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4話 開催されたパーティー
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「私達がこんな場所に参加して大丈夫なのかしら?」
「ええ、問題ないかと思われます。なにせ、アルゼイ・サンマルト第一王子殿下直々の要請でありますので」
「アルゼイ第一王子殿下から……どういう巡り合わせなのかしら」
フリック王子殿下との婚約破棄が成立してから2週間ほどが経過していた。私とシリカ、それに執事長のマイケルの3人はロズハート宮殿で執り行われるパーティーに参加している。先ほどマイケルが言っていたけれど、アルゼイ様が直接、招待状をくれたのだ。はっきり言って、信じられないことである。
アルゼイ様と言えば、フリック様の兄にあたり、サンマルト王国の次期国王陛下筆頭とも称されている。確か現在は、婚約者は居ないんだっけ?
「アルゼイ様との面識はあまりないわ。シリカはどうなの?」
「私もないわよ。それに今回は姉さんに招待状が届いているんでしょう? アルゼイ様は姉さんに来てもらいたいんだと思うけど」
「確かにそうなるけれど……マイケルは何か聞いていないの?」
招待状はお父様やお母様、マイケルを通して私のところへ来ているはず。そうなると彼が何か知っている可能性は高かった。そういえば以前にも、意味深な発言をしていたことがあったし。
「はて、私はただの執事長でしかありませんので……」
「そうやって誤魔化して、私から逃れられると思っているのかしら?」
「申し訳ございませんでした……」
「正直に話しなさい。まったく……お父様達も急にこのパーティーに行くように促していたし、おかしいとは思っていたのよ」
お父様やお母様にもフリック様との婚約破棄については話してある。とても怒りを表していたけれど。その後は何やら、マイケルと怪しい会話をしていたのが印象的だったわ。
「お嬢様、落ち着いてください。確かに、今回の招待状は私からエリザお嬢様に流れた形になります」
「やっぱり……何か隠しているでしょう? いい加減、教えてくれないかしら? 2週間前に言っていたあの方に婚約破棄の件が伝わると言っていたのは、アルゼイ様に伝わる……という意味合いだったのね?」
「流石はエリザお嬢様、素晴らしい洞察力でございます……」
「お世辞はいいから、真実を話して。アルゼイ様のことを」
「アルゼイ様は後程、私達のところにお越しいただける約束となっております。その時までお待ちいただけませんでしょうか?」
「え~~~? 第一王子殿下様が直々に私達のところにお越しになるの……!?」
シリカはとても驚いた表情になっていた。どうやら、彼女は何も聞かされてはいないようね。確かに私達は公爵令嬢だけれど、お父様であるビッグス・ガーランド公爵やお母様であるエスメラルダ・ガーランド公爵夫人は同席していない。
そんな状況でお越しになることは非常にめずらしい事態と言えると思う。
「まあ、わかったわ。アルゼイ様がお越しになるというなら……お待ちするしかなさそうね」
「エリザお嬢様、流石でございます。その洞察力と感情抑制の能力は、フリック王子殿下のサポートをこなす内に養われたのでしょうか?」
「そうかもしれないわね」
フリック様お傍についてもサポートはかなり難しかったからね……彼の感情が高ぶらないように注意を払わないといけなかったから、自分が感情に流されることは許されなかったし。本当に影のように張り付いていた時もあった気がするわ。
「ところでこのパーティーなんだけれど……」
「はい、如何なさいましたか?」
私は周囲を見渡しながら、パーティーに参加している他の貴族達に目をやった。上位貴族が参加しているように見えるわね。
「ええ、実はこのパーティーは……」
-------------------------
……フリック王子視点。
「フリック殿下、本日のパーティー開催は本当にめでたいですわね」
「ははは、シャーリー。確かにその通りだな、私とお前の婚約を祝したパーティーでもある。存分に楽しもうじゃないか」
「はい! 畏まりました!」
エリザと私の婚約破棄が決定してからしばらく経過した後、急遽、執り行われることになった宮殿内でのパーティー。私とシャーリーの二人は現在、そのパーティに出席していた。兄上であるアルゼイ第一王子が私の為に開催してくれた、というわけだ。
まあ、祝いのパーティー以外の目的もあるようだがな。
「フリック王子殿下。本日はご婚約、おめでとうございます!」
「ん? ああ、ありがとうございます……ええと……」
「……?」
早速、私にお祝いの言葉を贈りにきた貴族が居たわけだが……ええと、誰だったか? シャーリー、早くサポートするのだ。お前なら、彼の名前くらい分かるだろう?
「……」
ん? 先ほどからシャーリーは何の行動にも出ようとしない。おい、一体どうなっている……? エリザの時は非常にスムーズに進んでいたのだが……。
「ええ、問題ないかと思われます。なにせ、アルゼイ・サンマルト第一王子殿下直々の要請でありますので」
「アルゼイ第一王子殿下から……どういう巡り合わせなのかしら」
フリック王子殿下との婚約破棄が成立してから2週間ほどが経過していた。私とシリカ、それに執事長のマイケルの3人はロズハート宮殿で執り行われるパーティーに参加している。先ほどマイケルが言っていたけれど、アルゼイ様が直接、招待状をくれたのだ。はっきり言って、信じられないことである。
アルゼイ様と言えば、フリック様の兄にあたり、サンマルト王国の次期国王陛下筆頭とも称されている。確か現在は、婚約者は居ないんだっけ?
「アルゼイ様との面識はあまりないわ。シリカはどうなの?」
「私もないわよ。それに今回は姉さんに招待状が届いているんでしょう? アルゼイ様は姉さんに来てもらいたいんだと思うけど」
「確かにそうなるけれど……マイケルは何か聞いていないの?」
招待状はお父様やお母様、マイケルを通して私のところへ来ているはず。そうなると彼が何か知っている可能性は高かった。そういえば以前にも、意味深な発言をしていたことがあったし。
「はて、私はただの執事長でしかありませんので……」
「そうやって誤魔化して、私から逃れられると思っているのかしら?」
「申し訳ございませんでした……」
「正直に話しなさい。まったく……お父様達も急にこのパーティーに行くように促していたし、おかしいとは思っていたのよ」
お父様やお母様にもフリック様との婚約破棄については話してある。とても怒りを表していたけれど。その後は何やら、マイケルと怪しい会話をしていたのが印象的だったわ。
「お嬢様、落ち着いてください。確かに、今回の招待状は私からエリザお嬢様に流れた形になります」
「やっぱり……何か隠しているでしょう? いい加減、教えてくれないかしら? 2週間前に言っていたあの方に婚約破棄の件が伝わると言っていたのは、アルゼイ様に伝わる……という意味合いだったのね?」
「流石はエリザお嬢様、素晴らしい洞察力でございます……」
「お世辞はいいから、真実を話して。アルゼイ様のことを」
「アルゼイ様は後程、私達のところにお越しいただける約束となっております。その時までお待ちいただけませんでしょうか?」
「え~~~? 第一王子殿下様が直々に私達のところにお越しになるの……!?」
シリカはとても驚いた表情になっていた。どうやら、彼女は何も聞かされてはいないようね。確かに私達は公爵令嬢だけれど、お父様であるビッグス・ガーランド公爵やお母様であるエスメラルダ・ガーランド公爵夫人は同席していない。
そんな状況でお越しになることは非常にめずらしい事態と言えると思う。
「まあ、わかったわ。アルゼイ様がお越しになるというなら……お待ちするしかなさそうね」
「エリザお嬢様、流石でございます。その洞察力と感情抑制の能力は、フリック王子殿下のサポートをこなす内に養われたのでしょうか?」
「そうかもしれないわね」
フリック様お傍についてもサポートはかなり難しかったからね……彼の感情が高ぶらないように注意を払わないといけなかったから、自分が感情に流されることは許されなかったし。本当に影のように張り付いていた時もあった気がするわ。
「ところでこのパーティーなんだけれど……」
「はい、如何なさいましたか?」
私は周囲を見渡しながら、パーティーに参加している他の貴族達に目をやった。上位貴族が参加しているように見えるわね。
「ええ、実はこのパーティーは……」
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……フリック王子視点。
「フリック殿下、本日のパーティー開催は本当にめでたいですわね」
「ははは、シャーリー。確かにその通りだな、私とお前の婚約を祝したパーティーでもある。存分に楽しもうじゃないか」
「はい! 畏まりました!」
エリザと私の婚約破棄が決定してからしばらく経過した後、急遽、執り行われることになった宮殿内でのパーティー。私とシャーリーの二人は現在、そのパーティに出席していた。兄上であるアルゼイ第一王子が私の為に開催してくれた、というわけだ。
まあ、祝いのパーティー以外の目的もあるようだがな。
「フリック王子殿下。本日はご婚約、おめでとうございます!」
「ん? ああ、ありがとうございます……ええと……」
「……?」
早速、私にお祝いの言葉を贈りにきた貴族が居たわけだが……ええと、誰だったか? シャーリー、早くサポートするのだ。お前なら、彼の名前くらい分かるだろう?
「……」
ん? 先ほどからシャーリーは何の行動にも出ようとしない。おい、一体どうなっている……? エリザの時は非常にスムーズに進んでいたのだが……。
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