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3話
しおりを挟む(デトロイ・ミリオン伯爵視点)
「それで? どういうことでしょうか……エグゼ様」
私は娘のテレサを屋敷に置いて、本日、エグゼ・アラート侯爵と会っていた。テレサが被ったことはとても許せるものではない。このままはっきりさせずに婚約破棄の手続きだけ進めて行くのはおかしいと思ったのだ。それで今回、エグゼと出会いその考えを聞くことにした。
「ふむ……デトロイ殿の立場としては納得は難しいでしょうな。しかし、息子と娘であるテレサ嬢のことに関して親がどうこう言うのは間違っていませんかな?」
「何を言っているのですか? あの二人は成人はしていますが当主ではないのですよ? 我々、現当主が間違った道に行かないように監視するのも大事なことでしょう!」
「ふむ……」
私の感情とは裏腹にエグゼは冷静な態度だった。息子のことを信用しているのか、婚約破棄は妥当だと考えている節がある。
「そもそも、レイチェル嬢と一緒になる為の婚約破棄などあってはならないはず! 完全な浮気ではありませんか!」
「おや、ウィングからの報告ではそのような話はなかったが?」
「な、何ですと……?」
ん、どういうことだ? 何か話が食い違っているように思えるのだが……。
「ウィングは婚約破棄は断腸の想いだったと言っている。テレサ嬢のいい加減な態度が目に余るので、仕方なく婚約破棄をして、幼馴染のレイチェルとの婚約を決めたと言っていた」
「な、なんという……そんなことは……」
あのテレサに限っていい加減なことをするはずがない。家事だって一通りできるはずだしな。わがままを言うわけもないのだ。
「私としても受け入れがたいことだったが、息子が我慢できないというのだ。仕方なく、婚約破棄を認めたまでですよ」
「ちょっと待ってください! そんないい加減なことを! 娘に限ってそんな婚約破棄をしたくなる程の迷惑を掛けるはずがありません!」
「いい加減なこと? 息子からはテレサ嬢はわがままの限りを尽くして、我が家の金を使いまくっていると聞いているが?」
「そんなことあるはずが……!」
テレサに限って考えられないことだった。娘は倹約的な一面もあったのだからな。
「事実、我が家の資金は使途不明な部分で消えているものが幾つかある。テレサ嬢に頼まれ、断れなかったウィングが使ったと見るのが妥当だろう。まったく……文句を言いたいのはこちらの方だよ、デトロイ殿」
「そ、そんな……まさかそんなことがあるわけ……」
「娘に裏切られた瞬間ですな。今回の婚約破棄は我々に非はないということです。譲渡された事業についても無効にすることはできませんな。そういうことです、もう帰っていただけますか?」
私の言葉はそれ以上、エグゼに届くことはなかった。彼は息子を信用しているという一点張りだったからだ。私も娘を信用しているが、一瞬だけ、何が正しいのかわからなくなってしまった……。
マズイぞこのままでは……何かとんでもなく大きな事が起きそうな気がする。
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