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12話 アレクからの提案 その2
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「あの、ラターザ様……アレク様の嘘というのは一体?」
「ああ、そのことだが」
私もユリア姉さまも聞かされてはいない内容だ。アレク様は明らかに強張った顔をしていたから、図星なんだろうけれどね。
「工場生産体制が盤石になっている、か。なかなか景気が良さそうな話じゃないか」
「え、ええ……そうなんですよ。それで、エリアスを功労者として雇いたいと」
「本当に上手く行っているのか?」
「どういう意味ですか?」
空気が一瞬はりつめた気がした。ラターザ様は工場生産体制が上手く行っていないと考えているようだ。
「実は私の屋敷の地下にも様々な薬の工場を設けてあるが、やはり大規模な設備ゆえ、経費が掛かっていまってな。そういった面も完璧なのかな?」
「そ、そうですね……なんとかやっていますよ」
「そうかそれは何よりだ。収入面も倍増しているようで嬉しい限りだろう。ただ、残念ながら彼女は既に私の工場で働いてもらっているんだ」
「なっ? ラターザ様の屋敷で……どういう繋がりでそうなったのでしょうか?」
アレク様は本気で驚いていた。まあ、普通に考えればラターザ・ブラック公爵令息なんて雲の上の人すぎて、接点なんてあるわけないのだけれど。そんなお方の下で働いている……これも姉さまの話術のおかげかしらね。
「接点につきましては色々とありまして。アレク様が妹と婚約中に少々……」
意味深に語るユリア姉さま。その雰囲気もアレク様を不安にさせている。もちろんわざとだ。ユリア姉さまはそういうことに長けている。
「最終的に決めるのはエリアス嬢だが、君はアレク殿のところに戻る気はあるのか?」
「いえ、まったく」
私はきっぱりと言い切った。あんな理不尽な婚約破棄からの追放を受けているのだ。とても戻る気になんてなるわけがない。
「な、なんだと……?」
アレク様は私を戻せると思っていたようで、私の答えにも驚きを見せていた。どれだけ頭の中が空っぽなのだろうか……こんな人が婚約者だったなんて情けなくなってしまう。
「あの……エリアス、待ってくれ! 功労者として相応の待遇で迎えるから……考え直してくれないか?」
「お断りします、アレク様。逆になぜ戻せると考えているのか理解に苦しみます」
私は考える間もなく即答した。戻るわけなんてあるわけない。
「アレク殿は自らが行った行為をしっかりと思い出された方が良いのではないか?」
「し、しかし……それでは……!」
アレク様の焦り方が一段と増したように思えた。なんだかおかしい気がする。そもそも、アレク様は私を功労者として連れ戻す必要性が感じられないし。ラターザ様が言っていた「嘘」はこの辺りにあるようね。
「ああ、そのことだが」
私もユリア姉さまも聞かされてはいない内容だ。アレク様は明らかに強張った顔をしていたから、図星なんだろうけれどね。
「工場生産体制が盤石になっている、か。なかなか景気が良さそうな話じゃないか」
「え、ええ……そうなんですよ。それで、エリアスを功労者として雇いたいと」
「本当に上手く行っているのか?」
「どういう意味ですか?」
空気が一瞬はりつめた気がした。ラターザ様は工場生産体制が上手く行っていないと考えているようだ。
「実は私の屋敷の地下にも様々な薬の工場を設けてあるが、やはり大規模な設備ゆえ、経費が掛かっていまってな。そういった面も完璧なのかな?」
「そ、そうですね……なんとかやっていますよ」
「そうかそれは何よりだ。収入面も倍増しているようで嬉しい限りだろう。ただ、残念ながら彼女は既に私の工場で働いてもらっているんだ」
「なっ? ラターザ様の屋敷で……どういう繋がりでそうなったのでしょうか?」
アレク様は本気で驚いていた。まあ、普通に考えればラターザ・ブラック公爵令息なんて雲の上の人すぎて、接点なんてあるわけないのだけれど。そんなお方の下で働いている……これも姉さまの話術のおかげかしらね。
「接点につきましては色々とありまして。アレク様が妹と婚約中に少々……」
意味深に語るユリア姉さま。その雰囲気もアレク様を不安にさせている。もちろんわざとだ。ユリア姉さまはそういうことに長けている。
「最終的に決めるのはエリアス嬢だが、君はアレク殿のところに戻る気はあるのか?」
「いえ、まったく」
私はきっぱりと言い切った。あんな理不尽な婚約破棄からの追放を受けているのだ。とても戻る気になんてなるわけがない。
「な、なんだと……?」
アレク様は私を戻せると思っていたようで、私の答えにも驚きを見せていた。どれだけ頭の中が空っぽなのだろうか……こんな人が婚約者だったなんて情けなくなってしまう。
「あの……エリアス、待ってくれ! 功労者として相応の待遇で迎えるから……考え直してくれないか?」
「お断りします、アレク様。逆になぜ戻せると考えているのか理解に苦しみます」
私は考える間もなく即答した。戻るわけなんてあるわけない。
「アレク殿は自らが行った行為をしっかりと思い出された方が良いのではないか?」
「し、しかし……それでは……!」
アレク様の焦り方が一段と増したように思えた。なんだかおかしい気がする。そもそも、アレク様は私を功労者として連れ戻す必要性が感じられないし。ラターザ様が言っていた「嘘」はこの辺りにあるようね。
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