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9話 公爵家の訪問 その1

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「仕事の方は順調なようだな。宮殿内での仕事の作業効率が上がっているらしいじゃないか」

「あ、はい。それは……伺っております」

「フラック王子殿下からお褒めの言葉があったぞ。私としても非常に嬉しいよ、エメリ」

「テムザ兄さま、ありがとうございます」


 本日、私は宮殿ではなく自分の屋敷で過ごしていた。フラック王子殿下から休暇をいただけた為だ。


「これでエメリがフラック王子殿下とそういう関係になれば……ふふふふ」

「お父様やお母様と思考が同じですよ、兄さま」

「ははは、冗談さ」

「もう……」


 フラック王子殿下には仕事を貰ったのでとても感謝している。でも、それだけの関係でしかない。私の方はともかくとして、王子殿下であるフラック様が、私をそのように見ているとは考えられなかった。

「私の立場とフラック王子殿下の立場では、あまりにも差がありますよ」

「そうでもないだろう? 伯爵令嬢と王子殿下であれば差はあるが、婚約をした例など幾らでもあると思うぞ?」

「……」


 テムザ兄さまにそんなことを言われると、少しだけ期待してしまう。フラック王子殿下とは、一応は幼馴染という関係ではあるのだし、他の令嬢よりは可能性が高いのかもしれない。

「まあとにかく、請け負った仕事をしっかりとこなしていれば、好感度も上がっていくだろうさ」

「わかっていますよ、兄さま。頑張ります」

「うむ、エメリには余計な一言だろうがな」

「いえ、そんなことはありません。ご心配いただき、ありがとうございました」


 テムザ兄さまは冗談を言いつつも心配してくれている。そして、フラック王子殿下でなくても、新しい相手を見つけて欲しいというのが本音なのだろう。なんとなく、その辺りは伝わって来た。


「二人とも、少し良いかしら?」

「母上?」

「お母様……どうかされたのですか?」


 私と兄さまのところに、お母様がやって来た。いつもよりも真剣な表情になっているようだ。


「応接室に来てくれるかしら、エメリ?」

「応接室にですか……?」

「ええ。ラグディ様、ルドルフ様、リシア嬢の3人が来ているのよ」

「ええっ……本当ですか……!?」


 先ほど、入口に馬車が来た気配があったけどそういうわけだったのか。それにしても、私に婚約破棄をしたルドルフ様達が屋敷を訪れているなんて……どういう風の吹き回しかしら?

 しかも、お母様は普通に通したみたいだし……はあ、と思わず溜息が漏れてしまった。
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