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6話 薬士として働く
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ラターザ様からのまさかの提案……ブラック公爵家で薬士として働く。私の事を考えてくれたのだと思うけれど、私は戸惑ってしまっていた。
「私が……ラターザ様の下で働くということですか……」
「うむ、そういうことになるかな」
「とてもありがたいことではあるのですが……」
私はアレク様の下で薬士として働いて、その技術を奪われた。それだけでなく、理不尽な婚約破棄をされて屋敷を追い出されてしまったのだ。それがまだ1週間前の出来事……走馬灯ではないけれど、嫌な思い出としてフラッシュバックしてしまうのは当然だった。
「ふむ、アレク殿の下で働いていた時のことを思い出してしまうか? また、裏切られるのではないかと」
「申し訳ありません、ラターザ様。ラターザ様のことを不審に感じているのではないのですが……」
「……」
「ふむ」
ラターザ様も無言で何も言わなくなった。私の気持ちを理解してくれたのだろうか。
「私からも謝罪させていただきますわ。妹は少し精神的なダメージが強かったので、尻込みしてしまっているのです」
「いや、私の方こそ申し訳ない。いきなりの提案にしては気を遣えていなかったようだ」
「いえ、とんでもないことでございます。申し訳ありません……」
私は立ち上がってラターザ様に頭を下げた。どのような態度を取っていいのかわからなくなったからだ。ただ、非常に申し訳ないことをしたと感じていた。
「謝罪は大丈夫だよ、エリアス嬢。私の方に問題があったわけだし。よければ薬の製造現場を見て行かないか? 少し緊張が取れるかもしれないし」
「製造現場を? わかりました。見させてください」
お父様やユリア姉さまも一緒なら問題はないはず。私はラターザ様の別の提案に乗ることにした。それに、製造現場という響きに興味があったからだ。なんだか大規模な場所を想像したから……。
---------------------------------
「これは……!」
「見ていただけるかな? これが我がブラック家が誇る地下の製造現場さ」
私は案内された製造現場を見て驚いてしまった。幾つもの機械設備が施されており、大量の薬の製造ラインが誕生している。パッと見たところどのくらいの種類を作っているかまでは分からなかったけど、想像以上に大規模だ。
「これは素晴らしいですな。どう思うエリアスよ」
「素晴らしいと思います。何もかも想像以上でした」
流石はブラック公爵家と言うべきだろうか。私の個人の技術を盗み工場生産体制を確立したばかりのギース侯爵家とは桁が違うというか。そこで働いている人の数も桁違いに多い。これならば裏切られるとかそういう次元ではない。
「もしも働いてくれるということなら、この製造現場で働いて欲しいと思ったのだが……どうだろうか、エリアス嬢? サポートは全面的にさせていただくが」
「は、はい……ラターザ様」
ラターザ様は決して騙そうとする人物ではない。それは以前から何度か会っている様子からも想像は出来ていた。それに加えてこの大規模な工場現場だ。この中で働くということなら、確かに裏切られる心配はないだろう。私は結局、その場での返答は控えさせてもらったが、後日、薬士として働くことを了承した。
私の力が少しでも領民の為に役立つというなら本望だったし、忙しく行動していた方が婚約破棄の悲しみを忘れられると判断したからだ。
「私が……ラターザ様の下で働くということですか……」
「うむ、そういうことになるかな」
「とてもありがたいことではあるのですが……」
私はアレク様の下で薬士として働いて、その技術を奪われた。それだけでなく、理不尽な婚約破棄をされて屋敷を追い出されてしまったのだ。それがまだ1週間前の出来事……走馬灯ではないけれど、嫌な思い出としてフラッシュバックしてしまうのは当然だった。
「ふむ、アレク殿の下で働いていた時のことを思い出してしまうか? また、裏切られるのではないかと」
「申し訳ありません、ラターザ様。ラターザ様のことを不審に感じているのではないのですが……」
「……」
「ふむ」
ラターザ様も無言で何も言わなくなった。私の気持ちを理解してくれたのだろうか。
「私からも謝罪させていただきますわ。妹は少し精神的なダメージが強かったので、尻込みしてしまっているのです」
「いや、私の方こそ申し訳ない。いきなりの提案にしては気を遣えていなかったようだ」
「いえ、とんでもないことでございます。申し訳ありません……」
私は立ち上がってラターザ様に頭を下げた。どのような態度を取っていいのかわからなくなったからだ。ただ、非常に申し訳ないことをしたと感じていた。
「謝罪は大丈夫だよ、エリアス嬢。私の方に問題があったわけだし。よければ薬の製造現場を見て行かないか? 少し緊張が取れるかもしれないし」
「製造現場を? わかりました。見させてください」
お父様やユリア姉さまも一緒なら問題はないはず。私はラターザ様の別の提案に乗ることにした。それに、製造現場という響きに興味があったからだ。なんだか大規模な場所を想像したから……。
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「これは……!」
「見ていただけるかな? これが我がブラック家が誇る地下の製造現場さ」
私は案内された製造現場を見て驚いてしまった。幾つもの機械設備が施されており、大量の薬の製造ラインが誕生している。パッと見たところどのくらいの種類を作っているかまでは分からなかったけど、想像以上に大規模だ。
「これは素晴らしいですな。どう思うエリアスよ」
「素晴らしいと思います。何もかも想像以上でした」
流石はブラック公爵家と言うべきだろうか。私の個人の技術を盗み工場生産体制を確立したばかりのギース侯爵家とは桁が違うというか。そこで働いている人の数も桁違いに多い。これならば裏切られるとかそういう次元ではない。
「もしも働いてくれるということなら、この製造現場で働いて欲しいと思ったのだが……どうだろうか、エリアス嬢? サポートは全面的にさせていただくが」
「は、はい……ラターザ様」
ラターザ様は決して騙そうとする人物ではない。それは以前から何度か会っている様子からも想像は出来ていた。それに加えてこの大規模な工場現場だ。この中で働くということなら、確かに裏切られる心配はないだろう。私は結局、その場での返答は控えさせてもらったが、後日、薬士として働くことを了承した。
私の力が少しでも領民の為に役立つというなら本望だったし、忙しく行動していた方が婚約破棄の悲しみを忘れられると判断したからだ。
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