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6話
しおりを挟む「なんだか生臭い臭いがしない? レストラン内でこんな臭いを出せる連中と言えば……」
「下位の貴族くらいしかいないだろうな」
「なっ……!」
ウィンドとヘルメスの二人は完全に私達を見下していた。まともに話をする気もないようだわ。
「ニッケス子爵家とオーウェン男爵家か……まあ、下位同士仲良くて結構じゃないか」
「まったくその通りね、ウィンド。はあ、仲良くデートするのはいいけれど、私達も使うお店に来るのは自重してほしいところだわ」
「……流石に酷過ぎませんか? いくら高位貴族でもわけもなくそんなことを言うのはあり得ないです」
「おや、私達に盾突く気か? その結果はちゃんとわかっているんだろうな?」
「そりゃあ、分かっているでしょうね。私達に逆らえばどうなるか……いくら下位貴族でもそのくらいはね」
「……」
何も言い返せなかった。この二人は最低の人物だけれど、下手に権力を持っている事実もある。特にウィンドの方の権力は相当なもののはずだ。
「高位貴族や下位貴族など関係ありませんよ。あなた方は不必要に私達を罵倒している。その件に関しては謝罪してもらいたい。意味がない行為なのですから」
「何を言いだすのかと思いきや……よりにもよって男爵令息の方が抗議してくるとは。まだ、エミリーの方であれば許してやったものを……よし、決めたぞ。オーウェン男爵家には罰を与えてやる。この私に盾突いたことを後悔するがよい」
「……罰?」
「そのとおりだ」
「きゃははははは! それは面白いことになりそうね! しっかりと反省しなさい、馬鹿男!」
「聞き捨てならない言葉だ。私は何もしていない。それでも罰を下すと?」
「侯爵家に盾突いた罪があるだろう? 罪を背負った者には罰が必要だ。そんなことも分からないのか?」
「まあ、わからないんでしょうね。なんせ男爵令息だし!」
二人は大笑いを続け、そのまま立ち去って行った。嵐のような時間だったけど……。
「大丈夫、ジスト……?」
「私は大丈夫だよ、エミリー。君こそ平気かい?」
「私は大丈夫だけれど……罰って」
「そのことに関しては心配いらないと思うよ。あの二人にはしっかりと抗議させてもらうからね」
「で、でも……」
ジストはまったく引く気配を見せなかった。でも大丈夫なのかしら? 抗議って……。
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