができません。私が伯爵令嬢になったからと言って急に手のひらを返す……そんな人を誰が信用できるんですか!?」

「え、エリナ……そんな……!」


 クラウドはその場で崩れ落ちてしまった。でも、自業自得というものだ。少しは反省してくれれば良いと思うけど……期待はできないわね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

親友に婚約者を奪われ婚約破棄されました。呪われた子と家族に邪険にされ続けた私には帰る場所はありません。

五月ふう
恋愛
「サナ!  この呪われた奴め!!」 足を止めて振り返ると そこにいたのは、 「ハイリ、、、。  サンディア、、。」 私の婚約者であるハイリと 友人のサンディアだった。 「人の心を読み取れるんだろう!!  僕のことを  ずっと騙していたんだな!」 貴方も、 そう言って私を責めるのね。 この力のせいで、家族からずっと 気味悪いと邪険にされてきた。 「ハイリ。」 「俺の名を呼ぶな!!  気味が悪い!」 もう、貴方とはいられないのね。 「婚約破棄しましょうか?」 ハイリは私を絶望に突き落とした。

最近のよくある乙女ゲームの結末

叶 望
恋愛
なぜか行うことすべてが裏目に出てしまい呪われているのではないかと王妃に相談する。実はこの世界は乙女ゲームの世界だが、ヒロイン以外はその事を知らない。 ※小説家になろうにも投稿しています

婚約破棄ですか?それでは、帳簿を置いていきますね?ああ、借金です!

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

王太子から婚約破棄……さぁ始まりました! 制限時間は1時間 皆様……今までの恨みを晴らす時です!

Ryo-k
恋愛
王太子が婚約破棄したので、1時間限定でボコボコにできるわ♪ ……今までの鬱憤、晴らして差し上げましょう!!

その公女、至極真面目につき〜デラム公女アリスタの婚約破棄ショー〜

ルーシャオ
恋愛
デラム公女アリスタは、婚約者であるクラルスク公爵家嫡男ヴュルストがいつも女性を取っ替え引っ替えして浮気していることにいい加減嫌気が差しました。 なので、真面目な公女としてできる手を打ち、やってやると決めたのです。 トレディエールの晩餐会で、婚約破棄ショーが幕を開けます。

悪役令嬢は、婚約破棄の原因のヒロインをざまぁしたい!

公爵 麗子
恋愛
濡れ衣を着せられて婚約破棄なんて、許せませんわ! ヒロインの嘘で何もかも全て奪われた罪、償ってもらいますわ。 絶対に誰よりもしあわせになってみせますわ。

王太子に婚約破棄されたら、王に嫁ぐことになった

七瀬ゆゆ
恋愛
王宮で開催されている今宵の夜会は、この国の王太子であるアンデルセン・ヘリカルムと公爵令嬢であるシュワリナ・ルーデンベルグの結婚式の日取りが発表されるはずだった。 「シュワリナ!貴様との婚約を破棄させてもらう!!!」 「ごきげんよう、アンデルセン様。挨拶もなく、急に何のお話でしょう?」 「言葉通りの意味だ。常に傲慢な態度な貴様にはわからぬか?」 どうやら、挨拶もせずに不躾で教養がなってないようですわね。という嫌味は伝わらなかったようだ。傲慢な態度と婚約破棄の意味を理解できないことに、なんの繋がりがあるのかもわからない。 --- シュワリナが王太子に婚約破棄をされ、王様と結婚することになるまでのおはなし。 小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...