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3話 報告 その2
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「エリザお嬢様のサポート能力は他の方々ではなかなか真似できないレベルにあるのは間違いないでしょう。それは執事長である私も実感しております」
公爵という立場のガーランド家で執事の長を務めているマイケル・カウフマン。彼の執務能力は相当なものだとお父様から伺ったことも多く、それゆえに説得力も増していた。
「マイケルがそう言ってくれるなら、自信を持ってもいいのかもしれないわね」
「ありがとうございます、お嬢様。このマイケル・カウフマン、感嘆の極みに存じます」
「それは大袈裟だと思うけれど、ありがとう。少し元気を貰えたわ」
「勿体ないお言葉でございます」
マイケルは90度に腰を曲げて、私に礼をしていた。そんな大したことは言っていないので、彼のそこまでされると恐縮してしまいそうだ。
「あの~~~、誰か忘れてませんか~~~?」
と、そんな時、わざとらしくむくれている妹の姿が目に入った。しまった……完全に忘れていたわ。
「あら、ごめんなさいシリカ。あなたにも元気付けられたわ。ありがとう」
「えへへ、姉さん。大好きなエリザ姉さんを元気付ける為だし、気にしないでいいよ。今度、貴族街で高級パフェを奢ってくれるだけでいいからさ!」
「シリカ……」
元気付けてくれたことは彼女の優しさだと思うけれど、しっかり、見返りは要求するのね……流石はシリカだわ。ちなみに彼女は隣国の貴族との婚約が決まりそうで、サンマルト王国との橋渡しとして期待されていたりする。
「でも、姉さんを手放したフリック王子殿下は馬鹿よね……後でとんでもなく後悔しそうだし。ねえ、マイケル?」
「左様でございますね、シリカお嬢様。フリック王子殿下は今後、大変な苦労をすることになるでしょう。不敬かもしれませんが、今までの執務関連やイベント関連をエリザお嬢様に頼っていたのですから。お嬢様の助けがあってなんとか切り抜けて来た場面も多いはず。もしもそれを、自分の能力であると過信しているとすれば……ふむ、とても同情いたします」
「マイケル……結構、言うわねあなた……」
フリック様への発言はなかなか棘があるように思えた。私のことを想ってのことだと思うので嬉しいのだけれど、この執事長は侮れないわね……本当に。
「申し訳ございません……今のは私の独り言とご認識くださいませ。不敬罪に問われかねない事象ですので……」
「ええ、大丈夫よ。分かっているわ」
「ありがとうございます、エリザお嬢様」
マイケルとシリカの二人に婚約破棄の件を報告したのは正解だったようね。私の中にあった悲しみや悔しさ、わだかまりが少しずつ薄れていくのを確かに感じることが出来ているし。正直な話、フリック様やシャーリー嬢のことは忘れてしまいたいので、今の流れは悪くないと思える。
「エリザお嬢様、1つよろしいでしょうか?」
「どうしたの? マイケル?」
話の流れが変わる雰囲気があった。私は彼の顔に視線を合わせる。私と視線が合ったことを確認してからか、彼は口を開いた。
「旦那様と奥様にはご報告申し上げるとしまして……おそらく、今回の婚約破棄の件は貴族間に知れ渡ることになるでしょう」
「まあ、それはそうでしょうね……」
あまり好ましいことではないけれど、仕方のない部分だ。公爵家の権力をフル活用すれば抑えられるかもしれないけれど、職権乱用になりそうだし。
「そうなると、確実にあのお方にはお話が向かうことになりますね。ふむ……これはエリザお嬢様にとって、非常に朗報と言えましょう」
「朗報……? どういう意味……?」
「まだ確定情報ではございませんので、この場で詳細をお話することはお許しいただけませんでしょうか」
「ま、まあ……マイケルが話したくないと言うなら、無理には聞かないけれど」
「ありがとうございます、エリザお嬢様」
私はマイケルのことを信頼している。彼が今は詳細を話すべきでないと判断したのなら、それはきっと正しいのだろう。マイケルの言葉から察するに、その詳細については近いうちに分かりそうだし……それまで待っていてくださいということかしらね。
公爵という立場のガーランド家で執事の長を務めているマイケル・カウフマン。彼の執務能力は相当なものだとお父様から伺ったことも多く、それゆえに説得力も増していた。
「マイケルがそう言ってくれるなら、自信を持ってもいいのかもしれないわね」
「ありがとうございます、お嬢様。このマイケル・カウフマン、感嘆の極みに存じます」
「それは大袈裟だと思うけれど、ありがとう。少し元気を貰えたわ」
「勿体ないお言葉でございます」
マイケルは90度に腰を曲げて、私に礼をしていた。そんな大したことは言っていないので、彼のそこまでされると恐縮してしまいそうだ。
「あの~~~、誰か忘れてませんか~~~?」
と、そんな時、わざとらしくむくれている妹の姿が目に入った。しまった……完全に忘れていたわ。
「あら、ごめんなさいシリカ。あなたにも元気付けられたわ。ありがとう」
「えへへ、姉さん。大好きなエリザ姉さんを元気付ける為だし、気にしないでいいよ。今度、貴族街で高級パフェを奢ってくれるだけでいいからさ!」
「シリカ……」
元気付けてくれたことは彼女の優しさだと思うけれど、しっかり、見返りは要求するのね……流石はシリカだわ。ちなみに彼女は隣国の貴族との婚約が決まりそうで、サンマルト王国との橋渡しとして期待されていたりする。
「でも、姉さんを手放したフリック王子殿下は馬鹿よね……後でとんでもなく後悔しそうだし。ねえ、マイケル?」
「左様でございますね、シリカお嬢様。フリック王子殿下は今後、大変な苦労をすることになるでしょう。不敬かもしれませんが、今までの執務関連やイベント関連をエリザお嬢様に頼っていたのですから。お嬢様の助けがあってなんとか切り抜けて来た場面も多いはず。もしもそれを、自分の能力であると過信しているとすれば……ふむ、とても同情いたします」
「マイケル……結構、言うわねあなた……」
フリック様への発言はなかなか棘があるように思えた。私のことを想ってのことだと思うので嬉しいのだけれど、この執事長は侮れないわね……本当に。
「申し訳ございません……今のは私の独り言とご認識くださいませ。不敬罪に問われかねない事象ですので……」
「ええ、大丈夫よ。分かっているわ」
「ありがとうございます、エリザお嬢様」
マイケルとシリカの二人に婚約破棄の件を報告したのは正解だったようね。私の中にあった悲しみや悔しさ、わだかまりが少しずつ薄れていくのを確かに感じることが出来ているし。正直な話、フリック様やシャーリー嬢のことは忘れてしまいたいので、今の流れは悪くないと思える。
「エリザお嬢様、1つよろしいでしょうか?」
「どうしたの? マイケル?」
話の流れが変わる雰囲気があった。私は彼の顔に視線を合わせる。私と視線が合ったことを確認してからか、彼は口を開いた。
「旦那様と奥様にはご報告申し上げるとしまして……おそらく、今回の婚約破棄の件は貴族間に知れ渡ることになるでしょう」
「まあ、それはそうでしょうね……」
あまり好ましいことではないけれど、仕方のない部分だ。公爵家の権力をフル活用すれば抑えられるかもしれないけれど、職権乱用になりそうだし。
「そうなると、確実にあのお方にはお話が向かうことになりますね。ふむ……これはエリザお嬢様にとって、非常に朗報と言えましょう」
「朗報……? どういう意味……?」
「まだ確定情報ではございませんので、この場で詳細をお話することはお許しいただけませんでしょうか」
「ま、まあ……マイケルが話したくないと言うなら、無理には聞かないけれど」
「ありがとうございます、エリザお嬢様」
私はマイケルのことを信頼している。彼が今は詳細を話すべきでないと判断したのなら、それはきっと正しいのだろう。マイケルの言葉から察するに、その詳細については近いうちに分かりそうだし……それまで待っていてくださいということかしらね。
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