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3話
しおりを挟む「縁談の話に乗ってくれて感謝しているよ、エリナ嬢」
「え、ええ……ありがとうございます」
私の新たな縁談……それは伯爵令息であるアラン・メルビル様からのものだった。アラン様の噂は私も聞いている。とても優しいと評判の彼だけれど……クラウドとのことがあるので、私は身構えていた。
「エリナ嬢の噂は聞いているよ」
「そ、そうですよね……あはは」
私は笑うことしか出来なかった。通常は断られてもおかしくない縁談だからだ。でも、彼は応えてくれた。
「君の過去については追及するつもりはない。私は……エリナ嬢そのものを気に入ったのだから」
「アラン様……」
それはとても嬉しい言葉だった。私の過去については追及しない……私自身を気に入ってくれたのはとても大きな収穫だ。アラン様なら信用してもいいかもしれない。私の中でそんな感情が芽生えていた。
「まあ、君の境遇を鑑みれば、すぐには信用できないと思うよ。聞いた限りではクラウド様に理不尽な婚約破棄があったようだからね」
「あ、いえ……それは……」
私としてもなんて答えればいいかわからない事柄だった。
「いや、そんなことはどうでもいいんだ。大事なのは未来のことだからね。もしもエリナ嬢が私を気に入り、後世の子を宿してくれると言うならば……これほど嬉しいことはないよ」
「アラン様……」
なかなか生々しい発言だったけれど、むしろ貴族の間ではこのくらいが普通なのかもしれないわね。後世に続く子孫を残す……それは貴族として生まれた身としては当たり前のことなのだから。私の代で終わらせてはならない。どんな手段を使っても後世の子孫は残さないと駄目だから。
これは一般人よりも重要な考えだった。私のネロウ家は元は一般人だけれど、お父様達の苦労を水の泡にするわけにはいかないことだった。
「私は……アラン様の子を産みたいと考えています」
「ありがとう。婚約を機に私のことを愛してくれるように努力してみるさ」
「はい……アラン様」
直感による部分は大きいけれど、アラン様は信じられるような気がしてしまっていた。クラウド様とは別の魅力に満ちているお方……そんな印象が強いのは事実だ。
アラン様の子を産んでみたい……そのように思うには彼と過ごした時間は少ないのだけれど。それでも、この段階で確信に変わっていた。それだけアラン様との出会いが大きかったのは言うまでもない。
私はアラン様に一目惚れをしてしまったのだ。でなければここまでの感情は生まれないと思うから……。
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