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22話 仕事中にて その2

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 ラグディ・コーブル公爵視点……。


「申し訳ございませんが、コーブル公爵。いくら公爵様と言えども、王家の宮殿に無許可でお入れするとは出来ません。それは、コーブル公爵が一番良く分かっていらっしゃるかと思われますが……」


「そんなことは分かっている。私を誰だと思っているのだ?」

「は、はあ……ですので、ラグディ・コーブル公爵ですよね?」

「その通りだ」


 先ほどから正門に立っている兵士達と同じやり取りを繰り広げている。ルドルフの奴は消極的だったが、今回も連れて来させている。目の前の兵士に用事があるわけではないのだ。王家からの承諾がなければ、いかに公爵家といえども、宮殿内に入れないことくらいは分かっていた。


「公爵家のお方であれば、私達が何のために門番をしているのかをお察しいただきたい。いくら、コーブル公爵でも、無断で中に入れてしまえば、下手をすると処刑ものです」


 処刑というのは私かそれとも門番自体のことを言っているのか。実際にはそこまで重い処罰にはならないだろうが、この兵士は折れる気がないのは十分に伝わって来た。

 ある意味で、門番の鑑と言えるのかもしれないな。


「私やルドルフが用事があるのは、エメリ嬢だ。彼女を呼んで来て欲しい」

「エメリ様ですか……?」


 門番の顔色が変わった。おそらくエメリ嬢は宮殿の中でも相当に有名になっているからだろう。同時に、私達コーブル公爵家との関係性を知っているのかもしれない。


「中に居る者が入口に出て来るのは問題なかろう? そして、少しばかり話をするだけだよ。何も心配することではないし、お前達が門番としての責務を放棄していることにもならんはずだ」

「それはそうかもしれませんが……」


 明らかに私達を警戒しているな。フラック王子殿下から話を聞いているのかもしれないが。多少、強引な方法だったかもしれないが、私達は何としてもエメリ嬢に戻って来てもらう必要があったのだ。

 各事業の生産効率が低下し、労働力を増やし、重労働を課した結果、暴動が起きるという悪循環になってしまったからな。これを沈める最善策は聖女の能力の行使であると言えるだろう。


「あ、あの……コーブル公爵」

「ん? なんだ……?」


 使用人の一人と思われる者が入口から出て来た。エメリ嬢の姿はないが、私達のやり取りを見てエメリ嬢に話をしに行ったのか? 何やら様子がおかしいが……。


「あの、エメリ様にコーブル公爵が来ていることをお伝えいたしました」

「ほう、気が利くではないか。それで?」

「はい、お伝えは致しましたが……会わない、との回答でございました。そのまま、お帰り下さいと」

「な、なんだと……?」

 ば、馬鹿な……あのエメリ嬢が我々に対して、そんな強気な発言をするなんて! まだ、話を聞いてからならともかく、会うことすら拒むとは……! これは、非常にマズいことになっているぞ……。
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