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6話
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どうしてこんなことになったのだろうか……なんなのあの噂は……。
「信じられません、こんなこと」
「私も同じ気持ちだ、テレサ……どうしてこんなことに」
エグゼ様は私が家のお金を使いこんでいると言っていた。もちろんそれは嘘なのだけれど。私に対する良くない噂はそれだけに留まっていなかったのだ。
「浮気癖が強い……傲慢でお金の亡者、嫉妬深く独善的、わがままでヒステリック……なんなの一体、私って……」
ここまで酷い噂が流れては私はどうしたらいいのか分からなかった。あり得ない……いくらなんでもウィングが全てを流したとは思いたくないけれど。あれでも元婚約者なのだから。そこまで酷い人物ではないと信じたい気持ちだってある。
でも、事実としてそこまで悪い噂が流れているのだった。
「これでは外に行けません……」
「テレサ……心中察するぞ……」
お父様も何も言えない状態になっていた。噂が流れているというのは客観的な意見でしかなく、実際はもうそれが事実だと認められているからだ。こんな噂が事実であると認識されていては、私はどのパーティーに出席することも出来ない。それどころか、貴族としての務めを何一つ遂行できないまであったのだ。
「私はこれからどうすればいいんでしょうか……」
「ぬう、テレサ……」
もうお父様でも何かを出来る状態ではないのかもしれない。ミリオン伯爵家始まって以来の大失態だと言えるだろうか。こんなことが続いては家の存続にまで影響してしまうかもしれない。私が新しい伯爵……つまり、夫を迎え入れられなかった段階で断絶してしまうのだから……本当にどうすればいいのか。
涙が出て来そうだった……。
「失礼致します、あの……」
そんなとき、メイドの一人であるフィーナが入ってきた。私と同じ18歳の女の子だ。
「フィーナか。どうかしたのか?」
「突然申し訳ありません。今しがた、お客様がお見えになっておりまして……」
「客人が? 本日はその予定はないはずだが……誰なんだ?」
「それが……マーク・エッセンバル様というお方です」
「マーク様? マーク様と言えば……」
聞いた名前だった。確か……宮殿で仕事をしている王子殿下の護衛の方だったような……。そんな方がどうして?
「お通ししてもよろしいでしょうか?」
「わかった。失礼のないようにな」
「はい、畏まりました」
フィーナは頭を下げて出て行った。マーク様が来ている……? これは一体どういうことなのかしら? 私はよくわからない感情でいっぱいだった。
「信じられません、こんなこと」
「私も同じ気持ちだ、テレサ……どうしてこんなことに」
エグゼ様は私が家のお金を使いこんでいると言っていた。もちろんそれは嘘なのだけれど。私に対する良くない噂はそれだけに留まっていなかったのだ。
「浮気癖が強い……傲慢でお金の亡者、嫉妬深く独善的、わがままでヒステリック……なんなの一体、私って……」
ここまで酷い噂が流れては私はどうしたらいいのか分からなかった。あり得ない……いくらなんでもウィングが全てを流したとは思いたくないけれど。あれでも元婚約者なのだから。そこまで酷い人物ではないと信じたい気持ちだってある。
でも、事実としてそこまで悪い噂が流れているのだった。
「これでは外に行けません……」
「テレサ……心中察するぞ……」
お父様も何も言えない状態になっていた。噂が流れているというのは客観的な意見でしかなく、実際はもうそれが事実だと認められているからだ。こんな噂が事実であると認識されていては、私はどのパーティーに出席することも出来ない。それどころか、貴族としての務めを何一つ遂行できないまであったのだ。
「私はこれからどうすればいいんでしょうか……」
「ぬう、テレサ……」
もうお父様でも何かを出来る状態ではないのかもしれない。ミリオン伯爵家始まって以来の大失態だと言えるだろうか。こんなことが続いては家の存続にまで影響してしまうかもしれない。私が新しい伯爵……つまり、夫を迎え入れられなかった段階で断絶してしまうのだから……本当にどうすればいいのか。
涙が出て来そうだった……。
「失礼致します、あの……」
そんなとき、メイドの一人であるフィーナが入ってきた。私と同じ18歳の女の子だ。
「フィーナか。どうかしたのか?」
「突然申し訳ありません。今しがた、お客様がお見えになっておりまして……」
「客人が? 本日はその予定はないはずだが……誰なんだ?」
「それが……マーク・エッセンバル様というお方です」
「マーク様? マーク様と言えば……」
聞いた名前だった。確か……宮殿で仕事をしている王子殿下の護衛の方だったような……。そんな方がどうして?
「お通ししてもよろしいでしょうか?」
「わかった。失礼のないようにな」
「はい、畏まりました」
フィーナは頭を下げて出て行った。マーク様が来ている……? これは一体どういうことなのかしら? 私はよくわからない感情でいっぱいだった。
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