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15話 フリック王子殿下の変化 その1
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「フリック王子殿下……少しは成長なされた、と期待して宜しいのですかな?」
「キングダム侯爵、私にそのような偉そうな口が聞けるのも、今の内だ。私の変化に恐れおののくがよい!」
「何やら言葉の使い方が怪しいですが……まあ良いでしょう。楽しみですね」
キングダム侯爵は相変わらず好戦的ね。でも……なんだか、フリック様からは自信が感じられるわ。それはシャーリー嬢にも、同じことが言えるけれど。以前のような険悪なムードにはならなさそうで安心した。隣国のエラルド王国からの方々も来ている状況で、自国の者達の本気の争いを見られるのは、得策ではないからね。隙を作ることになってしまうし……。
「なんや、面白いことが起きてるみたいですな……片方の方は知らんけど、もう片方の方はアルゼイ王子殿下の弟様と違いますのん?」
ファブナー様も見ている二人の口喧嘩、彼はとても楽しそうにしている。あれ、私が小難しく考えすぎだったのかな?
「お恥ずかしいことです。確かに、あの者は我が弟で第三王子のフリック・サンマルトです。それと相対している者は、ルービック・キングダム侯爵です。まあ、二人のやり取りは日常茶飯事……我が国の風物詩みたいなものです。軽い気持ちでご鑑賞くださいませ」
「承知いたしましたわ、アルゼイ王子殿下。それでは、楽しく見させてもらいます」
流石はアルゼイ様。ファブナー様によくある争いだと意識付けることで、彼の警戒心を解いたようだ。まあ、元々、ファブナー様は陽気に見ている印象だったけれどね。
「ではでは、私もしっかりと見届けましょうか! フリック王子殿下がどのように変わられたのか!」
シリカもなんだかノリノリだわ……ファブナー様に合わせているのだろうけれど。他の貴族達も、笑いながら観察しているようだし、明らかに以前のような重苦しい雰囲気にはなっていなかった。そこに関しては安心して良いかしら?
でも、私の不安は消えない……フリック様がどんな失態を見せるのか、心配になってしまう。あれ、これってまだフリック様のことを完全には忘れてないってことかしら?
「大丈夫か、エリザ?」
「は、はい……大丈夫です。アルゼイ様……」
「そうか、それなら良いんだが……」
違うわね……私が見ているのはフリック様ではなく、シャーリー嬢の方だった。彼女がどのようなサポート能力を発揮するのか、興味があるのだ。もしも、私を凌駕する程のサポート能力を発揮したとしたら……それはそれで悔しいもの。そういう意味では、二人の言動には興味が尽きなかった。
「それで、フリック王子殿下……貴方様は変わったとおっしゃておりますが、どのように変わられたのでしょうか? ギャラリーも多いようですし、何か目に見える成果をお出しいただければ、周囲の貴族達も納得しやすいと思うのですが?」
「当たり前だ、キングダム侯爵! ふふふ、驚くがよい! 今回のパーティーに出席している全ての貴族と王族のフルネームを私とシャーリーは記憶しているのだ! 細かい立場から管理している土地、そこで行われている事業まで全てをな!」
「な、なんと……! あのフリック王子殿下が、そのような情報を全て……!?」
「ふはははははっ、恐れおののくがよいわ! はははははっ!!」
え~と……なんて言えば良いのかしら? ここは素直に、おめでとうございますと言った方が良いのかしら? それとも、愛のムチを叩きつけるべきかしら? キングダム侯爵もわざと驚いているように見えるわね。はあ……まあ、確かにフリック様からすれば成長だったのだろうけど、それは最初から知っていることが前提なわけで。
言い方を変えれば、ファブナー様を始めとした隣国の貴族の方に醜態を晒している結果となっていた。アルゼイ様は隣で大きく溜息を吐いて、頭を左右に振っている。ファブナー様に特に変化は見られないけれど、シリカは蔑んだ瞳で彼を見ているようだわ。
さて……私はどのように動くのが正解なんだろうか?
「キングダム侯爵、私にそのような偉そうな口が聞けるのも、今の内だ。私の変化に恐れおののくがよい!」
「何やら言葉の使い方が怪しいですが……まあ良いでしょう。楽しみですね」
キングダム侯爵は相変わらず好戦的ね。でも……なんだか、フリック様からは自信が感じられるわ。それはシャーリー嬢にも、同じことが言えるけれど。以前のような険悪なムードにはならなさそうで安心した。隣国のエラルド王国からの方々も来ている状況で、自国の者達の本気の争いを見られるのは、得策ではないからね。隙を作ることになってしまうし……。
「なんや、面白いことが起きてるみたいですな……片方の方は知らんけど、もう片方の方はアルゼイ王子殿下の弟様と違いますのん?」
ファブナー様も見ている二人の口喧嘩、彼はとても楽しそうにしている。あれ、私が小難しく考えすぎだったのかな?
「お恥ずかしいことです。確かに、あの者は我が弟で第三王子のフリック・サンマルトです。それと相対している者は、ルービック・キングダム侯爵です。まあ、二人のやり取りは日常茶飯事……我が国の風物詩みたいなものです。軽い気持ちでご鑑賞くださいませ」
「承知いたしましたわ、アルゼイ王子殿下。それでは、楽しく見させてもらいます」
流石はアルゼイ様。ファブナー様によくある争いだと意識付けることで、彼の警戒心を解いたようだ。まあ、元々、ファブナー様は陽気に見ている印象だったけれどね。
「ではでは、私もしっかりと見届けましょうか! フリック王子殿下がどのように変わられたのか!」
シリカもなんだかノリノリだわ……ファブナー様に合わせているのだろうけれど。他の貴族達も、笑いながら観察しているようだし、明らかに以前のような重苦しい雰囲気にはなっていなかった。そこに関しては安心して良いかしら?
でも、私の不安は消えない……フリック様がどんな失態を見せるのか、心配になってしまう。あれ、これってまだフリック様のことを完全には忘れてないってことかしら?
「大丈夫か、エリザ?」
「は、はい……大丈夫です。アルゼイ様……」
「そうか、それなら良いんだが……」
違うわね……私が見ているのはフリック様ではなく、シャーリー嬢の方だった。彼女がどのようなサポート能力を発揮するのか、興味があるのだ。もしも、私を凌駕する程のサポート能力を発揮したとしたら……それはそれで悔しいもの。そういう意味では、二人の言動には興味が尽きなかった。
「それで、フリック王子殿下……貴方様は変わったとおっしゃておりますが、どのように変わられたのでしょうか? ギャラリーも多いようですし、何か目に見える成果をお出しいただければ、周囲の貴族達も納得しやすいと思うのですが?」
「当たり前だ、キングダム侯爵! ふふふ、驚くがよい! 今回のパーティーに出席している全ての貴族と王族のフルネームを私とシャーリーは記憶しているのだ! 細かい立場から管理している土地、そこで行われている事業まで全てをな!」
「な、なんと……! あのフリック王子殿下が、そのような情報を全て……!?」
「ふはははははっ、恐れおののくがよいわ! はははははっ!!」
え~と……なんて言えば良いのかしら? ここは素直に、おめでとうございますと言った方が良いのかしら? それとも、愛のムチを叩きつけるべきかしら? キングダム侯爵もわざと驚いているように見えるわね。はあ……まあ、確かにフリック様からすれば成長だったのだろうけど、それは最初から知っていることが前提なわけで。
言い方を変えれば、ファブナー様を始めとした隣国の貴族の方に醜態を晒している結果となっていた。アルゼイ様は隣で大きく溜息を吐いて、頭を左右に振っている。ファブナー様に特に変化は見られないけれど、シリカは蔑んだ瞳で彼を見ているようだわ。
さて……私はどのように動くのが正解なんだろうか?
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