有能婚約者を捨てた王子は、幼馴染との真実の愛に目覚めたらしい

マルローネ

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38話 次期国王の座 その1

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 私とアルゼイ様はとある舞踏会に出席していた。

 今後の王位継承争いに向けて、重要になるかもしれない舞踏会でもある。


「本日はエラルド王国の貴族の方々はいらしていないんですね」


 前日のリストにもエッセル公爵などの名前はなかった。やはり、重要な舞踏会とは言ってもあくまでも身内の中でという意味だ。


「そうだな……エラルド王国との親交をスムーズに行っていくという意味では、この舞踏会は重要かもしれないが」

「と、言いますと……」

「単純にジェイドとの王位継承争いを有利に進める為、ということさ。まずは地盤を固めなくては対外的な動きというのは抑制されてしまうだろう?」

「なるほど、確かにそうでございますね」

「ああ、そういうことさ」


 フリック様の一件もあったので、サンマルト王国としては、現在はエラルド王国との交流は避けたいと考えているはず。その証拠が今回の舞踏会なのだろう。


「そういえば、シリカとエッセル公爵との婚約の話も現在は凍結状態にあると聞いておりますし」

「そうだな、今は進めない方が得策と言えるだろう。まずは、ジェイドとの王位継承争いに注力しなくてはな」

「左様でございますね……」


 その為には、アルゼイ様の派閥を広げていく必要がある。すぐに継承争いが始まるというわけではないけれど、こういうことは事前にやっておいた方が良いのだ。貴族とのパイプラインというのは、そう簡単に築けない場合もあるからね。

 まずは幾つもの舞踏会に参加し、私とアルゼイ様のコンビを印象付けるところから始めなくてはならない。根気のいる作業だけど、こういうのは慣れているから問題ないわ。


「エリザ、ちょっといいかな?」

「はい、なんでしょうか……アルゼイ様?」

「貴族達とのパイプラインの形成は、とても重要なことだ。フリックの婚約者として働いていた時は、君が主にやっていたようだが……これからは二人で協力して行おう」

「畏まりました、アルゼイ様。私は無理のない範囲でアルゼイ様をサポートして参ります」

「よし、その心意気だ。では、ジェイドへの挨拶に向かおうとしようか」

「ジェイド王子殿下……畏まりました」


 舞踏会の会場の隅にジェイド第二王子殿下の姿があった。特に敵というわけではないけれど、王位継承争いでは敵対関係になるお方。緊張感は拭えない。

 まずは、彼の元へ挨拶というなの宣戦布告をするということね。私の身は自然と引き締まっていた。
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