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13話 重要な舞踏会 その1

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 今回の舞踏会は本当に緊張する……なぜかと言えば、他国の貴族も参加しているからだ。王国内の身内で盛り上がるパーティーや舞踏会とは一線を画すと言っても過言ではないだろう。
 

 私もこれまで、たくさんの舞踏会には参加してきたけれど、そのほとんどは身内で盛り上がる舞踏会だった。他国の方々も参加する舞踏会は久しぶりだ。


「緊張いたしますね、アルゼイ様、心拍数がどうやら上がっているようです……」

「そうだな。やはり、場の空気というか……雰囲気は明らかに違うと言えるだろう」


 私よりもこういう場には慣れているであろうアルゼイ様も、緊張は隠しきれないようだった。何せ彼の場合は立場が違うからだ。私も第一王子殿下と婚約している身であり、公爵令嬢という地位でもあるので気を引き締めないといけないのは当然なんだけれど。アルゼイ様の緊張はそれ以上だと言えた。

 我がサンマルト王国を象徴する人物の一人と言っても過言ではないのだから。私達は既に舞踏会会場に入っていた。現在はまだ、メイドや執事たちが食事の用意やテーブルのセッティングなどをしている段階だけれど……あと、1時間もしない内に、この会場は上位貴族で溢れかえることになるのだ。


「あれは……シリカ?」

「おお、君の妹君か。彼女も色々と大変らしいな」

「そうですね……あはは」


 シリカもどうやら執事長のマイケルと一緒に下見に来ているみたいね。シリカは隣国の上位貴族である、ファブナー・エッセル公爵との婚約が決まりそうな存在だから、今回は気を抜けないでしょうね。ファブナー様は本日お見えになる予定だし。遠目からいる限りでは緊張している様子はないわね……流石だわ。

 シリカも今回はファブナー様が来られるのだし、内心では緊張しているはず……ふふふ、あとでからかってあげようかな? シリカには色々としてやられた思い出があるからね。まあ、それはともかくとして……。

 私もガーランド公爵家の長女として、頑張らないといけないわね。何よりも、アルゼイ様の婚約者として……。

「アルゼイ様」

「どうした、エリザ?」

「はい……今回の舞踏会で、アルゼイ様のサポートをしっかりと務めさせていただきます。決して第一王子殿下様の名誉を傷つけることがないように、精進したいと考えています」

 私が今回、一番優先すべき課題はその部分だ。フリック様やシャーリー嬢も来るだろうけど、そんな人達のことは些細なことでしかない。まずは、自分の役割をしっかりとこなす……私に染み付いた本能とも言えるものだった。

「そう言ってくれるのは嬉しいが……無理はしないようにな? 私はエリザが素直に舞踏会を楽しんでくれることを願っている」

「畏まりました、それでは楽しむことを最優先にしたいと思います」

「うむ、その心掛けを忘れないようにな」

「はい!」

 アルゼイ様からの頼みというのであれば、そちらを優先するしかない。緊張し過ぎず、緩み過ぎずに舞踏会を楽しむ……これがベストな心意気なのかもしれないわね。
 
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