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13話 逆転 その1

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「ルドルフ様……月の1万ルベールという額なのですが……」

「ああ、どうしたのかな? 不満か?」

「不満と言うかなんというか……」


 問題外の金額ではあるのだけれど、ルドルフ様は気付いていないようね……。


「低すぎるというのなら、倍の2万ルベールでも構わないぞ?」


 金額を釣り上げて来たのはラグディ様だった。一気に2倍にまで引き上げられたわね。それでも、今の給料の5分の1だけれど……私の価値ってその程度しかないのかしら? なんだか自信が崩れて来そうだわ……。


「ラグディ様……そういう金額の問題ではなくてですね……」

「ん? ではなんだと言うのだ?」


 ラグディ様もルドルフ様も謝罪という言葉を知らないのかしら? まったく悪びれている様子が見られないけれど、それがまず私には信じられないことだった。


「給料の問題ではないのです……婚約破棄をされた相手の家に戻る人間が居ると思いますか?」

「何? そこからの問題だったのか?」

「そういうことです……」


 ラグディ様は公爵家とは思えないような返答をしていた。いえ、普通に貴族として問題があるように思えるわね。この家系、大丈夫なのかしら……。

「婚約破棄の件に関しては慰謝料を支払うと言っているだろう? 何が問題なのだ?」

「失礼ながら申し上げます。私は既に宮殿での仕事を行っているのです。今更、ラグディ様やルドルフ様のところに戻ることは出来ません」


 まあ、フラック王子殿下の下で働いていなかったとしても戻る気なんてないけれど……。

「な、なんと……! そんなことが……!」

「ほ、本当なのか!? エメリ……?」


 ラグディ様とルドルフ様はとても驚いている様子だった。公爵家であれば情報が向かってもおかしくないと思うけれど……本当に何も知らなかったのね。

 そんな時、リシア様が不敵に笑っているように見えた。彼女はもしかしたら知っていたのかしら?


「うふふ、ルドルフ様。情報というものは、正確に把握してから動かないと、今回のように恥をかくことになるのですよ?」

「な、なに……? リシア、お前は何か知っていたのか……?」

「うふふふ」


 リシア様が凄い怖い笑い方をしている……ルドルフ様やラグディ様が完全に呑まれているような気がするわ。

「あの……リシア様は私が宮殿で働いていることは知っていたのですか?」

「それは勿論でございますわ。だから、本音では今回の勧誘は上手くいくはずがないと思っていました」


 あ……情報取集能力に圧倒的な差があったみたいね。インパクトという意味でリシア様が一番目立っているんだけど……。

「しかし、フラック王子殿下のハートを盗むなんて、流石でございますわねエメリ様。羨ましいですわ」

「い、いや……ハートを盗んでなんて……」


 なんだか物凄く恥ずかしいことを言われている気がする。そんなに悪い気はしないけど、恥ずかしいものは恥ずかしい……。
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