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2話

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「すみません、お父様。私の失態でした……」

「何を言っている、テレサ。お前は婚約破棄の被害者でしかない。責任を感じる必要などないさ」


 ミリオン伯爵家に戻った私はお父様に事の経緯を説明していた。アラート侯爵家の御曹司であるウィングの非道な行為を全て話した。お父様は私を責めることはなかった。とてもありがたかったけれど、余計に心配を掛けてしまったかもしれないわね。


「ウィングは譲り受けた利益を返すつもりはないと言っていました。そんなこと許されないと思うのですが……」

「確かにな。レジャーランドの建設譲渡を初め、幾つかの事業の譲渡をしたが、それらはあくまでウィングとテレサが結婚することが前提の上での契約だったはずだ。婚約破棄になった場合はその限りではない。契約は無効になるはずだ」

「そ、そうですよね……」


 私の考えに間違いはなかったようね。お父様もはっきりと無効だと言ってくれたのだし。婚約破棄自体は書面で行うみたいだけれど、その時にこちらから契約無効であることを伝えられるはず。

「アラート家の現当主であるエグゼ様は何を考えているのか。息子であるウィングと同じ立場なのだとしたら、大きな事件になるぞ」

「そうですよね……お父様」

「うむ。仮にも上位貴族であるアラート家がそんな無慈悲なことをしたなんてバレたら、貴族の中でも大きな衝撃が走るだろうな」

 私はお父様の言葉に少し安心していた。このままなら、婚約破棄が成立してしまっても、なんとかなりそうだったからだ。婚約破棄はしたくないと考えていたけれど、ウィングの態度を見てしまった以上、もう一度戻りたいとは考えられなかった。

「テレサは婚約破棄が成立しても大丈夫か?」

「あのウィングの元に戻りたいとは思いませんので……それでも構いません。アラート家がしっかりと責任を負うというのなら……」

「うむ、そうか。よくわかったよ。近い内に私はエグゼ様と会うことにしよう。その時に彼の本心を聞いてみる」

「わかりました、お父様。ありがとうございます」

「うむ……全く信じられない事態だな。まさかこのようなことが起こるとは……」


 近々、お父様はエグゼ様と会うようだ。そこではっきりするだろうか。なにはともあれ、婚約破棄が成立してもミリオン家の被害がないことが先決だ。契約の無効やウィングの勝手な行為の責任を追及する必要がある。ウィングは慰謝料を支払うとは言っていたけれど、それだけでは到底許せるものではなかった。

 最低でも追加の慰謝料請求はしなくちゃね。
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