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6話 得意分野 その2

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「ガレス様、私が作った料理でございます。使用人の方々には到底、及んでいないとは思いますが。よろしければ御賞味ください」

「ありがとう、セレナ。礼を言う」

「いえ、とんでもないです」


 ガレス様は私の料理を見ている。なかなか手を付ける様子がないのは私の料理が、やはり食するには値しないからかしら? 私は自分の得意料理の1つである豚の生姜焼きを提供していた。もしかすると、ガレス・ハロルド様にとっては庶民的過ぎるのかもしれない。


「ふむ……豚の生姜焼きとは」

「は、はい……」


 ようやく、ガレス様は豚の生姜焼きに手を付けてくれた。一口、二口と食べ進めてくれている。さて……どうなのだろうか? 

「お、お味は如何でございますか……?」

「そうだな……」


 ガレス様は手を止めて、少し考え事をしているようだった。答えを考えているようだ。


「美味しいよ、セレナ」

「ほ、本当でございますか!?」

「ああ。こういう場面でお世辞を言える程、私は器用ではないからな。それは君が一番分かっているだろう?」

「た、確かに……」


 そうだった、ガレス様はどちらかと言うと不器用なお方だ。私もお堅いと言われたり、不器用な部分があるのでよく分かるわ。


「ありがとうございます、ガレス様。とっても嬉しいです!」

「はっはっはっ、どういたしまして。それにしても……私は料理のプロでも何でもない為、適当なことしか言えないかもしれんが、よくここまでのスキルを身に付けられたものだな」

「それなりに大変だったとは記憶しています」

「うむ、そうだろうな」


 実際、私には才能がなかった。それだけに、使用人達から教わり習得していくのに時間が掛かってしまった。私も本来の仕事があるし、使用人達も屋敷の清掃などの仕事があったからね。なかなか、時間調整をするのも大変だったわ。


「貴族としての仕事をしながらの料理の習得。大変ではありますが、私の中では趣味の1つとして楽しんでいますわ」

「そうか、丁度良い息抜きになっているのなら、それに越したことはないだろう」

「こうして愛すべき婚約者であるガレス様に披露も出来ましたので」

「む……そ、そうか……うむ……」

 ガレス様は急に無口になってしまった。少し顔を赤らめている。私達は婚約者なのに、彼はそっち方面の話が苦手なのだ。まあいいか、私もその辺りは得意分野でも何でもないし……ゆっくりと時間を掛けて進めていくとしよう。

 今はガレス様が美味しそうに、私の手料理を食べてくれている光景を眺めているだけで、十分に幸せだから。



------------------------



 マレーネ視点……。


「あの~、グラン様?」

「どうしたんだ、マレーネ?」

「今日は天気も良いですし、どこかへ出かけませんか? 貴族街には新たな雑貨屋や洋服店、料理店も出店していると聞きますし」


「あ~~~、そうだな……」


 今日は天気が良いわね。グラン様と婚約が決まったのだから、思い切り楽しまなくちゃ! きっと、姉さまとガレス様もこんな天気の良い日は、外に出かけているはずだしね。まあ、くら~い雰囲気で護衛達も無口になっている雰囲気が容易に想像できるけれど。

 ガレス様は怖すぎるし……。


「ラジェルのプレゼントでも買いに行くとするか……」

「えっ?」


 グラン様は今なんて言ったのかしら……? 私のプレゼントって言った? 大丈夫よね、ちゃんと言ったわよね……この状態で他の女性の名前を出すなんてあり得ないし。
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