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8話 才能 その2
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その後、私は幾つかの回復薬を作ったのだけれど。その都度、メイさんからは驚きの声が漏れていた。
「メイ、これらの薬はどうなんだ?」
「やはり信じられません、ラターザ様。エリアス様の作った回復薬は明らかに消費期限が長いです。今までこの工場で作って来た回復薬が霞んでしまいますね……」
「う~む、やはりそれほど凄い物というわけか」
「はい、それほどにエリアス様の薬は素晴らしいです」
褒められているのは分かるけれど、なんだか照れ臭かった。なんと言えばいいのか分からなかったからだ。私は無言になってしまった。
「しかし、これ程の薬を作れるのであれば、工場生産に組み込むのではなく……」
「そうですね、ラターザ様。彼女は個別に薬の調合をしていただいた方が良いかと」
「うむ、その通りだな。一度、それで様子を見てみようか」
「えっ? 個別にですか……?」
私は思わず聞き返してしまった。この地下の工場施設で働くのは変わらないみたいだけれど。どうも当初の予定から変わっているようだ。
「今の工場生産で作っている薬とあなたの作った薬は全く出来が違いますので。分ける必要が出て参りました」
「エリアス嬢、君のサポート役にメイを付けたいと思うが、構わないだろうか?」
「そ、それは……はい、構いませんが」
なんだか特別扱いを受けているような感じだ。まあ、私の作った薬の消費期限が長いのなら、それをすぐに看破できるメイさんを付けるというのは分かるけれど。それから、消費期限が1カ月の通常の薬と混ぜるわけにはいかないというのも分かる。価格帯も変わって来るだろうしね。
う~ん、なんだか大事になってきたわね。慣れない状況だけに私はどんな表情をすれば良いのか分からなかった。
「よし、そうと決まれば善は急げ、だ。メイ、エリアス嬢が気持ちよく働けるように職場環境の改善を急ぐとしよう」
「畏まりました、ラターザ様。私はエリアス様が薬の調合を出来る場所を確保したいと思います」
「わかった、そちらについては任せるよ」
ラターザ様もメイさんも随分とやる気になってくれている。私に期待してくれているのか。これはがっかりさせないように私も気を引き締めて臨む必要があるわね。それにしても、私の作った薬にそんな不可能力が生まれていたなんて……本当に驚きだわ。
-------------------------------
(アレク・ギース侯爵視点)
「アレク様、ご報告したいことがございます……」
「ん? どうかしたのか、工場長?」
私の部屋に入って来たのは薬の工場生産を任せている工場長だ。なにやら焦った表情をしているが……。何か問題が発生したのか?
「どうしたというんだ、血相を変えて。工場生産体制に何か問題が起きたのか?」
「いえ、それが……薬の大量生産には成功しているのですが」
なんだ、大量生産には成功したのか。だったら何も問題はないはずだが……。
「では一体なんだというのだ? 薬の調合に成功しているのであれば、問題ないではないか」
「その薬のことなんですが……製造してから1日経過した物が、次々と変色していきまして……」
「なんだと……?」
たったの1日で変色しただと? 馬鹿なそんなことあるわけが……。
「メイ、これらの薬はどうなんだ?」
「やはり信じられません、ラターザ様。エリアス様の作った回復薬は明らかに消費期限が長いです。今までこの工場で作って来た回復薬が霞んでしまいますね……」
「う~む、やはりそれほど凄い物というわけか」
「はい、それほどにエリアス様の薬は素晴らしいです」
褒められているのは分かるけれど、なんだか照れ臭かった。なんと言えばいいのか分からなかったからだ。私は無言になってしまった。
「しかし、これ程の薬を作れるのであれば、工場生産に組み込むのではなく……」
「そうですね、ラターザ様。彼女は個別に薬の調合をしていただいた方が良いかと」
「うむ、その通りだな。一度、それで様子を見てみようか」
「えっ? 個別にですか……?」
私は思わず聞き返してしまった。この地下の工場施設で働くのは変わらないみたいだけれど。どうも当初の予定から変わっているようだ。
「今の工場生産で作っている薬とあなたの作った薬は全く出来が違いますので。分ける必要が出て参りました」
「エリアス嬢、君のサポート役にメイを付けたいと思うが、構わないだろうか?」
「そ、それは……はい、構いませんが」
なんだか特別扱いを受けているような感じだ。まあ、私の作った薬の消費期限が長いのなら、それをすぐに看破できるメイさんを付けるというのは分かるけれど。それから、消費期限が1カ月の通常の薬と混ぜるわけにはいかないというのも分かる。価格帯も変わって来るだろうしね。
う~ん、なんだか大事になってきたわね。慣れない状況だけに私はどんな表情をすれば良いのか分からなかった。
「よし、そうと決まれば善は急げ、だ。メイ、エリアス嬢が気持ちよく働けるように職場環境の改善を急ぐとしよう」
「畏まりました、ラターザ様。私はエリアス様が薬の調合を出来る場所を確保したいと思います」
「わかった、そちらについては任せるよ」
ラターザ様もメイさんも随分とやる気になってくれている。私に期待してくれているのか。これはがっかりさせないように私も気を引き締めて臨む必要があるわね。それにしても、私の作った薬にそんな不可能力が生まれていたなんて……本当に驚きだわ。
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(アレク・ギース侯爵視点)
「アレク様、ご報告したいことがございます……」
「ん? どうかしたのか、工場長?」
私の部屋に入って来たのは薬の工場生産を任せている工場長だ。なにやら焦った表情をしているが……。何か問題が発生したのか?
「どうしたというんだ、血相を変えて。工場生産体制に何か問題が起きたのか?」
「いえ、それが……薬の大量生産には成功しているのですが」
なんだ、大量生産には成功したのか。だったら何も問題はないはずだが……。
「では一体なんだというのだ? 薬の調合に成功しているのであれば、問題ないではないか」
「その薬のことなんですが……製造してから1日経過した物が、次々と変色していきまして……」
「なんだと……?」
たったの1日で変色しただと? 馬鹿なそんなことあるわけが……。
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