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21話

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(デナン・モルドレート視点)


 おかしい……こんなことがあるはすがない。何かが間違っているのだ……そうに違いないのだ。


「と、いうことらしいデナン殿。リシェル嬢の本音は良く分かったであろう? 無駄なことだとは思うが弁解はあるか?」

「ば、バルサーク様……」


 バルサーク様は暗に「言い訳はあるのか? ん?」と言っているように聞こえる。いや、バルサーク様の心の中では実際に言っているのだろう……なんということだ。私は、婚約者であるはずのリシェルにも軽く裏切られたということか……。

 なぜ、リシェルが行ったことの責任が私に来ているのだ……? 私が何かをしたというのか? いや、していない……私がしたのは、ローザへの婚約破棄だけだ。少なくとも、リシェルに対しては何も酷いことはしていないはず……それなのに、この状況は一体なんだと言うのだ? これではあまりにも……。


「これではあまりにも理不尽だ。そう思っているのかな? デナン殿」

「えっ!? バルサーク様……!?」


 なんだ……? バルサーク様は私の心の中を読み取ったというのか? そんなバカな……! 魔法の類いでもそんな系統の魔法は存在しないはず……。

「図星だったか……デナン殿、あまりがっかりさせないでくれ……貴公のような人間が侯爵という上位の立場に居ると考えると……正直、頭が痛くなってくる」

「そ、それは……」


 バルサーク様は予想で言っていただけか……まあ、心の中を読めるはずはないと思っていたが。くそ……まずい、これは非常にまずいぞ! この危機的状況を私はどうやって回避すれば良いのだ……!?



----------------------------



(ローザ視点に戻る)


 バルサーク様はデナン様の心の声を予想したようだけれど、私にもそれが出来ているようだった。多分、今のデナン様はこの危機的状況を回避することで頭がいっぱいのはずだ。リシェルが敵になっている以上、デナン様からすれば本当に崖っぷちなのだろうけれど……。


 でも……なんというか、今のデナン様は非常に情けなく見えてしまっていた。こんな人と私は婚約していたのかと思うと、枕に顔を埋めたい気持ちになってしまう。彼はこの逃げ出せない状況になっても、まだ自分の責任から逃れることで頭がいっぱいなのだ。

 潔く過ちを認めて、謝罪するという考えは、今のデナン様からは絶対に生まれないだろう。そう確信できる程に、デナン様は情けなく映っていた。

 バルサーク様も同じ気持ちだとは思うけれど……せめて、強力な引導を渡して幕引きとしてほしい。私はそんなことを強く願っていた。
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