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2話 剣術道場へ
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こんなことってあるのかしら……舞踏会でまさかの婚約破棄を言い渡されることになるなんて。オルトロス・エランド公爵に手によって、直接……。
現在はメフィス家の屋敷の書斎に居る。何か本を読もうとしたのだけれど、そんな気分にはなっていなかった。
私の至らなかったところは何だったのだろうか? あの舞踏会の日までは、決してあの方に逆らった行動を取ってはいなかったのに。公爵夫人としての教育についても問題なくこなしていたはずだ。少なくとも、いきなりあんな公共の場で罵られる程、悪い結果を出したことはないはず……。
それだけは自信を持って言える。他の貴族達にも見られてしまった……今頃、私の婚約破棄の噂は広まっていることだろう。貴族社会は他人の噂には特に敏感のはずだから。
「どうだシャイナ? 少しは落ち着いたか?」
「フランツ兄さま……」
私のことを心配してくれたのか、フランツ兄さまが書斎を訪れてくれていた。兄さまはメフィス家の次期当主として伯爵の称号を手にするお方だ。
「お話は……お伺いされていらっしゃいますよね?」
「当然だ、父上と母上から聞いている。まさか、オルトロス・エランド公爵がそのような暴挙をするとは……信じられない」
「私もとても信じられません……本当に……」
エランド公爵家の当主を担っているお方がまさか、身勝手な婚約破棄を言ってくるなんて、誰が想像出来ただろうか? しかも、何人もの観衆が居る舞踏会会場でだ。
「私は……私は……」
「シャイナ……」
考えただけでも涙が溢れてきた……本当に悲しい。そして同時悔しくもあった。どうして私はあのような人の婚約者になってしまったのだろうか、と。数カ月前に婚約をした時はそんな片鱗を一切見せていなかったのに……しかし、あの婚約破棄の態度がエランド公爵の本性なのだろう。
「お父様達にもご迷惑を掛けてしまいました……」
「シャイナ、そんなことを言うな。自分を責めることはない……お前は何も悪いことはしていないのだからな」
「フランツ兄さま……」
フランツ兄さまは泣いている私を優しく抱きしめてくれた。力強さがある兄さまだけれど、繊細に抱きしめてくれる力加減と言えばいいのだろうか。ただ、私の悲しみはより大きくなっている気がした。家族に迷惑を掛けている、という自責の念が強くなっているからだ。
「まあ、私が抱きしめた程度でお前の悲しみ、悔しさが晴れるとは思っていないが、少しは落ち着いたか?」
「あ、はい……兄さま、ありがとうございました」
「気にするな」
本当にフランツ兄さまは尊い存在だ……お父様やお母様も含めて、少しでも立ち直って行かないと。出来るかどうか、まだ確信は持てないけれど……少し気を抜くと舞踏会での周囲からの心無い言葉が思い出されてしまうし。
「シャイナ、ウッドガル王国には剣術道場が多いことは知っているな?」
「はい、それは存じ上げておりますが」
「市民街にも剣術道場はあるが、貴族街にも貴族、王族御用達の剣術道場が設置されている。よければ今度、見学に行かないか?」
「剣術道場に……」
フランツ兄さまも剣術をそこで学ばれているはず。そして、年1回開催される大会にも出場している。なるほど……そういう繋がりで私を誘ってくれているのね。
「ありがとうございます、兄さま。是非、ご一緒させてください」
「よし決まりだな。楽しみにしていると良い。良い気分転換になることを祈っている」
フランツ兄さまは私のことを、とても考えてくれていた。感謝しかできないわね。それにしても剣術道場か……どんな場所なのかしら?
現在はメフィス家の屋敷の書斎に居る。何か本を読もうとしたのだけれど、そんな気分にはなっていなかった。
私の至らなかったところは何だったのだろうか? あの舞踏会の日までは、決してあの方に逆らった行動を取ってはいなかったのに。公爵夫人としての教育についても問題なくこなしていたはずだ。少なくとも、いきなりあんな公共の場で罵られる程、悪い結果を出したことはないはず……。
それだけは自信を持って言える。他の貴族達にも見られてしまった……今頃、私の婚約破棄の噂は広まっていることだろう。貴族社会は他人の噂には特に敏感のはずだから。
「どうだシャイナ? 少しは落ち着いたか?」
「フランツ兄さま……」
私のことを心配してくれたのか、フランツ兄さまが書斎を訪れてくれていた。兄さまはメフィス家の次期当主として伯爵の称号を手にするお方だ。
「お話は……お伺いされていらっしゃいますよね?」
「当然だ、父上と母上から聞いている。まさか、オルトロス・エランド公爵がそのような暴挙をするとは……信じられない」
「私もとても信じられません……本当に……」
エランド公爵家の当主を担っているお方がまさか、身勝手な婚約破棄を言ってくるなんて、誰が想像出来ただろうか? しかも、何人もの観衆が居る舞踏会会場でだ。
「私は……私は……」
「シャイナ……」
考えただけでも涙が溢れてきた……本当に悲しい。そして同時悔しくもあった。どうして私はあのような人の婚約者になってしまったのだろうか、と。数カ月前に婚約をした時はそんな片鱗を一切見せていなかったのに……しかし、あの婚約破棄の態度がエランド公爵の本性なのだろう。
「お父様達にもご迷惑を掛けてしまいました……」
「シャイナ、そんなことを言うな。自分を責めることはない……お前は何も悪いことはしていないのだからな」
「フランツ兄さま……」
フランツ兄さまは泣いている私を優しく抱きしめてくれた。力強さがある兄さまだけれど、繊細に抱きしめてくれる力加減と言えばいいのだろうか。ただ、私の悲しみはより大きくなっている気がした。家族に迷惑を掛けている、という自責の念が強くなっているからだ。
「まあ、私が抱きしめた程度でお前の悲しみ、悔しさが晴れるとは思っていないが、少しは落ち着いたか?」
「あ、はい……兄さま、ありがとうございました」
「気にするな」
本当にフランツ兄さまは尊い存在だ……お父様やお母様も含めて、少しでも立ち直って行かないと。出来るかどうか、まだ確信は持てないけれど……少し気を抜くと舞踏会での周囲からの心無い言葉が思い出されてしまうし。
「シャイナ、ウッドガル王国には剣術道場が多いことは知っているな?」
「はい、それは存じ上げておりますが」
「市民街にも剣術道場はあるが、貴族街にも貴族、王族御用達の剣術道場が設置されている。よければ今度、見学に行かないか?」
「剣術道場に……」
フランツ兄さまも剣術をそこで学ばれているはず。そして、年1回開催される大会にも出場している。なるほど……そういう繋がりで私を誘ってくれているのね。
「ありがとうございます、兄さま。是非、ご一緒させてください」
「よし決まりだな。楽しみにしていると良い。良い気分転換になることを祈っている」
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