21 / 27
21話
しおりを挟む
(デナン・モルドレート視点)
おかしい……こんなことがあるはすがない。何かが間違っているのだ……そうに違いないのだ。
「と、いうことらしいデナン殿。リシェル嬢の本音は良く分かったであろう? 無駄なことだとは思うが弁解はあるか?」
「ば、バルサーク様……」
バルサーク様は暗に「言い訳はあるのか? ん?」と言っているように聞こえる。いや、バルサーク様の心の中では実際に言っているのだろう……なんということだ。私は、婚約者であるはずのリシェルにも軽く裏切られたということか……。
なぜ、リシェルが行ったことの責任が私に来ているのだ……? 私が何かをしたというのか? いや、していない……私がしたのは、ローザへの婚約破棄だけだ。少なくとも、リシェルに対しては何も酷いことはしていないはず……それなのに、この状況は一体なんだと言うのだ? これではあまりにも……。
「これではあまりにも理不尽だ。そう思っているのかな? デナン殿」
「えっ!? バルサーク様……!?」
なんだ……? バルサーク様は私の心の中を読み取ったというのか? そんなバカな……! 魔法の類いでもそんな系統の魔法は存在しないはず……。
「図星だったか……デナン殿、あまりがっかりさせないでくれ……貴公のような人間が侯爵という上位の立場に居ると考えると……正直、頭が痛くなってくる」
「そ、それは……」
バルサーク様は予想で言っていただけか……まあ、心の中を読めるはずはないと思っていたが。くそ……まずい、これは非常にまずいぞ! この危機的状況を私はどうやって回避すれば良いのだ……!?
----------------------------
(ローザ視点に戻る)
バルサーク様はデナン様の心の声を予想したようだけれど、私にもそれが出来ているようだった。多分、今のデナン様はこの危機的状況を回避することで頭がいっぱいのはずだ。リシェルが敵になっている以上、デナン様からすれば本当に崖っぷちなのだろうけれど……。
でも……なんというか、今のデナン様は非常に情けなく見えてしまっていた。こんな人と私は婚約していたのかと思うと、枕に顔を埋めたい気持ちになってしまう。彼はこの逃げ出せない状況になっても、まだ自分の責任から逃れることで頭がいっぱいなのだ。
潔く過ちを認めて、謝罪するという考えは、今のデナン様からは絶対に生まれないだろう。そう確信できる程に、デナン様は情けなく映っていた。
バルサーク様も同じ気持ちだとは思うけれど……せめて、強力な引導を渡して幕引きとしてほしい。私はそんなことを強く願っていた。
おかしい……こんなことがあるはすがない。何かが間違っているのだ……そうに違いないのだ。
「と、いうことらしいデナン殿。リシェル嬢の本音は良く分かったであろう? 無駄なことだとは思うが弁解はあるか?」
「ば、バルサーク様……」
バルサーク様は暗に「言い訳はあるのか? ん?」と言っているように聞こえる。いや、バルサーク様の心の中では実際に言っているのだろう……なんということだ。私は、婚約者であるはずのリシェルにも軽く裏切られたということか……。
なぜ、リシェルが行ったことの責任が私に来ているのだ……? 私が何かをしたというのか? いや、していない……私がしたのは、ローザへの婚約破棄だけだ。少なくとも、リシェルに対しては何も酷いことはしていないはず……それなのに、この状況は一体なんだと言うのだ? これではあまりにも……。
「これではあまりにも理不尽だ。そう思っているのかな? デナン殿」
「えっ!? バルサーク様……!?」
なんだ……? バルサーク様は私の心の中を読み取ったというのか? そんなバカな……! 魔法の類いでもそんな系統の魔法は存在しないはず……。
「図星だったか……デナン殿、あまりがっかりさせないでくれ……貴公のような人間が侯爵という上位の立場に居ると考えると……正直、頭が痛くなってくる」
「そ、それは……」
バルサーク様は予想で言っていただけか……まあ、心の中を読めるはずはないと思っていたが。くそ……まずい、これは非常にまずいぞ! この危機的状況を私はどうやって回避すれば良いのだ……!?
----------------------------
(ローザ視点に戻る)
バルサーク様はデナン様の心の声を予想したようだけれど、私にもそれが出来ているようだった。多分、今のデナン様はこの危機的状況を回避することで頭がいっぱいのはずだ。リシェルが敵になっている以上、デナン様からすれば本当に崖っぷちなのだろうけれど……。
でも……なんというか、今のデナン様は非常に情けなく見えてしまっていた。こんな人と私は婚約していたのかと思うと、枕に顔を埋めたい気持ちになってしまう。彼はこの逃げ出せない状況になっても、まだ自分の責任から逃れることで頭がいっぱいなのだ。
潔く過ちを認めて、謝罪するという考えは、今のデナン様からは絶対に生まれないだろう。そう確信できる程に、デナン様は情けなく映っていた。
バルサーク様も同じ気持ちだとは思うけれど……せめて、強力な引導を渡して幕引きとしてほしい。私はそんなことを強く願っていた。
11
お気に入りに追加
664
あなたにおすすめの小説
お姉様のお下がりはもう結構です。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。
慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。
「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」
ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。
幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。
「お姉様、これはあんまりです!」
「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」
ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。
しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。
「お前には従うが、心まで許すつもりはない」
しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。
だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……?
表紙:ノーコピーライトガール様より
愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……
ミィタソ
恋愛
伯爵家の次女——エミリア・ミーティアは、優秀な姉のマリーザと比較され、アレと呼ばれて馬鹿にされていた。
ある日のパーティで、両親に連れられて行った先で出会ったのは、アグナバル侯爵家の一人息子レオン。
そこで両親に告げられたのは、婚約という衝撃の二文字だった。
婚約は破棄なんですよね?
もるだ
恋愛
義理の妹ティナはナターシャの婚約者にいじめられていたと嘘をつき、信じた婚約者に婚約破棄を言い渡される。昔からナターシャをいじめて物を奪っていたのはティナなのに、得意の演技でナターシャを悪者に仕立て上げてきた。我慢の限界を迎えたナターシャは、ティナにされたように濡れ衣を着せかえす!
婚約破棄?私、貴方の婚約者ではありませんけれど
oro
恋愛
「アイリーン・ヒメネス!私は今この場で婚約を破棄する!」
王宮でのパーティにて、突然そう高らかに宣言したこの国の第1王子。
名前を呼ばれたアイリーンは、ニコリと微笑んで言った。
「あらあらそれは。おめでとうございます。」
※誤字、脱字があります。御容赦ください。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
婚約破棄する王太子になる前にどうにかしろよ
みやび
恋愛
ヤバいことをするのはそれなりの理由があるよねっていう話。
婚約破棄ってしちゃダメって習わなかったんですか?
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/123874683
ドアマットヒロインって貴族令嬢としては無能だよね
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/988874791
と何となく世界観が一緒です。
拗れた恋の行方
音爽(ネソウ)
恋愛
どうしてあの人はワザと絡んで意地悪をするの?
理解できない子爵令嬢のナリレットは幼少期から悩んでいた。
大切にしていた亡き祖母の髪飾りを隠され、ボロボロにされて……。
彼女は次第に恨むようになっていく。
隣に住む男爵家の次男グランはナリレットに焦がれていた。
しかし、素直になれないまま今日もナリレットに意地悪をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる