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12話
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アラート家に乗り込んでからしばらくが経過した。
「ふう、譲り渡していた事業が戻ってきたのは良かったな」
「そうですね、お父様」
ウィングによって搾取されかけた事業……その事業の主導権を再び得ることができた。それだけではないけどね。
「慰謝料も多めに貰ったのも良かった」
「王子殿下達と直接乗り込んだのが良かったのでしょうか」
「うん、おそらくはそうだろうな」
アラート家からの慰謝料も相場よりかなり多めの額を得ることができた。まあ、アラート家が行ったことを考えれば当然のことではあるけれど。アラート家は事業の返還と慰謝料の支払いをした為、裁判に掛けられることは免れた。まあ、この上、犯罪者としてのレッテルを貼られるのは私の本意ではなかったし良かったのだと思う。
これを機に本当の意味で反省してくれればいいけどね。
「とにかく上手く行って良かった。ハリア王子とレックス王子には感謝してもし切れないな」
「そうですね、お父様。本当に感謝しかありません」
あの二人の功績……というか、協力具合は異常なほどに凄かったと言える。本当に感謝してもし切れないわ。
「ふむ……それでお前の新しい婚約者についてだが……」
「お父様……その辺りはまたゆっくりと考えます」
婚約破棄された日からそんなに日数が経っているわけでもない。また、新しい人を見つけるにしても時間はかかると思うわ。お父様には申し訳ないけれど、こればかりはどうしようもなかった。
「いや、それがだな。既に婚約をしたいという人がいてだな……」
「えっ、本当ですか?」
「うむ……まあ、なんというか……少々、複雑なことではあるんだが」
どうも歯切れが悪い。もっとはっきり言ってほしいものだ。と、考えていると部屋の扉が開かれた。出て来たのはなんと……ハリア王子とレックス王子の二人だった。
「テレサ嬢……私と婚約していただけませんか?」
「あ、ずるいぞ兄上! テレサ、俺と婚約してほしい!」
「えっ、えっ……?」
二人の王子殿下から聞こえた信じられない言葉……えっ? 婚約してくれってどういうこと?
「私はテレサ嬢のことが前から好きだった。今はフリーの立場だと思うので、婚約を申し出ても問題ないと思うんだ」
「だから兄上! ずるいぞ、俺だってテレサのことが好きなんだ!」
「お前のようなガサツな人間がテレサ嬢の相手になるものか」
「そんなことは分からないだろう! 俺は兄上と違って腕に覚えがある。ボディガードだって可能だ!」
「ぬう……その方向で来たか……」
「え、ええ~~~~!」
私としては信じられないことだった。第二王子と第三王子から求婚されているのだから。しかも二人は争っているようにも見える。私のために争わないで! と言える状況かもしれない。
ええと……これは冷静に考えると二人には婚約者がいないことを意味する。次期国王陛下最有力候補の第一王子であるミルザ様には既に婚約者がいるはずだし。
その意味では自由な恋愛が可能だと言えるのかしら? 信じられない……王家の二人から求婚されている事実が。
「ははははは、まあ、伯爵令嬢であるテレサなら、王家のお方と一緒になっても特に問題はないだろう。しっかりと考えることだな」
「お父様……楽しんでませんか?」
「いやいや、娘の未来が明るいことには素直に喜んでいるぞ?」
「それはそうかもしれませんが……」
冷静沈着なハリア王子と武力に優れたレックス王子……二人からの求婚は信じられないものだ。でも、本気であることは伺えた。それなら私もしっかりと考えて答えを出さないといけないだろう。
それがいつになるかは分からないけれど……私は問題を先送りにして現状を楽しむことにした。将来は王家の人間になるかもしれない。そんな想いを描きながら……。
おしまい
「ふう、譲り渡していた事業が戻ってきたのは良かったな」
「そうですね、お父様」
ウィングによって搾取されかけた事業……その事業の主導権を再び得ることができた。それだけではないけどね。
「慰謝料も多めに貰ったのも良かった」
「王子殿下達と直接乗り込んだのが良かったのでしょうか」
「うん、おそらくはそうだろうな」
アラート家からの慰謝料も相場よりかなり多めの額を得ることができた。まあ、アラート家が行ったことを考えれば当然のことではあるけれど。アラート家は事業の返還と慰謝料の支払いをした為、裁判に掛けられることは免れた。まあ、この上、犯罪者としてのレッテルを貼られるのは私の本意ではなかったし良かったのだと思う。
これを機に本当の意味で反省してくれればいいけどね。
「とにかく上手く行って良かった。ハリア王子とレックス王子には感謝してもし切れないな」
「そうですね、お父様。本当に感謝しかありません」
あの二人の功績……というか、協力具合は異常なほどに凄かったと言える。本当に感謝してもし切れないわ。
「ふむ……それでお前の新しい婚約者についてだが……」
「お父様……その辺りはまたゆっくりと考えます」
婚約破棄された日からそんなに日数が経っているわけでもない。また、新しい人を見つけるにしても時間はかかると思うわ。お父様には申し訳ないけれど、こればかりはどうしようもなかった。
「いや、それがだな。既に婚約をしたいという人がいてだな……」
「えっ、本当ですか?」
「うむ……まあ、なんというか……少々、複雑なことではあるんだが」
どうも歯切れが悪い。もっとはっきり言ってほしいものだ。と、考えていると部屋の扉が開かれた。出て来たのはなんと……ハリア王子とレックス王子の二人だった。
「テレサ嬢……私と婚約していただけませんか?」
「あ、ずるいぞ兄上! テレサ、俺と婚約してほしい!」
「えっ、えっ……?」
二人の王子殿下から聞こえた信じられない言葉……えっ? 婚約してくれってどういうこと?
「私はテレサ嬢のことが前から好きだった。今はフリーの立場だと思うので、婚約を申し出ても問題ないと思うんだ」
「だから兄上! ずるいぞ、俺だってテレサのことが好きなんだ!」
「お前のようなガサツな人間がテレサ嬢の相手になるものか」
「そんなことは分からないだろう! 俺は兄上と違って腕に覚えがある。ボディガードだって可能だ!」
「ぬう……その方向で来たか……」
「え、ええ~~~~!」
私としては信じられないことだった。第二王子と第三王子から求婚されているのだから。しかも二人は争っているようにも見える。私のために争わないで! と言える状況かもしれない。
ええと……これは冷静に考えると二人には婚約者がいないことを意味する。次期国王陛下最有力候補の第一王子であるミルザ様には既に婚約者がいるはずだし。
その意味では自由な恋愛が可能だと言えるのかしら? 信じられない……王家の二人から求婚されている事実が。
「ははははは、まあ、伯爵令嬢であるテレサなら、王家のお方と一緒になっても特に問題はないだろう。しっかりと考えることだな」
「お父様……楽しんでませんか?」
「いやいや、娘の未来が明るいことには素直に喜んでいるぞ?」
「それはそうかもしれませんが……」
冷静沈着なハリア王子と武力に優れたレックス王子……二人からの求婚は信じられないものだ。でも、本気であることは伺えた。それなら私もしっかりと考えて答えを出さないといけないだろう。
それがいつになるかは分からないけれど……私は問題を先送りにして現状を楽しむことにした。将来は王家の人間になるかもしれない。そんな想いを描きながら……。
おしまい
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