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5話 応接室での会話 その1
しおりを挟むさてさて……なんとかアイル様を応接室に招いたのは良いけれど、この後どうすれば良いんだろうか?
「まあ、そんなに緊張することはないと思いますよ」
「そ、そういうわけには……」
アイル様は私を気遣ってくれているのだろうけれど、この緊張感を解くのには勇気がいる。アイル様は気にされないと言っても私の方が気にしてしまうし。
「いえいえ、本当に。セルフィ様に緊張されるとこちらとしても困ってしまいますし」
「? どういう意味でしょうか?」
お父様もそうだったけれど、アイル様も意味の分からないことをおっしゃっている。どういうこと?
「ふむ……確か、話しても問題はないのだったな?」
「左様でございますね、アイル様。ヴェンデル陛下からもそのように伺っておりますし」
「よし」
ヴェンデル国王陛下ってまさか、グラボイド王国の国王陛下のこと? まさかの超大物の名前に私はさらに緊張してしまった。そんなお方から許されていることって一体……。
「ええとだな、セルフィ。君は実はリンシャンテ家の娘ではないのだ」
「は、はい……?」
急に普通の口調になるアイル様。いえ、それよりも……どういうこと?
-------------------------
「君はグラボイド王家の娘になる。まあ、私とは兄妹ということだな」
「え、ええ……!? 何かの冗談でしょうか……?」
話が飛び過ぎてついて行けない……アイル様は何を言っているのだろうか。私はリンシャンテ家の娘として物心ついた時からこの屋敷で育っていたのだし。今までも養子などという話は聞いたことがなかったけれど。
ただ、アイル様の表情を見ているととても冗談を言っているようには見えなかった。
「冗談ではないさ。これは事実だよ、セルフィ」
「ほ、本当なのですか……?」
「ああ、君は私の妹だ。それから現国王ヴェンデルの娘ということになるな」
「そ、そんなことが……」
これまでの人生の中で間違いなく一番の驚きだ。ダルク様の婚約破棄も驚きの事実ではあったけれど、それを軽く超える程の衝撃が私の中を走っていた。
アイル様自身がこれほど真剣に言っているのだから、間違いはないのだろう。でも、お父様やお母様とは血がつながってないと言うこと?
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