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9話 最低男 その1

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 マレーネ視点……


 あれ、私は今何を言われたのかしら……? なんでグラン様は私へのプレゼントのはずのアメジストの指輪に触れられて怒っているの? 全然、意味が分からなかった。

「え、え~と……グラン様?」

「なんだ?」


 明らかに機嫌が悪いグラン様。私がそんなに気に障ることをしてしまったのかしら?


「あのえと……どうしてそんなに怒っていらっしゃるのですか……?」

「ああ? 今、お前がアメジストの指輪に触ったからだろうが。そんなこともわからねぇのか、お前は」

「ええっ、そ、そんな……!」


 どうして私の物になるはずのアメジストの指輪に触ったら、こんなに怒られないといけないの? どう考えても理不尽だ。でも、グラン様を逆上させてしまうのはあんまり得策じゃないし……癪だけど、仕方ないわね。


「グラン様の機嫌を損ねてしまったことは、申し訳ありませんでした。謝罪致します」

「ああ、そうか。なら、許してやらなくもない」


 私がここで謝るのは、絶対に違う気がするんだけどな……でも、仕方ないか。これでグラン様の機嫌も元に戻るだろうし。でも……私のその後の言葉がまずかった。


「でも、私へのプレゼントなのですし……少しくらい触っても良いじゃないですか」

「なに? お前、今、なんて言ったんだ……?」

「えっ? そのアメジストの指輪は、私へのプレゼントですよね?」

「はあ? 何言ってやがるんだ、お前は?」


 えっ、どういうこと……? グラン様は先ほどよりもさらに機嫌を損ねたようだ。眉間にしわを寄せているし……。


「わ、私へのプレゼントではないんですか……? じゃあ、一体誰の……?」


「前に言わなかったか? ラジェルだ、ラジェル」


「ラジェル……それって、ラジェル・ヴィクター伯爵令嬢の?」

「そういうことだな」


 なんでラジェル嬢の名前が出て来るんだろう……? 彼女と血縁関係なら分からなくはないけど、おそらくそんなことはないのだろうし、このタイミングでのプレゼントは流石にあり得なくない? 

 婚約者である私と一緒に出掛けて、家族へのプレゼント選びをしていたのならともかく、全く関係ないはずの家系の令嬢へのプレゼント選びなんて……。


「マレーネ、大丈夫……?」

「……」


 セレナ姉さまが後ろから声を掛けてきたようだけれど、私は彼女に反応することが出来なくなっていた。私の精神状態は、それどころではなくなっていたから。グラン様の真意を聞くのが怖かった……そういえば、彼は私の名前をほとんど呼んでくれてなかったっけ、婚約者なのに。
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