上 下
5 / 7

5話

しおりを挟む

「オルテガ……お前、どうしてニエルと一緒にいるんだ?」

「おや、誰かと思えばミカエルじゃないか。久しぶりだな」

「久しぶり、ではない。お前は……よくも堂々とセラに話し掛けられるな」

「……どういう意味だ?」


 オルテガ様は現状を把握できていないようだ。ニエルも同じだろうか。私がミカエルと一緒にいる時点でどういう話をされていたかは想像がつくと思うのだけれど。


「オルテガ様よ……セラ様と話しているみたいだけれど、大丈夫なのかしら?」

「オルテガ様可哀想……セラに何か言われなければ良いけれど……」


 完全にアウェーの環境が整いつつあった。どうも、周囲の貴族令嬢や令息はオルテガ様の味方になっているようだ。真実は誰にも分からないのに……貴族とはこういうものなのかしら?


「お前はニエルと一緒になる為に、セラと別れたんだろう? 今、噂になっていることは全て出鱈目じゃないか」

「おいおい、人聞きの悪いことを言うなよ、ミカエル。私はセラの束縛が厳しかったから仕方なく別れたんだ。彼女の束縛が強かったのは事実さ」

「束縛、か。本当なのか、セラ?」

「オルテガ様を束縛したつもりなんてないわ。ただ、彼がそれだけ注意を受ける立場だったってことよ」


 オルテガ様は侯爵令息にしては勉学も礼儀作法も学べてはいなかった。それは将来的にマズいと思って私は忠告していただけに過ぎない。なぜかそれを精神的疾患を持つヒステリー女だと言われたけれど。


「見ろオルテガ。セラはこう言っているぞ?」

「ふん、そんなことは自分の都合の良いように解釈できるだろう? 私やニエルから見れば、精神的な疾患を持っているようにしか思えなかったのさ。そうだろう? ニエル」

「ええ、そうですね。私も姉さまは精神的疾患を持っていると思います」

「ニエルまで……」


 本当に失礼な言葉だった。これではますます、周囲の人達に誤解を与えてしまうではないか。おそらくオルテガ様とニエルの二人はわざとやっているわね。


「精神的疾患か……まあ、私から見ればセラは正常にしか思えない。むしろ、二人の方が何かを患っているように見えるぞ?」

「なんだと、ミカエル」

「ま、まあ! 失礼な……!」

「どちらの言い分が正しいか、公式な場で判断してもらおうじゃないか。出来れば国王陛下がいる場の方が良いな」


 ミカエルの反撃が開始されたと言ったところだろうか……明らかに二人は焦っているようだったし。こうなれば、二人の罪を問うのも良いかもしれないわね……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄したので、元の自分に戻ります

しあ
恋愛
この国の王子の誕生日パーティで、私の婚約者であるショーン=ブリガルドは見知らぬ女の子をパートナーにしていた。 そして、ショーンはこう言った。 「可愛げのないお前が悪いんだから!お前みたいな地味で不細工なやつと結婚なんて悪夢だ!今すぐ婚約を破棄してくれ!」 王子の誕生日パーティで何してるんだ…。と呆れるけど、こんな大勢の前で婚約破棄を要求してくれてありがとうございます。 今すぐ婚約破棄して本来の自分の姿に戻ります!

婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった

神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》 「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」 婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。 全3話完結

【短編】婚約者に虐げられ続けた完璧令嬢は自身で白薔薇を赤く染めた

砂礫レキ
恋愛
オーレリア・ベルジュ公爵令嬢。 彼女は生まれた頃から王妃となることを決められていた。 その為血の滲むような努力をして完璧な淑女として振舞っている。 けれど婚約者であるアラン王子はそれを上辺だけの見せかけだと否定し続けた。 つまらない女、笑っていればいいと思っている。俺には全部分かっている。 会う度そんなことを言われ、何を言っても不機嫌になる王子にオーレリアの心は次第に不安定になっていく。 そんなある日、突然城の庭に呼びつけられたオーレリア。 戸惑う彼女に婚約者はいつもの台詞を言う。 「そうやって笑ってればいいと思って、俺は全部分かっているんだからな」 理不尽な言葉に傷つくオーレリアの目に咲き誇る白薔薇が飛び込んでくる。 今日がその日なのかもしれない。 そう庭に置かれたテーブルの上にあるものを発見して公爵令嬢は思う。 それは閃きに近いものだった。

誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~

舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」 わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。 ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。 驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。 ※話自体は三人称で進みます。

知らない男に婚約破棄を言い渡された私~マジで誰だよ!?~

京月
恋愛
 それは突然だった。ルーゼス学園の卒業式でいきなり目の前に現れた一人の学生。隣には派手な格好をした女性を侍らしている。「マリー・アーカルテ、君とは婚約破棄だ」→「マジで誰!?」

どうかそのまま真実の愛という幻想の中でいつまでもお幸せにお過ごし下さいね。

しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、私は婚約者であるアルタール・ロクサーヌ殿下に婚約解消をされてしまう。 どうやら、殿下は真実の愛に目覚めたらしい……。 しかし、殿下のお相手は徐々に現実を理解し……。 全五話

公爵令嬢の私を捨てておきながら父の元で働きたいとは何事でしょう?

白山さくら
恋愛
「アイリーン、君は1人で生きていけるだろう?僕はステファニーを守る騎士になることにした」浮気相手の発言を真に受けた愚かな婚約者…

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。 二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。 それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。 しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。 調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。

処理中です...