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6話 仕事 その2
しおりを挟む「エメリ嬢、仕事の方はどうかな? 何か問題などは起きているか?」
「フラック王子殿下! はい、特に問題はございません。仕事の方は、楽しく進めさせていただいております」
「そうか……それなら良かった」
私はその日、宮殿内で働いていた。フラック王子殿下が用意してくれた仕事は、宮殿内で働く使用人たちの作業効率を上げるというもの。まずは、その段階から始めようというものだ。さらに、フラック王子殿下は幼馴染としてのよしみとして、宮殿内の客間の1つを提供してくれた。つまり、その客間から仕事場まで徒歩で行けるということだ。
ルドルフ様と婚約していた時は、遠方の金鉱山などに行っていたので、それから考えると体力的にはまったく問題ないということになる。我が家から向かうことも出来たのだけれど、せっかくフラック王子殿下が用意してくれた部屋で寝泊りをさせてもらうことにした。
また、私は伯爵令嬢でもあるので、この部屋から宮殿で開かれるパーティーなどには出席するというわけね。まあ、私は婚約破棄をされた直後だから、そういった公務にはしばらく出てはいないのだけれど……。
貴族の間でも噂にはなっているだろうし、ほとぼりが冷めるまで聖女の仕事の方に集中しようと考えている。
「君のおかげで、宮殿内の使用人たちの作業効率は飛躍的に上がっていると聞いている。流石は聖女の家系……いや、流石はエメリ嬢だな」
フラック王子殿下は私個人を褒める為に、わざわざ言い直してくれた。
「いえ……そんなことは。仕事をいただけただけでも感謝しかありません、フラック王子殿下」
「いやいや、こちらこそ」
フラック王子殿下と私は一緒に笑い合う。なんだか楽しい時間となっていた。フラック王子殿下に認められることは単純に嬉しいし、数年ぶりの再会からのこの状況には感謝したい程だった。
ルドルフ様との婚約破棄の件についての悔しさは、今はもうかなり晴れていると言えるだろうか。新しく、聖女として活躍できる場が出来たからというのが最大の要因だと思うけれど。
「さて……私は公務があるのでこれで失礼するが、今日は客人が来るようだぞ。客人と言っていいのか分からないが」
「客人……? 私にでしょうか?」
「ああ、ハーグリーブス夫妻がいらっしゃるようだ。最近は屋敷に帰っていないようだし、偶には親子水入らずで話すと良い。エメリの部屋に招くように、使用人には伝えている」
「お父様とお母様が……」
お父様とお母様が来るのは意外だった。別にそれほど会えなくなっているわけではないのだけれど……。しかも、このタイミングで訪れるということは、一体、どういう用件なのだろう?
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