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3話

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「噂されているわね……マルナ」

「本当ですね、セラ様」


 私とマルナは少数の護衛を連れてとあるパーティーに参加していた。そこで感じた違和感……ある意味、予想が出来ていたのだけれど、こんなことになるなんて。


「見てください、伯爵令嬢のセラ様ですよ。ほら、モンス侯爵家のオルテガ様と付き合っていた」

「なんだかヒステリーを起こして婚約が解消されたらしいが……」

「精神疾患を患っているとかなんとか……」


 噂はするけれど、誰も私に近づいてこようとしない。私はどうやら危険人物に見られているようだった。精神疾患患者と思われているのは困るわね。これでは次の縁談の話が来ないだろうし……。

「酷い噂が流れているようですね……」

「本当ね。ニエルもオルテガ様も何を考えているのかしら」


 精神疾患なんて嘘でしかないのに、その噂が流されている……これは、王家にもその話で婚約破棄の話をしたことに他ならない。オルテガ様はなんてことをしたのかしら……まあ、実際にしたのはその父親であるデウガ様なんでしょうけれどね。


「はあ、憂鬱になりそうだわ……せっかく、マルナとこうしてパーティーに出席して気分転換をしようと思ったのに……」

「心中お察しいたします、セラ様。帰りたくなったらいつでも言ってくださいね」

「わかったわ。ありがとう」


 マルナに気を遣わせてしまっている。パーティーに出席しているからには、少しくらい時間を潰す必要があるだろうか。さて、どうしたらいいのかしら……。


「おや、君は……セラじゃないか?」

「えっ、あなたは……ミカエル?」

「そうだよ、ミカエルだよ! 久しぶりじゃないか!」


 まさか、こんなところでミカエルと出会えるなんて思わなかった。彼とはマルナと同じく幼馴染である。侯爵令息のミカエル・アンバスター。地位は上の人物だけれど、私は以前から彼のことを呼び捨てにしていた。


「5年振りくらいかな? セラ、綺麗になったな!」

「やめてよ、もう……ミカエルだって背が伸びているじゃない。格好良くなっているわよ?」

「はは、ありがとう」


 ミカエルと前に会ったのは12歳くらいの時だ。それからしばらくは会っていなかった。お互いに背が伸びて外見が変わるのは仕方ないわね。でも、ミカエルは好青年みたいな感じになっている。前はわんぱくなイメージがあっただけに、随分と変わったわね。


「積もる話なんかもしたいところだね」

「ええ、そうね。でもまあ、ここでは難しいかもしれないけれど」


 周囲が私の噂で持ち切りだからだ。あんまりこの場でミカエルと話すのは良くない。彼まで好奇な目で見られるだろうからだ。


「なんだか、変な噂話が出ているみたいだけど……」

「え、ええ……そうね」

「心当たりはあるのかい?」

「……」


 出来ればミカエルには知られたくない。でも、流石に話さないわけにはいかないわよね。私は覚悟を決めた。
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